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月光

見逃してくれ
見ないでくれ
昼間も水素とヘリウムで出来た輝く星に監視されている気分なのに
どこにいっても光があって僕を離してくれない
もうやめてくれ

他人と比べて数十年
眠気にやられた眼で窓の外ばかり見ていた
他人の負の感情を目にするのはもううんざりで
どうせなら綺麗なものをなるべく綺麗なものがみたい
人生なんて地獄のように長いし
酒に酔った頭で死ぬことばっか考えてる
ビルの上に立ってみたり
酒を浴びるほど飲んだり
首に縄をかけてみたり
タバコを逆から吸ってみたり
ただの1度も死ねやしなかったのに

外に出る訳もないのに天気予報を見るけど憂いを感じるだけ
虚しい空気にはタバコの匂い
酒がきれてコンビニに駆け込む
最近はコンビニの店員としか会話をしない

これください
あ ○○円になります
あ、はい
ちょうどお預かりします

これを1週間のうちに何回繰り返しただろうか
店でも噂をされているに違いない
こんなはずじゃなかった

店から出るのが億劫になるほど月が輝いてる
ふざけるな、もうやめてくれ、ごめんなさい
申し訳なくなって許してくれと呟いた
干からびて朽ちてくだけのこの身であと何が出来るのだろうか

小さい頃はまだ人生に嫌気がさすことなど無かった
小学校では持て囃された
中学校では馬鹿にされた
高校では無下にされた
会社では笑われた
ただ歳を追うごとに、時が経つごとに人が嫌いになっていった

会社では頼れる上司がひとりしか居ない
上司の坂本さんは僕を気にかけてくれていた
仕事が出来て、家庭もある。
本当にいい人だと思う
輝いていた
だが僕はそれ以外の会社の人間から
完全に孤立をしていた
みんな僕を見て笑っている気がする
なにか大きな失敗をした訳でもないのに
なにかと目の敵にされ、他人と比べられて、
他人と比べてきた

誕生日の午前2時

もう死のうと思った
坂本さんにその旨を伝えるため電話を入れようと思ったが、最後まで勇気が出ずついに電話をかけることが出来なかった。
会社の屋上に立つ
人間が塵ほどに小さく見える
所々に灯りが着いている
下には、人だかりもできないでただ寂しい時間が流れていた

恐怖の中震える足で一歩踏み出す
落ちていく度に速度が上がっていく
五臓六腑が餓えて揺れる
足元には月
ああこんな時までお前は出てくるのか
もう、もうやめてくれ
そうやって哀れんだ目で僕を見るな

上を見るとちょうど業務が終わり帰路につこうとする坂本さんがいた
僕は困惑した
ああ、なんで、なんでだよ、なんでなんだよ、
僕はおそらく坂本さんの目の前で死ぬことになるだろう  

見ないでくれ
見逃してくれ 

いつだってあなたは輝いていました
僕の希望でした
そして僕も輝きます

あなたの光を奪って

                                                                          「月光」

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罪悪感と絶望みたいなものを描きたかった

眠気にやられた眼で窓の外ばかり見ていた

馬鹿ばっかりさ どいつもこいつもあほ面しやがって

あーあ、なかなかいい物語だと思って書いたのにうっすい文になってしまった

休憩しながら読まないと気持ち悪くなる
気をつけて





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