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奨学金受給者の選抜(研究課程)

オーストラリアの新学期は2月に始まりますので、今の時期はちょうど新学期に向けての入学募集期間になります。私は現在学部の研究課程のディレクターをしています(Acting)が、この時期は、日々研究課程生の入学願書に目を通し、受け入れるか受け入れないか、また、受け入れるならば、指導教員を誰にするか等の協議及び決定をしています。これと同時進行で行われるのが、奨学金受給者(この場合は博士課程の課程在籍にかかる費用に対する奨学金)の選抜です。最初にお断りしておきますが、これから述べる選抜方法は、当大学で行われているもので、必ずしも他の大学で同じ方法が採用されているとは限りません。

まず、大学の、入学願書及び奨学金受給申請書を受け付ける部署で、志願者が要件を満たしているかのチェックがあります。そして要件を満たしている志願者に関しては、各志望学部に書類が送られます。そして各学部において、選抜委員会が設置され、審査員それぞれがスコアリングを行った後、協議をして、最終的に学部としてどの志願者を推薦するかを決定します(国内からの志願者と留学生とは別枠です)。その後大学全体の会議において、「うちの学部は、この志願者を推薦する」ということを示し、大学全体として、スコアリングが全学部を通してコンシスタントであるか(特定の学部の基準が低過ぎたり高過ぎたりしないか)、そして志願者の資質、研究内容などの基準が一定であるかなどをチェックします。もちろん競争的プロセスですので、学部で選ばれたとしても、大学全体の会議で落とされる場合もあります。この過程を経て、奨学金受給者の最終決定が下されます。

では、どんな評価基準が適用されるかと言うと、以下の5つです。

1. Qualifications

2. Strategic Alignment

3. Research Proposal

4. Publications and Non-traditional research outputs

5. Supervisor panel experience/support

これらに対して、スコアリングを行い、合計点を、各志願者の総合スコアとして算出し、ランキングします。ランキングする際に、点数がよく似ている志願者に関しては、さらに議論を行いますし、情報の評価漏れがないかなど、入念にチェックします。

やはり、Honoursを出ていたり、研究要素の多い修士課程を出ている志願者が有利になります(Qualification)し、もちろん研究プロポーザルも質の高いものが要求され、すでに論文を発表していると、なお有利になります。また、大学として重要な事は、この研究が、大学のストラテジーに合っているか(Strategic Alignment)、また大学・学部としてこの研究をサポートする体制(研究センターや教員の有無、研究資金等)が適切であるかということも見られます(Supervisor panel experience/support)。これは必ずしも志願者の資質に関するものではありませんが、大学として奨学金を出すからには、志願者の研究に対してサポート体制を整えておくことも重要なわけです。

奨学金は、年々競争率が高くなっていると思います。特に留学生の競争率は非常に高いです。大学としては、できるだけたくさんの有能な志願者に奨学金を割り当てたいところですが、予算がありますのでそういうわけにはいかないのが辛いところです。

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