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おかしな綿あめ
集合まであと10分!
私は小4の娘の願いを叶えるべく、二人で綿あめのお店の前に並んでいる。
前のお客さんの分の綿あめが、どんどんまぁるく膨らんで、ピンクや水色の砂糖で色づいていく。
『おっきいね!でも間に合うかな、食べられるかな??』
集合時間を目前に焦る私達。娘のチアの出演で、またイベントに来ていた。リハーサルからの確認あれこれが長引いて、自由時間がほとんどなくなってしまった娘が、あれだけは食べたい!という念願の綿あめ。
しかし、綿あめは特大サイズで、大人の頭2つ分くらいはゆうにある。
やっと順番が来た時には残り5分。制作にも5分かかるという。事情を話し、3分だけにしてもらうことに。
お店の方ががんばって急いで作ってくれ、それでも綿あめは、普通のものよりも大きく完成した。
笑顔で喜ぶ娘。そして、私達は列を離れると急いで綿あめを頬張った。出演が終わるまで取っておきたいところだが、なんと会場は、飲食できないのだ!
せっせせっせとちぎっては口に入れる私達。直前にスマホがフリーズして、会場内にいる夫と息子を呼べないのも辛い。
あっという間に時間が来ると、娘は諦めて『あとは任せた!』といい捨ててその場を走り去った。
保護者も本当は集合なのに…。半分以上残るカラフルな綿あめとともに取り残される私、アラフォー。
綿あめは、ぎゅっとしたらほんの小さな塊になるだろうことは分かっていたが、せっかくふわふわなのにそれも惜しい。
私は、また急いで綿あめをちぎっては口に運んだ。ふわふわだし、下手すると頬に張り付くし、口にも手にもまとわり付く。しかし、捨てるのはもったいない。
人生でこんなに綿あめを急いで食べたことがあろうか。しかもこのサイズを一人で。
でも、なりふりは構っていられない。『私は急いでいるのだ!』と時計なんてチラ見しながら慌てている感を全面に押し出しながら、一人、食べる食べる食べまくる。
そして、数分後にどうにか完食。
ふと、少し離れたところからぽかんとした顔で女性が私のことを見ていたけれど、気づかなかったふりをして、残った棒をポイッとゴミ箱へ捨てた。
味も何もあったものじゃない。
でも、娘は喜んでくれていた(と思う)。もっと食べさせてやりたかったけど…。
おかしな綿あめとの闘いは、おかしな余韻とともに、私の記憶に刻まれたのだった。