小論文やエッセイの参考文献:質と量
小論文や、エッセイは、文系、理系に関わらず多くの科目でよく出される課題です。むしろ、こうした「書かせる」課題の方が、学生がその科目に関するインプットをどれくらい行ったかや、思考のプロセスが良くわかります。
学生によく聞かれるのが、例えば1500ワードの小論文だと、一体どれぐらいの数の文献を参照しているのが適当なのか?あるいはどんな参考文献が、参考文献として適当なのか?という事です。
(通常参考文献リストはワードカウントには含まれません)
上級生になると、大体心得ていますが、学部1年生や、課題の性質が違う国や他分野から来た留学生は、最初は戸惑うかもしれません。
まず、「どんな参考文献が適当なのか?」。もちろん学術的な課題ですから、国際・国内の学術誌(ジャーナル)で発表された論文(査読付き)が最もふさわしいです。しかし、ジャーナルでは発表されていないものも、参考文献に含む事が可能です。例えば、その分野の学者が書いた本(これは、多くの場合プロポーザルの段階で審査があり、最終原稿提出後には編集者のチェックが入ります)。
それから信頼性の高い国際会議や国内の会議で発表された論文(多くの場合審査を通っています)、政府が発表するレポート、専門家が一般的な雑誌やウェブサイトに寄稿した短い論考、そして新聞記事なども参考文献として適切です。これらが参考文献になり得る基準は、「きちんと精査された根拠やデータに基づく論考であるかどうか?」です。政府のレポートや、新聞記事などはジャーナルの論文ほどの厳正な審査を経てはいませんが、使われているデータや情報はきちんと裏付けがとれたものが使われます。逆に、例え新聞記事でも、信憑性が不確かなものは参考文献にしてはいけません。学者の、短い論考なども、厳正な審査を通していないものが多いですが、例えばその記事が、著者のメジャー学術誌で発表されたな論文などを参考にしていたり、データの出自を明らかにして、且つそのデータの信憑生が高ければ、そうした記事が上記の基準を満たすかどうか分かります。
こうした、明確な「信憑性が高い」と確信が持てないウェブサイトの記事などは、基本的には、いかに学生が提出するものといえども、参考文献にはふさわしくないと判断します。
では、次に「量」ですが、これは本当に分野であったりその課題の内容によります。私の専門である都市計画分野では、オーストラリアではいわゆるソーシャルサイエンスに含まれますが、日本だと土木計画分野だったりと色々と違いがあります。ここでは、私の専門分野の例を出します。
例えば、学部1年生の、1500ワードのエッセイだと参考文献は10前後、修士学生の、3000 Wordのエッセイだと20前後が平均だと思います。
エッセイや、小論文と全く質が違いますが、博士論文になると、参考文献の数は桁違いになります。
当たり前ですが、参考文献を扱うにはそれなりのルールがあります。これも分野によるのですが、ハーバードスタイルや、APAスタイルなどがよく使われる参考文献の参照ルールです。これらのルールは、参考文献を文中でどう参照するのか、文献リストにおいては、例えば各文献の発表年は著者の名前の後にくるのか、文献情報の最後にくるのか、など細かく決められています。
これらのルールに従わずに、適当に文中に入れたり、文献のリストを作ったりするとそれだけで減点の対象になることもありますので注意してください。