
絵本レビュー:『かさをささないシランさん』
今手元にないんだけど、なんかふと思い出したので書く。
この本、ご存知の方いらっしゃるかしら。
私が読んだのは、子どもの頃。
その時の感想は、怖いとかじゃなくてただ「ふーん」って感じだったと思う。凄く感情を揺さぶられたとかでもなく、でもそういう話はどこかであるんだろうなぁくらいの淡々とした読後感で、でも今も大まかなページの文章や絵の雰囲気を、頭の中で絵本のページをめくるように思い出せるのだ。
今調べてみたら、谷川俊太郎が作者だった。ここで知ってる名前が出ると、やっぱり『残る』言葉の選び方ができる人だったんだろうなぁなんて思っちゃうね。イラストもその世界観に合ってたんだろうから、いせひでこさんも凄い方なのかもしれない。どっちが凄いとかはわかんない。きっとどっちも凄い。
えぇと、正確には作者名が谷川俊太郎とアネムスティ・インターナショナル(アネムスティ・インターナショナルについては後述)。出版社は理論社。
*****************
以下、あらすじ。
記憶だけで書いてるけど、自信がないところがないのでほぼあってると思う。
シランさんは優秀な会社員で、性格も良く、友達も多い。恋人の描写はなかった気がするけど、まぁ爽やかな勝ち組って感じの人だ。
そのシランさんのところにある日、憲兵が押しかけてくる。
「おまえの家には傘が1本もない!なぜだ!」
「雨に濡れるのが好きなので」
「そんなやつがいるはずがない!みんなと違うなんておかしい!逮捕する!」
憲兵にボコボコに殴られ、投獄されたシランさん。それに対して、会社も友人もそっぽを向く。みんなと違うなんておかしい。そんなやつは友達じゃない。会社にそんなやつのデスクはなかったことにする。誰も助けてくれず、みんなシランさんのことを忘れていく。
最後に、遠くに住む見知らぬ人が、シランさんに手紙を書いているシーンで物語は終わる。
「あなたは投獄されるようなことはしていないように思います……」
*****************
つれぇーーーーー。
なんだこの話。
でも「なんだこれw」って笑い飛ばせないリアルさがあるんだよね。このシランさんが実話なのか創作なのかわかんないけど、でもほんとの話だよって言われてもありそうだなって思っちゃう。発行が1991年らしいけど、たったの30年で多様性っていう言葉がこんなに広まったんだなぁなんてしみじみしてしまう。でも、まだ今の時代だって(投獄まではされない範囲だとしても)似たようなことはあるんだよなぁ……。
さて、ここまで書いて『アネムスティ・インターナショナル』がNGO団体(非政府組織)であることに気がついた。ごめん、谷川俊太郎が外国人と協力して書いたんだ〜とか思っちゃってた。いやでも、人名でインターナショナルって名乗るの違和感だなとは思ったんだよな。
調べてみたら、1977年にノーベル平和賞も受賞してた。世界最大の人権団体らしいのに、名前も知らなかったのはちょっと申し訳ない。とりあえず名前だけ覚えておくことにします。
(あっ、PRとかじゃないです。別に入会予定とかもないので……)(マジでふと思い出した絵本の話をしたかっただけです)
今年も新年早々ツイッターは荒れた話ばかりだし、まだまだ景気も悪い。心が荒めば、シランさんのような人もまた増えてしまうでしょう。こういうのは決して、絵空事でも他人事でもない話なんだよねぇ……。
穏やかに平和に、過ごしていきたいものですなぁ。