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サザエさんが伝えようとしていること

 もしかしたら毎年かもしれない。

 今夜の『サザエさん』は、母の日のことをテーマにしたお話があった。

 自分の母ではないが、みんなが妻フネのことを母として労う様子に少し慌てて、自分も何かしなくては、と行動を起こす波平。 

 お話の最後の方に『お母さん、いつもありがとう』と子どもたちが贈り物をするシーンも。

 思わず私は『プレッシャー与えてくるなぁ』とぼやいていた。

 数日前から今日が母の日であることは知っていた。何かした方がいいかな、と思いながら、あえてその気持ちに蓋をしていた。

 遠く離れた実母へも、徒歩5分のところで一人暮らしをする認知症の義母にも何もしなかった。

 その夜にこの『サザエさん』。

 息子なんて、今夜のサザエさんを見て『お母さん、今日は母の日だから、何かちょうだい』と意味不明な発言をするくらいで、我が子からも何も無かった。

 それでいいと私自身は思っている。

 それは何故か。

 私の母が、ねだる人だからだ。

 自身の誕生日や何かの節目、そういう時に家族から何もないと不満を言ってくる。

 去年、父が母の日を忘れていて、数日後に遅れて、大量のカーネーションを贈った時だった(母の日なので、夫である父は特に何もなくてもよいのたが)。

 『カーネーションなんて好きじゃないのに、何でこんなに買ったの?』と激昂したそうだ。あの時は、父が珍しくLINEで不満をこぼしてきたのだった。
 
 母が、子や孫に何か贈り物などをしたものなら、感想を強要し、その態度が気に入らないと機嫌を損ねたり、怒り出したりする。
 私は、いつも贈られた時に無視したことはないが、タイミングが悪かったり、子どもの写真がなかったりすると嫌味を言われた。

 とにかく、自分が起こした行動に対して常に相手からのアテンションやリアクションを必要とし、思い通りにならないと怒る。そういう人なのだ。
 
 昔からそういう様子をずっとみてきて、私は心底うんざりしているし、自分はそういう親にはなるまい、と強く誓っている。

 でも、私自身、贈り物をするのは大好きだ。年に数回は、いつも決まった友人にプレゼントをする。
 それには当然見返りは求めない。ただ私がやりたいから。何が喜ばれるか選ぶこと、それが楽しいから。
 返事があろうとなかろうと、いつになろうと、何も言わない(大抵返事はもらえるが)。

 贈り物、そして言葉も、本来そういうものではないだろうか。自分の手元から手放した瞬間、もうそれは相手のものになる。

 だからこそ、今夜のサザエさんは、少し引っ掛かってしまった。

 これは『母の日』ちゃんとしましたか?というプレッシャーか?

 見返りなんていらないし、ただ喜んでもらえたらいい、そう思っていたはずの自分が、普段のやり取りを理由に、今回あえて贈らないという選択肢をしたことに、どこか後ろめたさを感じてしまった(以前は気まぐれにしたこともある)。

 義母には、実母へのような思いはないが、何故か足が遠のいてしまっている。

 本当の私はどこにいる?
 もっと優しいのではなかったか?
 それはむしろ思い込み??

 なぜ贈り物をしようというその気持ちに蓋をしてしまったのか。
 素直になれないのか。
 その後のやり取りが億劫だったのか。

 ぐるぐると思考が行ったり来たりしている。

 国民的アニメのサザエさんに、わざわざこんなに面倒なことを考えてしまう自分の生真面目さやひねくれ具合には、ほとほと呆れてしまった。

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