サプールへの考察、月給300ドルの紳士たち
「服が汚れるから争わない」
これはコンゴ共和国のサプール(SAPEUR) と呼ばれる、世界一お洒落な男たちの集団のマニフェスト。
3色以内でコーディネートが原則のカラフルなサプール(コンゴ共和国)
Yohji Yamamoto を愛する黒ずくめサプール(コンゴ民主共和国)
サプールとは、“お洒落で優雅な紳士協会”というフランス語の頭文字を省略したもの。
国民の平均月収約25000円の国で、サプールの彼らは高級ブランド服や高級靴を買うために長大な時間を労働に費やしている。
平日は周りの人と変わらない服装で仕事に励み、週末になると、とっておきのお洒落をして礼拝に向かう。
敬虔なカトリック信者であり、平和への想いは強い。見た目だけ着飾ったハリボテのおしゃれではなくて、彼らは本当の紳士であるために、美しい所作を身につけ、人を敬うことを忘れない。故に彼らは町のヒーローであり、また、カッコいいヒーローで居続けるための努力を惜しまないのが彼らの美学だ。
90年近く続くこのサプール文化は、1880年代にヨーロッパによるアフリカ諸国の植民地紛争に巻き込まれたことによる、彼らの強い平和主義にある。
1997年、だれもが数日で終わることを祈ったけれど、実際は1年以上も続いた2度目の内戦。盗まれないようにと庭にうめた服と靴は、やっと取り出すことが出来たときには使い物にならなくなっていた。
「服が汚れるからもう争いたくない。」
武器か洋服かを選ばなければいけないのだとしたら、問答無用で洋服を選ぶ。
サプールであることは、自身の平和への意思表示であり、世界に向けたメッセージである。
日本でも、わたしがファッション学生だったときは、ファッションバカの友人たち(褒めてます、一生懸命になれることがあるってすごく素敵だという愛情表現)が、寝る間を惜しんでバイトして、コムデギャルソンやディオールオムとかに全財産を注ぎ込んでいた。わたしも、その学校の卒業式の時に、どうしてもツモリチサトのまっしろなひらひらドレスが着たくて、決して安くはない金額をバイト代からはたいた。
今でも、そういう文化ってあるんだろうか。今どきの学生は、メルカリで売ったり買ったり、要領よく欲しいものを手にしている、そんな勝手なイメージがある。。。(違ってたらごめんなさい)
なりたい自分になるために、精いっぱいの背伸びをして憧れの洋服を手に入れるという行為。今でこそ経済的に自立しているから、欲しいものはちょっと無理すれば、深く考える前に手が届いちゃったりする。(全部じゃないけど!)選択肢が増えて、それはもちろんいい事でもあるけど、その分愛情(パッション)が分散されたりもする。
そんなときにサプールの彼らの哲学に触れて、見た目だけじゃなく、中身も相当カッコいい彼らはなんて潔いのだと、わたしのこころにグッときたのだった。
サプールの皆さん、あなた達は世界一カッコいい。