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海外で日本の研究を続ける理由

今年の8月、日本の災害レジリエンスに関する本を出版しました。

オーストラリアに移住してから今年で15周年を迎えましたが、ずっと日本に関する研究を続けています。去年、日本の大学で非常勤講師をしたときに、学生さんから「オーストラリアにいても、日本の研究をしているのはなぜですか?」という質問をいただきました。この質問をした理由は「​​​​日本人で、日本に関する研究をするなら、日本で研究を行った方が、実際のフィールドワークも容易にできるし、結果を実際に地域に反映するのにも有効だと思う。」というものでした。実にもっともなご意見です。

私がオーストラリアにいながら日本に関する研究を続ける理由は2つです。

1つ目は、私の専門分野(都市、交通計画、および都市災害マネジメント)において、日本という国が、多くの課題を抱えているからです。特に災害に関しては、日本が世界でも有数の災害が多い国であり、それに対する課題が山積みで、フィールドワークから、日本のみならず国際的に有益な知見を得られることも多いからです。また、日本には多くの優秀な研究仲間がいます。そうした仲間とも学び合いながら一緒に研究をするのはいつも新しい発見があり、とても楽しいです。もちろん、オーストラリアに来なかったら出会えなかった優秀な研究者もいますし、学生もいます。しかし日本の研究仲間も私にとっては一緒に学び続けていきたい仲間です。2つ目の理由は、母国に貢献したいという気持ちからです。

災害に関しては、オーストラリアは、地震の数で言うと、日本ほどではありません(しかし地震が全くないわけではありません。2021年にメルボルンで地震があり、建物が崩れるという被害がありました)。大雨や洪水、台風はよく起こっていますし、日本では珍しいですが、山火事と言う大きな災害、それから干ばつが深刻です。山火事は、2019年から2020年の初めにかけてオーストラリアでBlack Summerと言われる大規模な山火事が大きな被害をもたらしました。これは日本でも報道されたと思います。


(Photo: Hitomi Nakanishi タイトル上の写真も著者撮影)

オーストラリアで交通や災害の研究をする上で、日本との違いを感じた事は、やはり住んでいる人の価値観が全く違うことです。オーストラリアは多民族国家ですから、当たり前のことですね。日本はどちらかと言うと、単一民族国家に近く、住民の価値観がそれほど大幅に違う事はありません(多民族国家に比べてという意味で。もちろん日本でも住民間の価値観や都市・交通計画に関する考え方は違います)。オーストラリアでは、それぞれのバックグラウンドが大きく違いますので、都市や災害マネジメントに求めることも期待することもかなり幅があります。その上で、行政は政策を作り、合意形成をしていかなければいけません。

両方の国をフィールドとして研究することで、より視野が広まったことは、これまでの15年間の大きな収穫だと思います。


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