死を飼って、それでも美しいもの
みんな、初めて「死にたい」と思った日のことを覚えてる?
私は覚えてない。
父と母の怒鳴り合いが聞こえた時か、それが止められると信じて過呼吸を起こして泣いた時か(私のことなど誰も見ていなかった)、ランドセルを捨てられた時か。
気が付いた時には夜が怖かった。
「普通がよかった」と何度も思った。
雨の日に傘をささずに帰るのが好きだった。
いつも不安で、何かを達成するための準備に追われていた。(その不安は一つのことが達成されるまで続いた)
外圧や束縛や自分自身の中から生まれる焦りに打ち勝てたことはなかった。
人を好きになっても、同じだけ気持ちが返ってくることはなかった。
私の愛はいつも歪か、条件付きだった。
私のことが好きでたまらないという人がいつも居た、でもその形はいつかおかしくなった。
人を信じたり許したりする強さがなかった。
ずっと認められたくて、愛されたかった。
愛する人の、一番で、唯一でありたかった。
「繊細」だと言われることが増えた。
人の気持ちに人より多く気が付いた、気がつくだけだった。
社会に怒ることが増えた。
勉強は苦手だったけど、人より頭が良かった。
新しい世界を知るたびに心が躍ったが、また違うときは絶望してばかりだった。
虐げられる人を見ることが何より辛かった。
自分ができることをしたいと思った、知るようになった。
でも、私はいつまで経っても当事者にはなれなかった。
怒る気持ちは言葉にしかできなかった。
心の中に、死を飼うようになった。
ある時はその死に喰い殺される気がした。
誰にも言えなかった。
人に伝えられるだけの辛さを見せることはできなかった。
周りに人はいて、その人が私に与えうる範囲の愛は受け取っていた。
でも、私は間違えていた。
素直に人に甘えることができる人間が羨ましかった。
夜一人で飛び出して、車に轢かれそうになっても、安定剤が効かないくらい目を腫らしても、
私は人に「助けて」と言ったことがなかった。
拒絶されることも、否定されることも怖い。
私は自ら全てを終わらせることで、いつも自分を守ろうとした。
理想の自分がいつも、私の影を踏んでいた。
木々と光の美しさに気が付いても、私は一人だった。
だから自分とあなたのために手紙を書いた。
ラブレターだと思った。
それに答えてくれる人がいることに少し安心した。
誰か、あの時のわたしと、今のわたしを抱きしめて欲しいと思った。
だから人を巻き込んで、初めて自分が救われたいと思った。
私は、あなたにできうる限りの言葉を尽くし、私の世界を表現することで、あなたを救う。
だから、待ってて。
あなたの地獄も、私の地獄も、まとめて全部愛すからね。
死に殺されない世界を私が作るから。
大丈夫、いつか全部、大丈夫になるよ。
私はあなたのためにここにいるし、あなたのことを想って作ってる。
この永遠に感じる時間に閉じ込められることはないし、また人を見て愛おしいと思うことができるよ。風を通して巡る日々を瞳に捉えることも、正しいと思うことで誰かを救うことも。
だから、ずっとずっと愛しているよ。
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