1UP毎日
この間散歩をしていたら、愉快な男子中学生を見た。
その日、私は川沿いを歩いていた。
川幅は5メートルくらいで、流れは穏やか。深さはくるぶしくらいだろうか。これぞ小川、というような、大変川らしい佇まいの川だ。
小さな川ではあるが、向こう岸に渡れるように、ところどころ小橋が架かっている。
が、部活を終えて帰宅中と見られるその彼は、あえてその橋を渡らず、水面から顔を出している小さな岩々に向かっていった。
彼はその小さな足場に狙いを定めた次の瞬間、軽快なステップで不規則な岩の上を次々に飛んで行った。
もちろん整備された配置の岩ではないので、向こう岸に渡るのはそれなりに困難な試練だと見受けられる。しかし、彼はほとんど足元も見ずさらりと向こう岸にたどり着いた。
彼はその後、何事もなかったようにスタスタと歩いて行ってしまったが、こちらに渡ってきた彼が、にわかに満足そうな表情をしているのを、私は見てしまった。
あ、今、1UPしたんだな、と思った。
(※1UPを知らない方、訳のわからない話をしてごめんなさい。コンピューターゲームにおいて、操作しているキャラの残機が増えることを指します。)
彼の足さばきから見て、多分この場所で1UPするのは初めてではないだろう。
最初はただ橋まで歩くのが面倒だっただけかもしれない。だが岩を伝ってみると意外と冒険心が刺激されるような難易度でわくわくしてしまい、いつの間にかそこを渡りきること自体がひとつのミニミッションのようになっていたかもしれない。
少なくとも私にはそんな表情に思えてならなかった。
思えば生活の中で自分なりの1UPをしている人は、意外と多いのかもしれない。
私の上司はやや建付けの悪い会社のドアを、ドアノブを握らず適切な距離から手を離すことで、綺麗ぴったり閉じることができると、心なしか満足そうな顔をする。
また違う上司は、少し離れた位置からゴミ箱に向かって日々ゴミを投げ入れる挑戦を欠かさない。入ったときは「ッうし」という言葉とともに控えめなガッツポーズをかましている。
(毎日やっている割に命中率が低いことについての分析は、ここでは割愛する。)
こういった意味がありそうでないような動作は、まさしく生活のなかで繰り広げられるささやかな1UP行動なのかもしれない。
みんなそうやって、自分なりの1UPにより日々自分の残機を楽しく増やしているのかもしれない。
皆さんは何か自分なりの1UP行動はありますか?
ちなみに私は、製氷皿(トレー?)に作った氷を全部一度で取り出すことができると1UPしている。製氷皿がガチガチすぎてなかなか出せない問題について、有効な手段があればそれもぜひ教えていただきたいです。