「恋も知らないで」上演台本
HitoYasuMi Vol.9「恋も知らないで」 作/大村仁望
〈登場人物〉
南昭夫(25)……コンビニで働くフリーター。
笹塚恵(27)……便利屋オフィスチェルシーの副代表。
相原百合香(30)……便利屋オフィスチェルシーの従業員。恋多き女。
剛田久美子(29)……便利屋オフィスチェルシーの授業員。漫画好き。
神山篤二(31)……便利屋オフィスチェルシーに出入りするチンピラ風の男。
妹尾みはる(23)……便利屋オフィスチェルシーの従業員。キャラものが好き。
桃園吉大(28)……便利屋オフィスチェルシーの利用者。
千堂佳恵(28)……便利屋オフィスチェルシーのオーナー夫人。
佐川桐子(25)……配達会社「アサッテクル」の配達員。昭夫の幼馴染。
千堂正道(40)……便利屋オフィスチェルシーのオーナー。
笹塚夏実(16)……恵の妹。
〈開場中〉
便利屋、オフィスチェルシーの事務所。
上手にソファと応接スペース、奥に給湯室がある。
下手には事務スペース、後ろにパーテーションがありその奥が出入り口になっている。
夜。事務所の中のラジオがつけっぱなしである。
昭夫がソファの上でタオルケットにくるまって寝ている。
ラジオの放送内で前説が入る。
◯定刻、暗転。
◯「オープニング」8月29日 9:30
蝉の声。明転。
昭夫がソファから飛び起き、しばらく呆然としている。
ラジオを消し、時間を確認し、外を伺いながら出て行こうとするが、
人気を察知し立ち止まる。
百合香「(以下声)久美子ちゃん、おはよう」
久美子「おふ、百合香さん。おはようございます」
百合香「今日もチャリ?」
久美子「ロードバイクと言って欲しいですな」
百合香「暑いのに大変でしょ」
久美子「シャワー借ります!」
昭夫、出るに出れず隠れ場所を探す。
ギリギリで百合香の机の下に隠れる。
百合香、久美子、入って来る。
百合香「おはようございまーす」
久美子「誰も来てない。なんかモアっとしません」
百合香「タイマーで冷房入れといてって言ってるのに」
久美子「窓、窓開けましょよ」
百合香「いやよ排気ガス入って来るもん」
久美子「暑し!」
百合香「昨日ここ誰が閉めたっけ」
久美子「ざわ。なんか独身男性の部屋みたいな匂いが」
百合香「何それ」
久美子「カップラーメンを排水溝で茹でてそこに体臭をドッキンッグさせたような」
百合香「表現」
久美子「しません?」
百合香「いいからシャワー浴びて来たら」
久美子「はあい」
久美子、奥へ。
百合香、軽く汗を拭く。
久美子「(声)ファッ?なんか床びちゃびちゃ」
百合香「何—?」
百合香、ラジオをかけパソコンを起動させたり、掃除を始める。
かかってる曲を口ずさんだりしながら
恵(めぐみ)、入り。
恵 「おはようございます」
百合香「恵さん、おはようございます」
恵 「プリプリですか?懐かしい」
百合香「リンドバーグね」
恵 「…」
百合香「どうしたの?」
恵 「なんか…いつもと違いません?」
百合香「え…?」
恵 「雰囲気…(事務所の)」
百合香「わかる!?シャンプー!変えたの」
恵 「…」
百合香「ハーブガーデン。どう?香る?」
恵 「ああ…」
百合香「でもさ、この辺じゃあんまり売ってなくて。千住のルミネまで行って来たわよ」
恵 「…気のせいか」
百合香「気のせいじゃないわよ。さすが、鼻がきくわね」
恵 「ハーブガーデンてなんですか」
百合香「知らない?インスタで芸能人が投稿して一気に有名になったシャンプー。ノンシリコンのボタニカル」
恵 「へえ」
百合香「恵さんは何使ってるの」
恵 「メリットです」
百合香「あ、そう」
それぞれメールチェックなど始める。
恵 「なんでシャンプー変えたんです」
百合香「一つの恋が終わったのよ」
恵 「え!」
百合香「ま…またゆっくり話すわ」
恵 「こないだ言ってた人ですか」
百合香「大した男じゃなかったわ。次に行かなきゃ」
恵 「花火大会は」
百合香「(首を振る)」
恵 「そうなんだ…」
百合香「恵さんは?もう夏も終わるわよ」
恵 「私は別に…」
百合香「そう?勿体無い」
恵 「最近、家でアロエを育て始めたんですけど」
百合香「アロエ」
恵 「与太郎って名前をつけたんです」
百合香「ねえ、大丈夫?そのまま与太郎とラブラブに生活してくつもりなの」
恵 「ラブラブって。与太郎はアロエですよ」
百合香「アロエだろうが犬猫だろうが女が人間以外のオスに名前つけて同棲始めたら終わりよ」
恵 「同棲って」
百合香「ほんと、ここはこじらせ女子の巣窟ね」
恵 「そんなことないでしょう」
久美子「(声)すみませーん。そこのバッグの中にあるタオル取って来てもらえないですか」
百合香「ええ?」
百合香、文句を言いながら久美子のバッグを持って奥へ。
恵。一人で仕事の準備をしている。
昭夫、そっと机の下から顔を出す。準備に夢中で全く気づかない恵。
百合香「(声)自分で持って行きなさいよ」
久美子「(声)ありがとうございます」
百合香「(声)もう」
恵は気にせず準備を続けている。
恵にバレないようこっそり慎重に事務所から出て行こうとする昭夫。
百合香「(声)…あ!やだ」
久美子「(声)え!何!」
百合香「(声)出た!」
久美子「(声)え!」
百合香「(声)そっち入った!」
久美子「(声)おおおおお」
百合香「(声)いやああ」
百合香、事務所に飛び込んでくる。昭夫、隠れる。
百合香「殺虫剤どこ殺虫剤!」
恵 「え?G?」
百合香「この辺?」
百合香、恵、給湯室に入って殺虫剤を探す。
昭夫、その隙に事務所の外へ向かおうとする。
久美子「おおおご家族ですーーーー」
久美子、中途半端に着替えて入ってくる。
昭夫、事務所に戻り、ギリギリで作業着などがかかってるラックの下に隠れる。
恵 「久美子ちゃん格好!」
久美子「おおおおはようございます」
百合香「何匹!」
久美子「今なら三匹とも並んでます!」
百合香「どこどこ!」
三人殺虫剤を持ってシャワー室の方へ。
やいのやいの言いながらゴキブリと戦ってる三人。
昭夫、ラストチャンスとばかりに事務所から出て行こうとする。
久美子「(声)あ!一匹どっか行った!?」
百合香「(声)いいからとりあえずこいつらを!」
恵 「(声)追い詰めて追い詰めて。久美子ちゃんはそっち!」
ゴキブリの一匹が事務所に入って来た模様。
ビビる昭夫。とっさに殺そうとする。
ゴキブリは昭夫から逃れようとデスクに登った模様。
昭夫、デスクの上にある恵の飲みかけの「いちごオレ」に気づく。
「いちごオレ」を守ろうと、それを手に取りゴキブリと戦う昭夫。
ゴキブリを靴底で攻撃する昭夫。
ゴキブリは床まで吹っ飛び、生き絶えた様子。
久美子「次はお前じゃー!」
久美子、着替えた状態。殺虫剤を持って事務所に入って来る。
昭夫、「いちごオレ」を持ったまま慌ててまた机の下に隠れる。
後から百合香、恵入ってくる。
久美子「どこじゃ!」
百合香「どこ行った」
久美子「…む?」
恵 「え?」
久美子、昭夫が倒したゴキブリの亡骸を見つける。
久美子「理由はわかりませんが死んでます」
恵 「殺虫剤が時差で効いたのかな」
百合香「よかった」
久美子「復活する前に捨てましょう」
百合香「よろしく」
久美子「おりゃー」
久美子、ティッシュでゴキブリを包む。
久美子「駆逐してやる!」
百合香「もう死んでるでしょ」
恵 「ちゃんと二重に包んで捨ててね」
久美子「御意」
百合香「これで一安心ね…」
恵、「いちごオレ」を飲もうとするが、ない。
恵 「…?」
久美子、ゴキブリをビニールに包んで捨てる。
久美子「いやあ、朝から大変でしたね〜」
百合香「ほんと勘弁してほしいわよ」
恵 「ねえ、私のいちごオレ知らない?」
久美子「さあ」
百合香「そんなの飲んでた?」
恵 「…」
久美子「せっかくシャワー浴びたのにまた汗かいちゃったよお」
百合香「また浴びたら?」
久美子「いいです。クーラー効いて来たし」
百合香「ほんとだ」
久美子「(空調の下で風を感じ)涼し!」
恵 「あれ、タイマーかかってなかったですか」
百合香「昨日閉めたの恵さん?」
恵 「はい」
百合香「朝来たらすっごいモアっとしてて」
恵 「おかしいな」
百合香「忘れてたでしょ」
久美子「ま、そういう事もありますよ。百合香さんだって、ほら。お気に入りが現れるとすぐ仕事に身入らなくなるじゃないですか」
百合香「そんな事」
久美子「ね…あれ、どうなったんすか」
百合香「え?」
久美子「こないだ言ってた花火大会」
恵 「聞かないであげて」
久美子「えーーー、まじですか?」
百合香「ゴキブリも殺せないような女が結局モテる時代よ」
久美子「はあ、しゃらくせえっすね!」
恵 「私たちみたいなタイプは強そうに見えちゃうのかもしれませんね」
百合香「全然そんなことないのに」
久美子「でもぶっちゃけモテるでしょ?」
百合香「え?」
久美子「恵さん」
百合香「ああ」
恵 「いやいや」
久美子「この夏なんもなかったわけじゃなかろ〜?」
恵 「…最近…」
百合香「与太郎?」
久美子「よた?」
百合香「アロエと同棲始めたんだって」
久美子「はっ?」
恵 「最近…誰かにつけられてる気がするんだよね」
間。
久美子「…またまた」
恵 「昨日も、事務所のあたりを男の人がウロウロしてて」
百合香「え?」
間。
百合香「ほらもう、こんな時与太郎は助けてくれないでしょ。男、男作りなさいって」
恵 「そんな…作るったって」
久美子「そういうモテ方するタイプかあ…」
百合香「どんな男なの」
恵 「背は…180くらいで…」
百合香「うん」
恵 「細身で…」
百合香「うん」
恵 「顔は…」
突然鳴る電話。
久美子「うおおお心臓に悪し」
百合香「静かに」
恵、電話に出る。
恵 「お電話ありがとうございます。あなたの便利屋「オフィス チェルシー」です。…はい、中野様。いつもご利用ありがとうございます。…はい。かしこまりました。はい。大丈夫です。ではこれよりスタッフを向かわせますので。はい。よろしくお願いいたします」
恵 「久美子ちゃん、中野さん家。また猫ちゃん脱出しちゃったらしいから」
久美子「また?しょうがないなああいつ」
恵 「マタタビ買っていいから。領収書だけお願い」
久美子「はいはい」
百合香「今日旦那様もいるみたいだから、きちんとご挨拶してきてね」
久美子「御意。いってきます」
恵・百「行ってらっしゃい」
久美子、出ていく。
百合香「さっきの話本当?」
恵 「はい」
百合香「いつから」
恵 「一ヶ月前くらいですかね」
百合香「思い当たるような男はいるの?」
恵 「いや…知り合いではないと思います」
百合香「元彼とか」
恵 「…百合香さん。私ずっと彼氏いないの知ってるでしょう」
百合香「そう、よね…」
恵 「でも見られてる気がするだけで、特に何もないんです」
百合香「何か盗まれたりとかも?」
恵 「…うーん。でも、もともと私ぼーっとしてるから。今も、いちごオレ飲んでないのに飲んでたような気がしてたし」
百合香「これは何か盗まれてても気づかないわね」
恵 「…私本当にいちごオレ飲んでなかったですか?」
百合香「知らないわよ…。あ!」
恵 「え」
百合香「盗まれた?」
恵 「え?…今?」
百合香「(頷く)」
恵 「この…ゴキブリ騒動の間に」
百合香「犯人は…この中にいる!」
間。怯える昭夫。
恵 「百合香さんですか?」
百合香「違うわよ、そうじゃないでしょ」
恵 「なんなんだろう」
百合香「本当、そういう奴らの気が知れないわ。気が触れてると思わない?」
恵 「ま…あそうですね」
百合香「まそれだけ強い執着を持った恋愛、悪くないのかななんて思ったりもするけどね」
恵 「そんなの恋愛じゃないですよ」
百合香「見てるだけでいいなんて究極のプラトニックかもよ」
恵 「プラトニックって言いますそれ?」
恵の携帯に着信。
恵 「どうしましたー?…え?…もう。今どのへん?…じゃあ戻って来て。こっちも向かうから。ファミマのあたりで。うん。了解」
電話を切る恵。
百合香「久美子ちゃん?」
恵 「はい。お財布忘れたって」
恵、久美子の財布を持って出ていく。
百合香「恵さん、気をつけてね」
恵 「大丈夫ですよ。そこのファミマまで行くだけです」
恵、出て行く。一人になる百合香。
百合香「プラトニック…か。その辺に転がってないかな、私の王子様」
百合香、伸びをした瞬間、足が机の下の昭夫に当たる。
百合香「…」
百合香、昭夫の存在を足先で確認する。怖くて下は覗けない。
百合香、ゆっくり事務所の棚にあった十手に手を伸ばす。
十手を持って、机の下にいる昭夫を覗き込む。
百合香「…」
昭夫 「…」
昭夫を目視した百合香。
間。
昭夫 「…あの」
百合香「…うああああああ!!!」
昭夫 「ちょっ…!」
昭夫、机から慌てて出てくる。そこへ恵。
恵 「百合香さん!?」
百合香「恵さん恵さん恵さん!」
恵 「?」
昭夫 「!」
昭夫と恵、目が合う。
恵、昭夫が手にしている「いちごオレ」に気づく。
恵 「…いちごオレ…」
百合香「…うあああああああ!」
百合香の悲鳴の中見つめ合う恵と昭夫。
M1
◯昭夫モノローグ
昭夫 「僕の働くコンビニへいつも彼女はやってくる。汗で少し湿らせた髪、メイクが崩れてなお品の漂う美しい顔。買うのは「国産鶏のたっぷりそぼろご飯」。僕は聞く『温めますか』彼女は答える『お願いします』三十秒間だ。弁当が温まる三十秒間の間、僕の視界は彼女一人でいっぱいになる。近くに住んでるんですか?一人暮らしですか?なんでいつもそぼろご飯なんですか?そういえば今日はいちごオレは買わないんですか?でもこんな遅い時間にあんな甘いものを取るのはやっぱり良くないですよね。肌荒れでもしたら困りますもんね。肌、綺麗ですよね。髪も。結構気は使うタイプですか?ってこんな事聞いたら気持ち悪いですよね。ずっと見てました。あなたのことを。ずっと考えてました。あなたのことを。5時に出勤して22時にあなたがくるまでの時間、この瞬間のことをずっと思ってました」
レンジの音が響く。
昭夫 「無常にも店内には僕の心の声をかき消すレンジの音が響き渡る。三十秒。三十秒はあまりにも短い。今日も言えなかった。彼女に何も言えなかった。これだけ頭の中には言葉や、想いが溢れているのに。『お待たせしました』僕はあなたに『国産鶏のたっぷりそぼろご飯』を渡す。これを渡したらあなたは行ってしまう。行かないで、まだ一言も僕は…。そんな僕には目もくれず、あなたは無言で弁当を受け取り自動ドアの向こうへ、夜の闇へ消えて行く。あなたに届かない『ありがとうございました』を僕は今日も言う」
ドアチャイムの音が響く。
昭夫 「少しだけ触れた小さな細い指。あなたがその指で、どう愛しい人に触れるのか知りたい。いや知りたくない。ああ、僕の、脳内はたった三十秒間の間でこれほどまで狂ってしまう」
照明変化。
昭夫、事務所の中を歩く。
昭夫 「ある夏の昼下がりだった。あなたはお中元の注文をしにやって来た。『静岡銘茶詰め合わせ』仕事関係の人に送るんだろう、あなたらしい上品なチョイスだ。そしてあなたはレジに個人情報が載った伝票を残して行った…。だめだ、だめだ、それをしてはダメだと思いながら僕は!あなたの名前と職場の住所を…控えてしまった。僕の行動は店にバレ、クビになった。当然だ。でも、それほどまであなたが恋しかった。あなたの情報を手にいれた僕にとっては、職を失うことなどどうでもいい事だった。あなたの名前は「笹塚恵」葛飾区堀切二丁目にある便利屋「オフィスチェルシー」で働いている。あなたの名前、職場の名前を検索にかけ、僕はここへ忍び込んだ!この空間で感じたかったんだ。なぜあなたはこの仕事を始めたのか、毎日あなたがここで何を思ってるのか。このデスクに座り、ソフアにもたれて…。一日の大半あなたが何を見何を感じてるのか僕はここで想像した。…狂ってる、そうだ僕は狂ってる。僕にここまでさせてしまうあなたは一体何者なんだ。そしてこんな僕こそ一体何者なんだ。あなたと出逢うまで、僕は今まで何を見て、何をして生きてきたんだ。恋も、知らないで」
暗転。
◯「面接」 8月29日 10:30
上手、応接スペースに千堂と昭夫が座っている。
百合香は下手のデスクに座りパソコンに向かっている。
千堂 「つまり…君は求人募集を見てここに来たと」
昭夫 「は、はい」
千堂 「でも、おかしいよね。普通さ、まず電話してアポとって来るもんじゃない」
昭夫 「はい、その、いても立ってもいられなかったというか」
千堂 「…どゆこと」
昭夫 「たまたま、その、ここが僕が働きたい事務所かあ〜ってなって。ちょっと上がって見たら…、あ、入れる〜ってなって…僕すんごい疲れてて…ちょっとだけ座らせてもらおうかなって…ちょっと座ったら出てこうってしてたらそのままソファで意識を失っちゃって。絶対不審がられると思って隠れてました」
千堂 「隠れてた…か。うん、それは何かやましいことがあったからじゃないの?」
昭夫 「何もないです」
千堂 「何しに来たの」
昭夫 「は、働きたくて…」
千堂 「…履歴書は」
昭夫 「…今はないです」
千堂 「正直男手は欲しい。うちは女性スタッフがメインなんだ。ただ、君のように得体の知れない若者が入って来ると…なんだ。なんか怖いじゃん。普段僕もここにあまりいられないし」
昭夫 「とりあえず、履歴書買って来ます」
千堂 「ああ、待って。出てくなら名前と連絡先書いて。あと身分証も見せてね」
昭夫 「え、採用ってことですか」
千堂 「うん違うな。君はさ、僕のオフィスに忍び込んだ不審者なんだよ」
昭夫 「ちょちょ、待ってくださいよ」
千堂 「通報しないだけありがたいと思って。何かあったら困るから。はい。ほらここ、書いて」
昭夫 「いやいや待ってくださいよ。本当、僕は人畜無害な男なんです。ここへ勝手に入ったのは謝ります。でも決して何か傷つけたり盗んだり悪いことするような血気盛んなタイプじゃないんです。どちらかと言うと内気だし消極的なタイプなんです」
千堂 「内気」
昭夫 「う、内気です。あの、普通の優しい人ならいいんですけど、怖い人とか綺麗すぎる人とかは割と苦手で、はい」
千堂 「君、ここ何屋かわかって来てるんだよね。ここは色んな人が依頼に来るんだよ。怖いから無理、とか、綺麗だから緊張する、とか言ってたら仕事できないわけ。わかる?」
昭夫 「もちろん、頑張ります」
恵、飲み物を持って入って来る。
恵 「千堂さん、志望動機とか…」
千堂 「…。なんでここで働こうと思ったの」
昭夫 「それは…」
昭夫、一瞬恵を見る。
昭夫 「人助けがしたいと思いました」
千堂 「…ふむ」
昭夫 「誰かの、力になりたい…。困ってる人を助けたいって」
千堂 「困ってる人…ね」
百合香「いい理由じゃない」
千堂 「…百合香ちゃん。こっちは面接してるんだよ、話しかけないで」
百合香「オーナー、圧迫面接みたいで怖いんですもん」
千堂 「怖くはないでしょうよ。あのね、僕は君たちの身を案じて…。何かあったら男の僕が守らなきゃと思って彼と話してるわけだよ」
百合香「ま、男らしいこと」
千堂 「…。今日はもう帰っていいよ」
昭夫 「あの、履歴書持って来るんで。改めて面接を…」
千堂 「あーそうねえ。僕しばらく忙しいからなあ。…また電話して」
百合香「(小声)これ、取らないパターンじゃないですか」
恵 「ですね」
昭夫 「え?取らないパターンなんですか?」
百合香「聞こえてた」
千堂 「いやいや一応検討はするけど。今日のとこは、ね」
昭夫 「取ってください…。僕、無職になったばかりなんです。ここで働きたいんです」
千堂 「だから、取らないとは言ってないじゃない。でもさ、適材適所って言葉があるでしょ?君にはもっと向いてる仕事がもしかしたらあるかもしれないよね。いくつか候補を持つべきじゃないかな。職安とか行ったの?」
昭夫 「そんな。…僕はここがいいんです」
千堂 「ここ、チンピラみたいな人も来るよ?大丈夫なの?」
昭夫 「大丈夫です、睨みつけてやります」
神山 「(声)うぃーす」
神山、入って来る。柄シャツを羽織り、見るからにチンピラ。
昭夫、威圧感を受け気配を消す。
恵 「何の用?」
神山、恵の肩に手を回す。それを外す恵。
神山 「何の用はねえよな」
昭夫 「…」
神山 「みはるは?」
恵 「まだ来てないけど」
神山 「あ?何で」
恵 「今日は午後出勤なの」
神山 「あそ。…百合香。元気?」
百合香「『百合香さん』でしょう。年上なのよこっちは」
神山 「それを言うなら、百合香サンも敬語使ったら?こっちはクライアントなんだから」
百合香「何?サボりに来たの?」
神山 「最近みはるがライン返してくれないんだよね。何でか知らない?」
百合香「さあ」
神山 「そっか。…うす」
千堂 「うす。神山くん、今日もキマってるね」
神山、千堂の肩を組んで部屋の隅に。
神山 「…最近嗅ぎ回ってる奴がいるぞ」
千堂 「え?」
神山 「あんたが夜何してるかマークしてる奴がいんだよ。心当たりあんだろ」
千堂 「ええと…」
神山 「ありすぎてわかんねえか」
千堂 「え?…あ、ああ。え?」
神山 「俺は詳しく知らねえけど。…あんまり奥さん泣かすなよ」
千堂 「わかってるよ」
神山、昭夫に気づく。
神山 「何このひと。新人?」
千堂 「いや、面接してたとこ」
神山 「ふうん…」
神山、昭夫をジロジロ見る。
神山 「…受かるとイイネ」
昭夫 「…はい」
神山 「じゃ、行くわ。オーナー、また上野のキャバ行こーね」
千堂 「はいはい」
神山 「これ」
神山、千堂にぬいぐるみの入った袋を渡す。
神山 「マイメロ。UFOキャッチャーで取って来たから、みはるに渡しといて」
篤二、ハケる。
百合香「本当暇なのね」
恵 「この前も駅前のゲーセンで見かけた」
百合香「健気よね」
昭夫、固まってる。
恵 「大丈夫?」
昭夫 「今の人は…」
百合香「チンピラよ」
恵 「見た目はね」
千堂 「睨みつけてやるんじゃなかったの?」
昭夫 「や…」
恵 「悪い人じゃないの。常連さん」
百合香「あの人の事務所の清掃は、うちがやってるのよ」
昭夫 「事務所…!」
恵 「そうそう」
昭夫 「…僕、中学の時いじめられてたんですけど、まさにあんな感じのやつにやられてて…」
恵 「そうなんだ…」
昭夫 「あ!でも、全然、今は、へっちゃらですけどね。全く怖いとかないですよハハ」
千堂 「びびってたでしょ」
昭夫 「全然。ただ、ちょっと過去を思い出しただけです」
千堂 「こんなものでみはるちゃんの気を引こうだなんて、可愛い男だよ」
千堂 、マイメロを机の上に
恵 「午後から来るんだけど、もう一人若いスタッフがいるの」
昭夫 「はあ」
千堂 「あんなのチンピラのうちに入らないからね。このエリアは『本物』の人も多いし、利用者の中にも何人かいる。うちはハートの強いやつじゃないと働けないよ」
昭夫 「…まさに僕にはうってつけですよ…」
百合香「目、泳いでるけど大丈夫?」
昭夫 「およ泳いでないです」
千堂 「…」
恵のスマホが鳴る。恵、出る。
恵 「どうしましたー?…うん。…あ、ミミちゃん見つかった?そうよかった。…うん。…え?…うそ。今どこ?…わかった。応援行きます」
百合香「どうしたの」
恵 「中野さん家の猫ちゃん、見つかったんだけど土管の隙間にはまってたらしいんです」
百合香「土管の隙間?」
恵 「三丁目に土管の空き地あるじゃないですか。あそこ。ジャッキが欲しいって」
百合香「ジャッキで土管て持ち上がるの?」
恵 「ちょっと状況がわんないけど。とりあえず私行って来ます」
百合香「大丈夫?私行ってもいいけど」
恵 「いえ。百合香さんは電話番お願いします。ええと作業着…」
昭夫 「僕行きます」
恵 「え?」
昭夫 「力仕事ですよね。僕行きます」
恵 「本当?」
千堂 「ちょっと、まだ採用したわけじゃないんだけど」
昭夫 「僕は、人助けがしたいんです!」
千堂 「でも」
昭夫 「あ、猫助けか」
千堂 「…」
昭夫 「猫助けもしたいんです!」
千堂 「…」
昭夫 「力仕事は任せてください!…少なくとも、恵さんよりは力あります」
恵 「…」
恵、笑い出す。
千堂 「恵ちゃん?」
恵 「いいじゃないですか。千堂さん」
千堂 「え?」
恵 「採用で」
千堂 「ええ?」
恵 「猫好きに悪い人はいないです」
千堂 「でも…」
恵 「ええと」
昭夫 「南です!南昭夫と言います」
恵 「南さん、下の納戸にジャッキがあるから、それを持って現場に向かってもらいます。現場には久美子さんがいるので合流し次第彼女の指示に従ってください」
昭夫 「はい!」
恵 「事態は一刻を争います。猫ちゃんも衰弱してるとのことなので急いでこれに着替えて向かって下さい」
百合香「ここ住所」
百合香、住所のメモ書きを渡す。
昭夫 「ありがとうございます」
恵 「久美子さんには連絡しておくので」
昭夫 「はい」
百合香「こっちで着替えて、案内するね」
百合香、昭夫出て行こうと
恵 「行ってらっしゃい」
昭夫 「…行ってきます!(声)久美子さんて誰ですか?」
百合香、 昭夫、ハケ
千堂 「いいの?本当に」
恵 「いいですよ」
千堂 「恵ちゃんを尾けてた男かもしれないんでしょ」
恵 「多分彼ですね」
千堂 「え?」
恵 「名乗ってないのに、名前で呼ばれました」
千堂 「ちょっと…!」
恵 「逆に、正体がわかったならもう怖くないから大丈夫です」
千堂 「そういうもの?」
恵 「いい人そうじゃないですか」
千堂 「えええ」
恵 「…少なくともあなたよりは」
千堂 「…は?」
恵 「私、知ってますから」
千堂 「ちょ…なんのことよ〜?」
千堂、恵の肩に手を置こうとするが振り払われる
恵 「…嫌いなんですよ。そういうの」
恵、出て行く。追って千堂ハケ。
転換。
◯「みはる登場」 8月29日 13:00
百合香仕事道具持って入る。パソコンを触る。
久美子、作業着を着て水分補給をしながら入ってくる。
追って昭夫。恵、昭夫に飲み物を渡しに入る。
久美子「こう見えて力持ちなんだあ。でも猫に対してはジェントルだったんですねえ。いきなりこんなのが来て、私としては「アッ?」て感じだったんですけど。最終的にはやるじゃねえかおめ〜って感じですよ」
恵 「中野さんも喜んでたみたいでよかった」
久美子「マダムキラーってああいうことなんですかねえ。中野さん目キラキラさせちゃって」
百合香「やるじゃない」
久美子「帰りにビックリマンチョコくれましたよ。子供じゃねえ〜って思ったけど、有り難く頂いたよ。な、昭夫」
昭夫 「はあ」
百合香「もう昭夫呼ばわりなの」
久美子「は…。馴れ馴れしかったか。すまん、昭夫どの」
昭夫 「『どの』はいらないです」
久美子「じゃあ昭夫でいいか」
昭夫 「なんでもいいです」
恵 「じゃあ、『昭夫くん』でいいかな」
昭夫 「はい!」
百合香「昭夫♡」
昭夫 「はい?」
久美子「なんだなんだ」
恵 「昭夫くん力仕事やってたの?」
昭夫 「いやただのコンビニ店員です」
恵 「コンビニ…」
昭夫 「あ…それにしても、やりがいのある仕事ですね!」
恵 「?うん」
百合香「もう採用ってことでいいのよね?」
恵 「はい。採用です」
百合香「改めて、よろしくね昭夫くん。相原百合香です」
昭夫 「よろしくお願いします」
恵 「『オフィス チェルシー』の副代表、笹塚恵です。困ったことがあったら何でも聞いて下さいね」
昭夫 「はい!よろしくお願いします」
久美子「私はさっきしたからいいよね」
昭夫 「はい。剛田久美子さん、好きなものは漫画とビール」
久美子「それな」
恵 「いきなり採用にしちゃって、この会社の説明ほとんどできてないから、しないとね。ちなみにいつからちゃんと働ける?」
昭夫 「無職なんで今からでも」
恵 「そうなの」
昭夫 「はい!なんでも教えてください」
恵 「じゃあ…簡単に説明するね。ここは『オフイス チェルシー』町の便利屋さんです。スタッフは女性四人。仕事内容は…。まあ…便利屋だから十人の依頼者がいたら十通のお仕事があります。基本的に営業時間は朝の十時から夜の十時まで。家は近く?」
昭夫 「お花茶屋の二丁目です」
恵 「共栄学園の方か。じゃあ遅くまでいてもらっても大丈夫ですね」
昭夫 「はい」
恵 「よくあるお仕事は犬猫の捜索、引越しや模様替えの手伝い、浮気調査に家事代行や買い物代行ってとこかな」
百合香「先にNGあれば教えてね。アレルギーとか。虫だけはダメとか」
昭夫 「だいたいなんでも大丈夫です!」
恵 「そう、よかった。多分、男性だから力仕事が多くなると思うけど」
昭夫 「任せてください」
みはる、入り。フリルの可愛い洋服を着ている。
みはる「お疲れ様でーーす!」
三人 「お疲れー!」
百合香「ちょっと遅かったんじゃないの?」
みはる「すみません、レジ混んでて。差し入れです!」
百合香「わあ、ルマンドだ」
みはる「この方は…」
恵 「みはるちゃん。今日から働くことになった、南昭夫さん」
みはる「ええ!そうなんですか!初めまして。「オフィスチェルシー」で主に電話番やってます!妹尾みはるです」
昭夫 「あ…。今日から働くことになりました。南昭夫です」
みはる「わあー男の人だあ」
昭夫 「どうも」
みはる「仲良くして下さいね!」
みはる、昭夫の手をきゅっと握る。
久美子「私が男ならここで恋してる」
恵 「やめて」
久美子「可愛いでしょ!うちの若手(昭夫に)」
昭夫 「はあ」
久美子「みはるん恋人代行だけでもやったらいいのにい」
恵 「みはるちゃんはいいの」
昭夫 「恋人代行なんて仕事もあるんですか」
恵 「ありますよ。恋人、友人、家族代行」
百合香「何でもやるわね」
昭夫 「みなさんやるんですか」
恵 「そうだね。クライアントの要望によって、最初はこっちで人選させてもらうけど」
昭夫 「恵さんも?」
恵 「もちろん」
久美子「あ、明々後日代行入りました」
恵 「え?今?」
久美子「いや。さっき入ったんだけど。言うの忘れてた」
恵、パソコンをチェック
みはる「桃園さんですか?」
恵 「そうだね」
百合香「じゃあ友人代行だ」
みはる「桃園さんて言う常連さんがいるんだけど、この人はトランスジェンダーっていうのかな。普段は男性の格好で生活してるんだけど、ここに依頼に来る時は女の子として女の子と遊びたいっていう方なんです」
昭夫 「へえ。色んな人がいるんですね」
恵 「色んな人に会えるから、楽しいけどね」
みはる「私にはできないですよ。皆さんすごいと思いますもん」
百合香「そんな事ないって」
みはる「やっぱり人として女としての魅力がないとできませんしね」
百合香「みはるちゃんだって十分魅力的じゃない」
久美子「そうだよ。若干一名みはるにメロメロな奴もいんじゃん」
恵 「あ、朝来たよ。マイメロ持って」
みはる「午後入りでよかったぁ」
階下からチャイムの音が聞こえる
みはる「来た?!」
恵 「でもチャイム鳴らすのは…」
みはる「あ」
百合香「見てくるわね」
昭夫 「ここチャイムあったんですね」
恵 「誰も使わないけどね」
久美子「一名を除いては」
百合香奥へ。奥から声
百合香「(声)あ、どうも奥様」
佳恵 「すみません。主人おります?」
百合香「三階にいますよ」
佳恵 「ありがとうございます。皆さんは?」
百合香「ちょうど全員います」
佳恵、入り
佳恵 「お疲れ様です。皆様ご苦労様です」
全員 「お疲れ様です」
佳恵 「母が遊びに来たので八つ橋を」
佳恵、八つ橋を渡す。
恵 「わあ、わざわざありがとうございます」
久美子「ご馳走様です」
百合香「聖良ちゃんは?」
佳恵 「母とプールに」
百合香「いいですね」
佳恵 「…こちら…」
恵 「あ、今日からチェルシーで働いてくれることになりました、南さんです」
昭夫 「初めまして。南昭夫です」
佳恵 「…へえ。男の方入りはったんや」
恵 「ええ。女性スタッフメインを売りにしていたんですが、やっぱり男手があると受けられる仕事の範囲も増えますし。昭夫くん、オーナーの奥様。佳恵さん」
昭夫 「よろしくお願いします」
佳恵 「…頑張ってくださいね。じゃあ」
佳恵、一瞬みはるの顔を見るが
佳恵 「…」
みはる「…」
佳恵、笑顔で去る。
昭夫 「奥さん、なんですか」
百合香「オーナーと一回り離れてるのよ」
久美子「だが尻に敷かれてるらしい」
みはる「奥さん気強いですからね」
恵 「千堂さんは自由奔放な人だから、手綱握るにはそれくらいじゃないとダメなんでしょう」
みはる「でも…束縛激しいみたいでオーナーかわいそう。男の人ってそういうの嫌じゃない?(昭夫に)」
昭夫 「僕?僕は…」
百合香「昭夫くんて彼女いるの?」
久美子「このイモ臭さ、いるわけないじゃないですかププ」
百合香「あんたも大概よ」
久美子「む?聞き捨てならんですな。私こう見えて男性には困ってないのですよ」
百合香「どうせオタクっぽい男ばっかでしょ」
久美子「えー百合香さん知らないんですか?オタクって頭いいし収入もあるんですよ」
恵 「はいはいもういいから。みんな仕事して仕事。月次報告書、三日までだからね。提出遅れないでよ」
それぞれ「はーい」と返事をし、パソコンに入力やら作業を始めようとする。
百合香「昭夫くんこっち来て」
昭夫 「はい…(久美子のデスクを見て)これなんですか」
久美子「城」
久美子、トイレットペーパーの芯で城を工作中。
百合香「夏休みの自由研究」
昭夫 「そんなこともやるんですね」
百合香、パソコンを開いて昭夫に説明をする。
百合香「月次報告書っていうのがあって、その月にやった仕事をまとめてもらうの。パソコンの中にフォーマットがあるから…。ここ、エクセル開いて。ここに入力してもらうんだけど、まだ昭夫くんはパソコンもデスクもないから。とりあえず私の使って」
昭夫 「はい」
ビンタの音がする
佳恵 「(声)ええ加減にせえよ」
沈黙の訪れる事務所。佳恵、出てくる。
佳恵 「…あーん、ビックリした?堪忍な。なんでもないから!」
恵 「大丈夫ですか…?」
佳恵 「大丈夫大丈夫。うち帰るから。主人のこと、よろしくお願いしますね」
佳恵、笑顔で出て行く。
騒然とする事務所。
千堂入り。左頬を抑えている。
千堂 「お疲れ様〜…」
みはる「オーナー」
千堂 「氷…氷あったっけ」
恵 「奥に」
恵、千堂、給湯室のある奥へ
百合香「今日はビンタか」
久美子「最近は打撃系多いすな」
昭夫 「どうしたんですか」
千堂、氷で頬を冷やす
恵 「浮気、バレたんですか?」
千堂 「う、浮気とか何言ってるの」
恵 「まあ私には関係ないですけど」
みはる「へえ、オーナー浮気してるんですか」
千堂 「ええ?」
みはる「やりますね」
千堂 「いやいやいやいや」
みはる「恵さんのことも誘ってましたもんね」
千堂 「焼肉行こうって言っただけでしょ!」
久美子「なんで私は焼き鳥しか誘ってもらえないんですか」
百合香「なんで私だけ何も誘われないんですか」
千堂 「ちょ…も〜。怖いなあ女性陣は」
みはる「その女とは何を食べに行くんですか」
久美子「寿司ですか?」
百合香「フレンチ?」
千堂 「もう、もういいじゃない。僕、立て込んでるんだよ。じゃあね」
千堂、居心地悪そうに出て行く。
百合香「上はね、オーナーがやってる別の事業のオフィスになってるの」
久美子「このへんの土地転がしやってんだってさ」
昭夫 「遣り手なんですね」
百合香「モテるわよね。ああいうタイプって」
久美子「私は全く興味ないけどな」
みはる「私もおじさんは無理かな」
百合香「恵さんは?」
恵 「…みなさん。シ・ゴ・ト!」
みはる「クールだなあ」
恵 「みはるちゃん」
みはる「はい?」
みはると恵にスポット。
恵 「こないだの話だけど」
みはる「…私じゃないです」
恵 「私は、みはるちゃんのこと思って言ってるの」
みはる「恵さんがそう言ってくれるのすっごい嬉しいです。でも、違います」
恵 「…」
みはる「もしかして、そういう依頼受けたんですか?」
恵 「…違うけど」
みはる「信じて下さいよ、恵さん。またパンケーキ食べに行きましょ!」
恵以外ハケ。
恵に照明。一枚の写真を引き出しから出す恵。
しばらく写真を眺めている。
ビールグラスを持って久美子、百合香、みはる入り。
入れ替わりで恵ハケ。
◯「立ち飲み居酒屋1」8月31日 20:00
久美子「みはるん恵さんと仲良いよねえ」
みはる「別に。何度かご飯連れてってもらっただけですよ」
百合香「恵さん、みはるちゃんのことが可愛いのね」
久美子「そんなに会ってて、彼氏にヤキモチ焼かれたりしないの?」
百合香「彼氏?」
久美子「年下の可愛いのがいるんですって」
みはる「彼とは最近そんなに会ってないんで」
百合香「みはるちゃんの年下ってことは」
みはる「平成十年生まれ」
久美子「赤ん坊じゃねえか」
みはる「二十歳ですよ」
久美子「私が中一の時に生まれたってこと?」
百合香「恐ろしい話だわ」
久美子「あの時の赤ん坊と酒を酌みかわせる時代になってしまったんだな」
みはる「年齢は関係ないです」
百合香「愛し合っていればね」
みはる「そうそう、上も下もないです」
久美子「百合香さんはあれから?」
百合香「今また新しい恋が始まりそう」
久美子「おおお。切り替えの早さ風の如し」
みはる「昭夫くんじゃないですよね」
百合香「え?」
みはる「え?」
久美子「え?」
百合香「まあ、こないだのミミちゃん救出の時は素敵だなあって思ったし。それから色んな力仕事引き受けてくれて…汗だくで帰ってくるのとか見ると『男』は感じるけどね」
みはる「こないだガレージ整理した佐川さんちの奥さんも、昭夫くんのこと可愛いって言ってましたよ」
久美子「扇風機もらって帰って来てたもんね。でも百合香さん、昭夫は絶対恵さんのこと好きですよ」
百合香「え?そうなの?」
久美子「そうでしょ」
みはる「やっぱり」
久美子「昭夫もまた難しい人を好きになったよなあ」
百合香「そっか…。昭夫くん」
久美子「百合香さん?ちょっとやめてくださいよ?」
百合香「大丈夫よ。大人だもの」
久美子「本当かなあ…」
みはる「恵さんて」
久美子「ん?」
みはる「レズ、じゃないですよね?」
百合香「え?」
久美子「え?」
みはる「だって…」
久美子「え?」
百合香「そっちじゃないわよ」
みはる「でも…」
百合香「わかるでしょ。妹だと思ってんのよ」
みはる「…そっか」
神山入り
神山 「あれあれ。こんなとこで女の子ばっか集まっちゃって、どうしたの〜」
久美子「出たなチンピラ」
神山 「出たってなんだよ?」
久美子「こっちは楽しく女子会してるんですう」
神山 「何が女子だよババアに片足突っ込んでるくせに」
久美子「あららそんな口の聞き方していいのかしらあ」
百合香「神山さん、今のはお説教よ」
神山 「うるせえなあ。みはる、あっちで飲もうぜ」
久美子「行くわけねえだろお前となんか」
みはる「あ、近くでオーナー飲んでるみたいですよ(スマホ)」
百合香「そうなの?合流しましょ、合流」
みはる「養老にいるって」
久美子「しょうがねえなお前も来いよ」
神山 「言われなくても行くし」
久美子「言われなかったら来んなし」
神山 「なんだし」
みはる「奢ってもらいましょ!」
久美子「何食べようかな」
百合香「豚ごぼう玉子とじ!」
キャイキャイしながら四人ハケ。
◯「桃園という男」9月1日 9:15
朝。雀の声。入り口奥から声。
桃園 「(声)ごめんなさい。どこも場所が取れなくて」
恵 「(声)気にしないで下さい。まだ誰も来てないから大丈夫ですよ。こちらこそこんな朝早くからごめんなさい」
恵、桃園入ってくる。
恵はいちごオレ、桃園は、ショップの紙袋を持っている。
桃園 「やっぱり夏休み時期のホテルはどこも予約いっぱいでダメですね。前もって取れてたらよかったんですけど」
恵 「桃園さんお忙しかったんですから仕方ないですよ。どうぞ(ソファに座らせて)暑くないですか?温度下げましょうか」
桃園 「いえお気になさらず」
恵 「あ、こないだスタッフが。お客さんのガレージ整理した時に扇風機もらってきたんです。出しますね。ちょっとボロいけど…」
恵、扇風機を出す。
桃園 「大丈夫ですよ」
恵 「暑いですから」
桃園 「ありがとう。あ、遠慮しないで飲んで下さいねそれ」
恵 「ありがとうございます。もうけっこう飲んでます、これ大好きなんで(いちごオレ)。あ、桃園さんも何か飲みます?」
桃園 「いえいえ、私はお構いなく。それより早く…」
恵 「そうですね。誰か来る前に。…では、始めましょうか」
桃園 「はい。よろしくお願いします」
恵 「じゃあ広げますね」
恵、紙袋の中身を出していく。
レディースの服が出て来る。
恵 「可愛い」
桃園 「だよね!!…あ、すみません」
恵 「なんで謝るの。いいんだよ。もう時間、始まってるから」
桃園 「ありがとう…!」
恵 「綺麗なスカート」
桃園 「でもワンピースも捨てがたくて」
恵 「うん。どっちも見たい」
桃園 「うん…!」
恵 「じゃあ…ワンピースから着てみよっか?こっちでもいい?」
桃園 「うん、どこでも大丈夫。」
桃園、恵からワンピースを受け取る。
促され奥で着替えを始める。
恵 「手伝わなくて平気?下着は?」
桃園 「大丈夫」
恵 「そっか」
桃園 「あああやっぱ可愛い!」
恵 「早く見た〜い!」
桃園 「待って。もうちょっと…」
恵 「ゆっくりで大丈夫だよ」
桃園 「ありがと」
恵 「今日の予定は…代官山でランチ。買い物と、映画も行きたいね」
桃園 「ランチは行きたいとこあるんだ。あと、スイーツも食べたい!」
恵 「オッケー。スイーツは?なんか食べたいのある?」
桃園 「うーん。冷たくて甘いもの…何かあるかな?」
恵 「かき氷ともいいけど…。そしたら…今年ニューオープンしたスリーツインズって言うアイスクリームのお店はどうかな?サンフランシスコ発祥のオーガニックアイスクリーム。全米ナンバーワンの絶品だって」
桃園 「気になる!」
恵 「駅からすぐだから、先にそこ行って食べ歩きしてもいいかもね。食べながら移動して、フェマインとナンバー行って洋服見て…。それでランチ。あと映画か…ガーデンシネマは何やってるかな」
桃園 「恵ちゃん見たいのある?」
恵 「私今見たいのはインサイドってホラー」
桃園 「それはやだな…」
恵 「あ、そうだね苦手だよね、ごめん。可愛いの!可愛いの見よう」
恵、映画の情報を調べる。
恵 「そろそろ着替え終わったかな」
桃園、ウィッグをつけてワンピースを着、出て来る。
桃園 「どうかな」
恵 「いいね」
桃園 「本当?」
恵 「ワンピースで正解だったかも」
桃園、嬉しそう。
恵 「…ちょっとだけお化粧しよっか。座って」
恵、桃園にアイシャドウとリップを軽くつけてあげる。
恵 「目、つぶって」
昭夫、出勤してくるが、二人に気づいて入れない。
恵 「肌、綺麗だね」
桃園 「こないだ一緒に買ったオルビス、すごくいいの」
恵 「本当?私も使ってみようかな。…ブラシブラシ」
恵、ブラシを取り、桃園のウィッグをとかす。
恵 「…はい。できた」
桃園 「…私、女の子に見える?」
恵 「うん。可愛い」
桃園 「ありがとう。…恵ちゃんお姉ちゃんみたい」
恵 「…そう?」
桃園 「うん」
恵 「じゃあ、桃ちゃん。行こうか」
昭夫、シャワー室に隠れる。出ていく二人。
恵 「代官山久しぶりだね」
桃園 「寺カフェに行ってみたいの。それか、『一芯』ってご飯やさん」
恵 「和食かあ。いいね」
恵と桃園、完全ハケ。昭夫、入り。
二人が出ていくのを隠れて見ていた様子。
昭夫 「…」
昭夫、恵のパソコンを覗き込む
昭夫 「『桃園吉大。友人代行』…」
昭夫、恵の机の上に忘れられたいちごオレに気づく。
昭夫 「…」
周りを見渡し、そっといちごオレを手に取り
ストローに口をつけようとする。
佐川 「(声)アサッテクルでーす!」
昭夫、動揺。佐川、小包を持って入り
佐川 「おはようございまーす!ボールペンと、コピー用紙ですね。サインお願いします!」
昭夫 「あ、はい…」
佐川 「ん?」
昭夫 「?」
佐川 「…南昭夫!」
昭夫 「…佐川桐子?」
佐川 「え、なんでなんで?あんたコンビニは?」
昭夫 「ちょ、なんでキリちゃんがここに」
佐川 「配送の仕事してんだって」
昭夫 「え?ケーキ屋さんは」
佐川 「それ高校の頃のバイト」
昭夫 「そうだっけ」
佐川 「さすが。興味ない人の事は何も覚えてない」
昭夫 「そんな事」
昭夫 「アサッテクル?て何」
佐川 「注文もらったその明後日に届くからアサッテクル。格安配送会社です。で、あんたは?何やってんの?ここ便利屋だけど」
昭夫 「知ってるよ。最近働き始めたんだよ」
佐川 「ねえ…もしかして、こないだうちのガレージ片付けに来てくれたのってあんた?」
昭夫 「何だよ知らないよ」
佐川 「チェルシーに男前が入ったってうちの母親が喜んでたんだけど!」
昭夫 「ええ…?」
佐川 「ガレージから出てきた扇風機もらって帰らなかった?って、これうちのー!」
佐川、扇風機に気づく。
昭夫 「堀切二丁目の佐川さんって、キリちゃん家だったの!」
佐川 「まじかーい!チェルシーに入った男前ってあんたのことかーい。うわああ…」
佐川、スマホで昭夫と2ショットの写真を撮る
昭夫 「はっ?何何」
佐川 「光枝に送る」
昭夫 「光枝?」
佐川 「母です」
昭夫 「なんでなんで」
佐川 「光枝の喜ぶ顔が見たいから」
昭夫 「え?え?」
佐川 「あんたコンビニ、クビになったんでしょ」
昭夫 「なんでそれは知ってんの」
佐川 「この町の噂話は大抵知ってるさ。しかし灯台下暗し、クビになったあんたがまさか私んちに仕事で来てたなんてな」
昭夫 「まじか…」
佐川 「で、なんでコンビニはクビになったの?」
昭夫 「いいじゃんなんでも。キリちゃん仕事中でしょ?もう行った方がいいんじゃないの」
佐川 「今は光枝にあんたの情報を送る方が大事」
昭夫 「なんでだよ」
佐川 「教えてくれよ。うちの光枝はあんたが気に入ったんだよ、長生きさせてくれよ」
昭夫 「俺の情報と光枝さんの寿命関係ないでしょ」
佐川 「クビになったのは?盗撮?それか個人情報でも盗んだ?」
昭夫 「おお、な、なんでだよ」
佐川 「え?嘘でしょ嘘でしょ。あんたが吃る時は大体ビンゴ。まじか、まじなのか。あんた根暗だもんなあ」
昭夫 「やめろよ」
佐川 「中学の頃も私以外の女子と話してるとこ見た事なかったし。男子からもいじめられてたもんなあ」
昭夫 「違う、あれはいじられてただけだよ」
佐川 「そのくせむっつりスケベでいつも女教師の脚ばっか見てたもんなあ」
昭夫 「もう、やめて、やめてってば」
佐川 「ていうかすごい久しぶりだね。私ファミマ派だからさ、あんたのコンビニ行かなかったもんで」
昭夫 「もう、もういいじゃんキリちゃん。またゆっくり話そうよ、ね」
佐川 「本当変わらないね。あれ?でもちょっと薄くなった?(頭を触ろうとする)」
昭夫 「どこがだよフサフサしてるよ」
佐川 「もしかしてあんた、彼女できた?」
昭夫 「できてないよ。なんなのいきなり」
佐川 「じゃあ好きな人は?」
昭夫 「も、も、もういいじゃん」
佐川 「あ、できたんだ。やっぱり」
昭夫 「キリちゃんには関係ないでしょ」
佐川 「まあそこは幼馴染のよしみだ」
昭夫 「幼馴染って…一緒だったのは中学だけでしょ」
佐川 「告白しろよ。その子に」
昭夫 「は?」
佐川 「カッコよくなったって言ってやってんだよ」
昭夫 「え?」
佐川 「南昭夫のことだ。どうせコミュニティの中で一番可愛い大人の女性…。チェルシーで言うとこの恵さんあたりが好きなんだろ」
昭夫 「そそそんなわけないだろ」
佐川 「ビンゴ?まじ?お前ほんと…」
昭夫 「頼むからもうやめてよ」
佐川 「あの人はモテる」
昭夫 「でしょうよ」
佐川 「でも意外と告白はされない。裏で『可愛い』って言われるだけのタイプだ」
昭夫 「そうなの…?」
佐川 「でもうかうかしてると取られるぞ。この町のじいさんもばあさんも子供も大人も、男も女もみんな恵さんのことが好きだ」
昭夫 「…オカマは」
佐川 「揚げ足をとるんじゃないよ。とにかくあの人はこの町のヒーローなんだよ。人気者だ」
昭夫 「…」
佐川 「いいか、告白しろ。今の南昭夫ならまあまあいける」
昭夫 「…そんなこと言ったって」
佐川 「光枝が言ってたよ。『新しい男性スタッフさん、仕事してる姿がかっこよかったわ』って」
昭夫 「かっこ…!?」
佐川 「恵さんと付き合いたいんだろ?」
昭夫 「や、まあ、そりゃ…」
佐川 「デートは」
昭夫 「そんな、まだ誘えるような感じじゃないよ」
佐川 「南昭夫は…駆け引きとかまず無理だから直球勝負がいいと思う」
昭夫 「直球?」
佐川 「好きです。お友達からお願いします。今度ご飯行きましょう。これだけ」
昭夫 「お、おお…」
佐川 「簡単だろ」
昭夫 「や、でもタイミングとかさ」
佐川 「そんなものオスの本能で見つけろや」
昭夫 「お、オスの本能…?」
佐川 「ほれ、言ってみ」
昭夫 「は?」
佐川 「練習。付き合ってやるって言ってんだよ」
昭夫 「でもキリちゃん仕事…」
佐川 「いいんだよ、ほら、早く!」
昭夫 「す…好きです。お友達からお願いします。今度ご飯行きましょう」
佐川 「情感てものが欠落してるのかお前は」
昭夫 「キリちゃん相手に情感なんか込められないよ!」
佐川 「文句言ってんじゃねえ!ほら、もう一回」
百合香入り。
昭夫 「好きです!お友達からお願いします!今度ご飯行きましょう!」
佐川 「いいよ!(グッドの方)」
百合香「…」
佐川 「あ」
百合香「あ」
昭夫 「百合香さん!」
百合香「ごめんなさい私…」
昭夫 「違う違う違うんですよ」
佐川 「これはただの練習です」
百合香「練習…?」
佐川 「百合香さん聞いて下さいよ。こいつ…」
昭夫 「キリちゃんお願いだから。お願いだから余計な事は言わないで」
百合香「二人とも知り合いなの?」
佐川 「中学の同級生なんですよ」
百合香「そうなの?」
佐川 「幼馴染みたいなもんです」
百合香「へーすごい!」
昭夫 「そんな仲よかったわけじゃないんですけどね」
佐川 「ねえなんでそうやってちょっと距離取ろうとするわけ?」
昭夫 「いやそういうつもりじゃ」
佐川 「あんまり私を怒らせない方がいいぞ」
昭夫 「怒った?怒るの?」
佐川 「あんたの過去、現在の秘密まで私が握ってるんだぞ(恵のデスクに視線)」
昭夫 「何言ってるんだよ…」
百合香「仲いいんだね」
昭夫 「いや本当違いますから」
百合香「まさか元カノとか?」
昭夫 「絶対違います全く違います」
佐川 「やめて下さいこいつ童貞ですから」
昭夫 「なんでキリちゃんが知ってるんだよ」
佐川 「え?まだそうだったの?」
昭夫 「そうじゃなくて」
百合香「そうなの?」
昭夫 「ち、違いますよ」
佐川 「え?違うの?」
昭夫 「どうだっていいだろ今そんな事は」
佐川 「まあな。でも八割方そうに違いないと光枝に送信(携帯)」
昭夫 「おかしいでしょそれ光枝さんに報告するのは」
佐川 「家族だからなんでも話すさ」
昭夫 「ねえキリちゃん本当にやめて、それ色んな人にもバレちゃうやつでしょ」
佐川 「もう送ってしまった」
昭夫 「あああ」
着信音。
佐川 「あ、光枝さんからだ。昭夫、検討を祈るぞ。自信もて。(携帯)…もしもーし、今配送中だってば。うん、南昭夫だったよ」
佐川ハケ。
昭夫 「…嵐のような女だ」
百合香「仲良しなんじゃないの?」
昭夫 「いやいやちょっと面倒臭いというか」
百合香「何の練習してたの?」
昭夫 「あ、な、何なんでしょうね…ハハ」
百合香「昭夫くんに告白されるなんて、きっとその人はラッキーガールね」
昭夫 「え?」
百合香「昭夫くん素敵だもん」
昭夫 「えええ?」
百合香「恋の練習なら……いつでも相手になっていいわよ」
昭夫 「あ…」
百合香「ふふっ」
昭夫 「…大丈夫です」
百合香「…」
照明変化。転換。二人ハケる。
◯「告白」9月1日 20:00
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