研究チームの構成:ダイバーシティ
6月16日の日経新聞、「私の履歴書」で本庶佑先生が書かれた『サイエンスは「ホモ」でなく「ヘテロ」な人間が集まってこそ、新しい発想、斬新なアイデアが生まれる。異分野の交流や、違う環境で育った人たちを混ぜることが重要だ。違うバックグラウンドを持つ人たちが切磋(せっさ)琢磨(たくま)してこそ研究は前に進む。』という1文がとても心に残りました。
組織運営においてDiversity & Inclusion という言葉が浸透して久しいですが、この’diversity’ というのが、単にジェンダーギャップを埋めるだけではないことは明確で、このバランスが取れたチームほど、最終的には優れたアウトカムを生み出すと考えられています。それは、単に成果物の数だけではなく、ダイバーシティのバランスが取れた組織ほど良い人材を招き、良い人材作りにもつながり、良い組織として仕上がっていく、そしてそれが将来的にも続いていくというポジティブなスパイラルを意味することが多いです。
私も、特にオーストラリアで働くようになってから、この「ダイバーシティ」の効果を実感しています。それは私の講義でも、研究セミナーでも、学部運営の会議でも、色々なグループでの活動において感じることです。移民の国オーストラリアですから、もともと全く違ったバックグランドの方々と一緒に働いています。そのため、ランダムにグループを作ると、自然と色々なバックグランドの人々がいることになるのですが・・・これがある特定の目的を持ったチームとなると、当然求められるものがありますから、ランダムには選べない・・・そういう場合でも「できるだけ多様な人材をミックスする」ことが重要となってきます。例えば、研究チームですと、その分野の「博士号」あるいは「修士号」、あるいは学士レベルの学位がまずは必須条件となりますし、特定の技術を持っているか(例えばサイエンス分野だと実験のスキルだったり、私の分野だと、統計やプログラミングのスキルが問われます)が最も重視される点になります。性別や文化的なバックグラウンドの違いは、どうしてもそれらの条件が満たされてから見ることになります。
また、私が以前の記事(↓)でも記したように、コミュニケーション力も大変重要です。
様々なバックグラウンドを持ったメンバーが、多様な観点から研究結果を精査し、議論をすることは、研究の質を上げることにおいては非常に重要だからです。そして、それぞれのメンバーの経験も、違った方が良いです。これは経験豊富なメンバーが、これから経験を積むメンバーに知識やスキルを伝承する機会になりますし、時には経験が浅いメンバーの視点が、ベテランが見逃していた盲点を付くことに繋がったりして、良い相乗効果があります。
私の研究チームも今年から一新して、さらに「多様」になりました。私のチームは日本、中国、サウジアラビアでケーススタディをしておりますので、英語だけでなく、それぞれの地域の言語でのコミュニケーション力も必要ですし、その地域に特化した実務経験があるメンバーもいます。世代も文化的背景もそれぞれユニークです。時には、お互いの意見をより理解するために、とことん話をすることが重要ですが、だからこそ知識やお互いを尊重する気持ちが育ちます。こういう環境で、「切磋琢磨」して、社会に役立つ研究成果を届けたいと思っております。