息をしな


いつものようにスーパーへ行き、
いつものようにベッドで寝る。

なんとなく過ごすいつもと変わりないはずの日常に、
ふと思いが込み上げる。

いつものスーパーで
いつも一緒にいたはずのおばあの声が聞こえて

介護ベッドに横たわると、
いつものように私に支えを求めるおばあの手がまぶたに浮かぶ。

もう確実にこの世にみえないおばあは
私の心の中では
今でも生き続けている。

私の単調な日常の記憶上で
おばあは確実に息をしてる。

おばあがいなくなってから、
隣の部屋でおばあを覗き込むようにして寝ていたおじいは
毎日毎日携帯の待受のおばあの顔みつめる。

おばあのいない、おばあのベッドで
毎日毎日私は寝ている。

おばあの部屋には
おばあの気配が残り続ける。


夢のなかで、私の脳内で、おばあが現れて
ふっと飛び起きたら
おばあなんていなかった。

会いたいとどれだけ願っても
あの笑顔は現れなかった。

家の仏壇に、
おばあの骨壷が置かれるようになった。

存在を身近に感じたくて
骨壷ごと抱きしめても
温もりを感じることは出来なかった。

いつになっても会いたくて
ふとした瞬間に寂しさが溢れ落ちた。

今日はケーキを買った。
おばあの分も、いつもと変わりなく買った。
今日もあなたを感じたくて。

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