仕組みを作っても無駄
「仕組み化」をしたいという経営者は多いと思います。
が、今回は、「いかに良い仕組みを作っても、それだけではうまくいかないよ」というお話をします。
仕組み化とは?
ここでいう仕組みとは、
「誰がやっても同じような成果を出すことができ、属人化せず会社が回るシステム」
というようなニュアンスだとお考えください。
分かりやすいところだと、マクドナルドは完璧な仕組み化ができており、高校生のアルバイトでも、均一の品質の接客や商品作りができます。
私も自分の会社は仕組み化しており、私自身はほぼ働かなくても自動的に会社は回るようになっています。
しかし、仕組みを作ればうまくいく、と考えているならば、それは大間違いです。
仕組み化をしてもうまくいかない
いかに良い仕組みを作っても、あるものが欠けていると、うまくいきません。
こんな事例がありました。
ある社長は、とても優秀で、自分で社内のさまざまな仕組みを作ることができました。
主にITを活用し、社内のホウレンソウやコミュニケーション、評価や教育など仕組み化しました。
・・が、従業員がほとんどそれらを活用しなかったのです。
社長は、「こんな良い仕組みがあるにもかかわらず活用しないとは何事だ」と憤っていました。
もう少し一般的な例を出してみますと、、
例えば、「サンクスカード」というツールがあります。
これは、従業員同士で何か感謝したいことがあった時に書いて相手に渡すことで、従業員同士の人間関係を良好にするための仕組みです。
このツール自体は、素晴らしいものです。
では、このサンクスカードを導入すれば、どんな会社でも人間関係は良好になるでしょうか?
そんなことは無いですよね。会社ごとに、状況は違います。状況を踏まえず、仕組みさえ導入すれば良い結果が出るなんてことはあり得ないわけです。
従業員にも言い分がある
さて、従業員がせっかくの仕組みを使わない理由は何でしょうか?
色々ありますが、本質的には「そんな仕組みは求めていなかったし、勝手に押し付けられて面倒くさい」ということです。
社長としては業務が効率化すると思って導入した仕組みですが、従業員としては別に求めていないし、新たなルールやマニュアルが増えて面倒なだけだし、率先して使う気にもならないのです。
こうなってしまう原因はシンプルで、社長が従業員の考えていることとお構いなしに、自分がやりたいと思ったことをやっているからです。
自分が作りたいものを自分の価値観で作り、押し付け、それが従業員に受け入れられないからといって憤っている、というわけです。
従業員に迎合する必要はないが
勘違いしないで欲しいのですが、私は経営者が従業員のご機嫌をとったり迎合すべき、と言っているわけではないのです。
通常は、従業員より経営者の判断のほうが合理的で、会社の利益につながるでしょう。
なんでもかんでも従業員の意見に合わせていたら、会社は迷走します。
従って、必ずしも従業員の意見を尊重せよ、と言いたいわけではないのです。
ただ、重要なのは、「自分の価値観のみで作ったものを押し付けて、それが全て受け入れられると思うべきではない」ということです。
逆の立場になった時のことを考えてもらえればわかると思いますが・・人は、基本的には自分のしたいことしかしません。
他人から押し付けられたものなど、やりたいと思うことはないのです。
仕組みの前に必要なもの
このように、仕組みがあっても、それだけではうまく機能しません。
前提として必要なのは、「従業員と相互理解」です。
つまり、
・社長の価値観や考え、目指しているゴールなどが日頃から従業員と共有できている
・社長も、従業員の価値観や考えなどを理解し、尊重している
このような状況になっていれば、「同じゴールを目指すための手段」として仕組みを取り入れることで、より効率的に動ける組織になります。
相互の理解が無い状態で立派な仕組みだけ作っても、うっとおしがられるのがオチです。
チームとして機能するためにまず必要なのは、立派な仕組みではなく、相互理解です。その上で立派な仕組みがあれば、素晴らしい組織が作れるでしょう。
「仕組みを作ればうまくいく」と思っている社長は、ゆめゆめご注意ください。
まとめ
・属人化せず、会社が効率的に回るようになるのが仕組み化
・押し付けられた仕組みは、受け入れられない
・前提として必要なのは、相互理解