「Suicaをタッチしてください」に感じる違和感。〜前編〜
駅で当たり前のように聞くセリフ。
「Suicaをタッチしてください」
この一文に違和感を感じたことはありませんか?
私はこの一文に高校生の頃から違和感を感じ続けていたのですが、最近やっと自分なりに腹落ちしたのでその話をします。ただ、私は日本語の専門家ではないので、非常に感覚的なお話ですw
まず、私がこの文のどこに違和感を感じるかですが、「Suicaを」の「を」の部分です。原文のままだと意味的には「Suicaに触る」ことをイメージしませんか?もしくはイメージする可能性がありませんか?
もちろんシーン的には改札機にピッとするのが正解なのは言うまでもないので、意味が伝わらないのではなく、違和感があるかどうかのレベルの話です。
できるだけ原文を変えずに意図する意味(Suicaにピッ)を表現する場合、私が一番しっくり来るのは下記です。
「Suicaでタッチしてください」
これならタッチする対象物は不明瞭ながらも、指し示す行動は1つに限定されるように思います。
この話を自分の周りに聞いてみたところ、意見は割れましたが、いくつか聞いた意見を抜粋すると
①改札機が喋っていると考えればそんなに違和感がない
②聞き慣れているので何の違和感もない
③確かに「で」の方がしっくり来る
④「で」だとピッとした時点で行動が終わってしまう
⑤「タッチする」を「触れて」と捉えるとしっくり来る
こんな感じでした。
この中のいくつかに私の解釈(感想)を付けます。
①改札機が喋っていると考えればそんなに違和感がない
これは可愛いですよね。改札機を擬人化する考えはなかったので新鮮でした。ただ、私は少し無理があるような気がしており、その原因は改札機の「人っぽくなさ」だと思います。もう少し改札機が人っぽければ(≒人格を感じさせるものであれば)自然な気がします。
そしてこのパターンは「私に」という目的語を省略しているのだと思いますが、省略するならなおさら「Suicaで」の方がしっくり来そうです。
④「で」だとピッとした時点で行動が終わってしまう
これはその感覚が私に無かったのですが、言われてみれば何となく分かるような気がしました。「を」だとピッとした先に改札を通り抜ける行動を予感させる要素があるのですが、「で」だとピッとした時点で行動が終わってしまう、という意見です。助詞にはそれぞれニュアンス的な意味合いがあるようなので、これはこれでそういうものなのかもしれません。結構、感覚的な話に感じるので、そこまで捉える人は少ないような気はします。
⑤「タッチする」を「触れて」と捉えるとしっくり来る
最初、この意見が私の中では一番納得感がありました。
私は「タッチする」を「触る」と頭の中で変換して(同化して)考えていたので、「Suicaを触る」という文だと意味的に変な感じがしたのです。
「触れる」と「触る」では言葉から感じる能動性に違いがあるので、「Suicaをピッとする行動」に関しては「触れる」の方がしっくり来るのだと思います。
ここで若干脇道にそれますが、上で出てきた「言葉の能動性」に関して少し説明します。
まず、自分が改札の前にいて、Suicaを手に持っているところを想像してください。その上で下記の2つの文を見た際、どちらも「改札機にピッとする」行動を意味しますが、後者の方は少し違和感ありませんか?
・Suicaで触れる
・Suicaで触る
命令文にするともう少し分かりやすいかもしれません。
・Suicaで触れて!
・Suicaで触って!
どうでしょうか?
後者だと「え?くっつけるだけでいいの?」という感じになりませんか?
これはおそらく「触る」という動詞から感じ取れる能動性と、実際の行動(Suicaでピッ)からイメージされる能動性が釣り合っていないからです。「触る」だと、結構説明が難しいのですが、Suicaを使って改札機に何かする(より少し軽い)くらいの行動をイメージさせる気がします。具体的にいうと「突っつく」くらいの感じです。
伝わりますか?w
繰り返しますが、あくまで私個人の感覚の話ですw
さて本題に戻ります。
「タッチする」を「触れる」と読み替えれば良い、という意見はとてもしっくり来たのですが、それで冒頭にあげた違和感は解消されるのかと言うと、実はそんなことはありません。
この言い換えは文の意味を捉える上では良いのですが、実は少し論点がずれており、文法的な違和感の払拭には至りません。ただ、とても解釈の助けになる意見でした。
「Suicaをタッチしてください」の文法の話をする際、「タッチする」という言葉を「触る」や「触れる」と置き換えること自体が間違っていたのだと思います。この場合、「タッチする」は「接触する」と置き換えるのが正解だと思います。
これが何故かを説明したいところですが、、
長くなってきたので続きは分けて投稿しようと思います。(こんなに長くなると思わなかったw)
というわけで、後編に続きます。