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【後編】カウンターカルチャーと初期のハッカーの思想をつなぐロードマップ
~前編の続き~
ここで僕は、ハッカーたちの思想は「アメリカ的」ではないか、ということに思い当たった。
アメリカ的なものとはなんだろうか? 大量生産・大量消費の資本主義大国のことか? それともアンクル・サム的な、西側諸国を統べる大国家というイメージだろうか?
僕がここで扱いたいのはピューリタンとしてのアメリカ人のことだ。
この記事でピューリタンに基づくアメリカ人的思想を述べていると一冊の本が出来上がりかねないので簡単に説明しよう。
アメリカはイギリスで迫害されたピューリタン(清教徒)が自分たちで作り上げた国であると一般には言われる。
最初の移住者はとんでもない苦労を味わい、一年で過半数が死亡するといった困難を乗り越え、アメリカをここまでの大国にした。(という神話でもある)
こういった自負心、独立心を体現した人物のことをセルフメイド・マンと呼ぶ。歴史上の人物ではアメリカ建国の父であるベンジャミン・フランクリン、小説ではフィッツジェラルドの「偉大なるギャツビー」のギャツビー、フォークナーの「アブサロム、アブサロム!」のサトペンが典型の人物だ。
セルフメイド・マンは自分たちでなんでもしようとする。ベンジャミン・フランクリンは教育を受けられず貧しい家庭で育ったが、独力で勉強し政治や科学の方面で名を残すなど「理想のアメリカ人」と言われた。ギャツビーは貧困から一代で大富豪にのしあがり、アメリカン・ドリームを体現する。サトペンも貧しい子供時代を恨み、どんな手を使ってでも広い土地を手に入れようとする。
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カウンターカルチャーもまたアメリカ的、ハッカー的と言えるだろうか?
カウンターカルチャーの代名詞ともいえるヒッピーたちは環境運動や動物愛護、反戦運動などの活動を行い、ドラッグを愛し、東洋思想に関心を持ち、コミューンで暮らすなどしていた。
体制に反発し、コミューンで権威に頼らない独立した生活をするという点でハッカーたちの思想と共通している。ただ、反体制とはいえ左派寄りであるという点はハッカーと異なる。
また、ヒッピー文化はカリフォルニアで花開いたムーブメントだが、冒頭に挙げた通りカリフォルニアにはコンピュータ史上重要な研究所や企業が軒を連ねている。ただの偶然かもしれないが。
カウンターカルチャーとハッカーの結節点としてのスチュアート・ブランドは重要な人物だ。
ブランドはケン・キージーやニール・キャサディたちの伝説的なコミューン、「メリー・プランクスターズ」と行動を共にしていた。(彼らが乗っていたマジックバス、FURTHUR号はビートルズの「マジカル・ミステリー・ツアー」の元ネタになったとされる)
そんなヒッピー文化の中心地にいた彼はある時からコンピュータに目覚めはじめ、パロアルト研究所に出向いたり、ハッカー会議に出席したりしている。
また、「パソコンもインターネットもウェブサイトもカウンターカルチャーが作り出した。」という旨の主張を「TIME」誌に寄稿、また彼の代表作である「ホール・アース・カタログ」では最終刊に記載された「Stay hungry, Stay foolish」をスティーブ・ジョブズが講演で引用するほどである。
(参考:https://ftip.jp/media-ftip/578)
ちなみに「ホール・アース・カタログ」は無料で公開されている。下のリンクをクリックしてみよう。
関係性をあげるとざっとこんなものなのだが、実際どうなのだろう? 世の中にはカウンターカルチャーとハッカー文化を結びつけたがる人が多いが、アメリカ的な独立心が起こしたシンクロニシティのような気がしなくもない。だって片方はリバタリアニズム、片方は左派寄りなのだ。
ここで紹介しきれなかったサイバーパンクやメディア論との関連はまたいつかどこかで。
「サイバーパンクはヒッピーの夢を見るか? バロウズとギブスン、マクルーハンからのメッセージ、ドラッグとテクノロジーで身体と意識を拡張せよ!」次回連載未定。