2023/05_vol.2 絶望と疲弊
しばらく放心状態となったあと、正気を取り戻し妻の携帯へ電話した。
何度かけてもコールするだけ。
LINEにもメッセージをしたが、既読にはならなかった。
「え、どうしよう」
行き先は見当がついている。
実家だ。
ときどき連絡をとる程度だった義母。
妻の私への批判や愚痴は真っ先に伝わる相手だ。
正直、気は重いが義母に電話をかけた。
話した内容は詳しく覚えていないが、「妻から実家に向かっていると連絡があった。しばらくお互い冷静になる期間必要じゃないか。」のようなことを話したと思う。
きっと他の家族は明日から子どもたちと楽しいGWを迎えるのだろう。そんなことを考えながら、この先子どもたちとは会えなくなるのだろうかと絶望した。
少し数ヶ月前のことを振り返る。
私は2022年7月、転職活動をしていた。
学習塾に勤めている方ならわかると思うが、勤務時間が特殊だ。
お昼頃に始業し夜遅くに終業する。休日は平日が主だ。
この先子どもたちの成長を考えると、この生活リズムを変えたかったのだ。
行事ごとは土曜が多い。また夜遅くの帰宅は子どもたちが寝静まったあとだ。当然、妻へのフォローもできない。
だから意を決して転職活動を始めた。
妻には自分の意向を伝えたが、「勝手にしたら」と言ったきり関わることはなかった。
ここで会社と妻との関係を補足しておきたいと思う。
私と妻は同じ会社に勤めていた。
社内恋愛での結婚だった。
妻は子どもが生まれてから時短(9時から15時30分まで)でテレワークをしている。
転職についてはもちろん知っていたが、退職日が近づくにつれ反対とも取れる発言が増えていった。
「あなたは人を大切にできない人」
「会社の人が大切にしてくれたことを仇で返す」
「相手のことを考えていない、自分勝手」
そんなことを言っていたと思う。
確かに退職する会社に妻が残る、という点においては申し訳ないという気持ちはあった。衝撃だったのは、この転職活動について義父からも考え直してくれないか、という引き止めにあったこと。
正直そこまでするか?ってなくらいに困惑した。
会社との関係、家族との関係、自分の人生、いろいろ考えを巡らせたけど、やっぱり自分の人生でもあり、家族のための選択だと信じた。
2022年10月、転職先が決まり引き継ぎもあるので新しい会社には無理を言って来年3月まで入社を待ってもらうことにした。
その間、勤めている会社からは強い引き留めにあった。
12年間お世話になった会社。
私を育ててくれた会社。
とても感謝している。
その一方で、不満もあったのも事実で。
だけど、最後は「立つ鳥跡を濁さず」といった感じで終わりたい。
でも結局、跡を濁すこととなった。
「このままでは円満退社で終われないよ」
社長に直接言われた。
同じ業界での転職、裏で手を回されていたことを後で知った。
それから紆余曲折があって、私は受け入れてくれた会社を泣く泣く蹴って、今の会社が新たにフランチャイズ展開をする関係企業へ籍を移すこととなり、すべてが丸く収まった。。。かのように思えた。
2022年10月〜2023年3月のあいだ、私に心の休息はなかった。
家にいても外にいても、身体も心も疲弊していた。
子どもたちのことだけが心の支えだった。