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人の話が聞こえない。 Vol.2/金子しんぺい(パントマイムのお兄さん)
こんにちは、新橋のOLラッパー・ノセレーナです。先日、映画「アリースター誕生」を観ましたー、めちゃ良かったです。ガガ様すごい。
この連載「人の話が聞こえない。」は、自分の世界を持ち過ぎているせいで人の話があまり頭に入ってこない。そんなメンバーが集まり、ユニークな生き方をしている人の話を聞きに行こうというインタビュー企画です。
第2回目のゲストは、喋らなきゃイケメン。そんな持ち味を最大限に発揮しているパントマイムのお兄さん・金子しんぺいさんです。しんぺいさんと編集長シノキが出会ったキッカケとなる、府中のイタリアンカフェ「Cafe & BAR ipini」にてお話を聞いて参ります。
「パントマイム=金子しんぺい」になりたい
キメ顔の金子しんぺいさん
― しんぺいさん、はじめまして。ノセです。本日はよろしくお願いいたします。
(ボイスレコーダーを見て)
え、録音してるんですか? う〇こ! う〇こ! うきゃきゃ!
― はい(笑)。それでは、取材を始めさせて頂きますね。
はーい!
― 「パントマイムのお兄さん」って肩書き、ユニークですよね。いつからそう名乗り始めたんですか?
分かんないですねー。パントマイムのアクターって色んな名乗り方があって、「パントマイマー」や、これは日本のみの造語ですけど「パントマイミスト」。あと「マイマー」としか言わないとかね。色々あるんですよ。
― へええ! 知りませんでした。
えーとね、これもまためんどくさいんですけど、要するに「マイム」っていうジャンルの中に、「パントマイム」があるんですよ。
― へえーーー。
日本で先行している「パントマイム」っていうイメージと、「お兄さん」っていう柔らかい響きを一緒にしたのが僕の肩書きという感じですね。
― すごくいいですね。「体操のお兄さん」みたいで親しみやすい。
ありがとうございます。
― しんぺいさんの師匠は清水きよしさんという方ですよね。師事し始めたきっかけについて、お話を聞かせてください。
えっ、なんかインタビューみたい!!!
― インタビューですから!(笑)
ちょっとその、僕がパントマイムに興味を持ったきっかけから話さないといけないですけど。
― 是非お願いします。
大学時代に、仲間と一緒に劇団を立ち上げたんですよ。そこでやったコントみたいな劇で、僕は高校の時に器械体操をやってたから、筋肉モリモリの「モリモーリ」っていう役を演じることになって。
その中でモリモーリが寺の重い扉を開けるっていうシーンがあって。実際にはそこにないものをあるかのように、しかも重い感じでグアーってあけるシーンが自分の中でフィットした体験があったんです。
― それでパントマイムの道に?
いや、大学は教育学部に所属していたから、小学校の先生になる気満々だったんです。でも、実際は劇団とかバイオリンに打ち込んでいて。
― え、バイオリンもされてたんですか?
そう。「耳をすませば」の天沢聖司になりたかったんですよ。
― あはは、聖司くんかっこいいですよね。
「何かになりたい、目立ちたい」っていう願望が小さい頃からずっとあって。5歳でロボコップ、6歳でブルースリー、7歳でターミネーターになりたかったんです。
― 小学校の先生になりたいというのも、人前に立つのがかっこいい!みたいな感じだったんですか?
僕ね、そこまで真面目じゃないんですよ。高校三年生の時に「お前は何になりたいんだ」って担任の先生に聞かれて、器械体操やってたから体操でオリンピック出ますとか言ってたんだけど、現実的に考えると無理だっていうことに気づいたんです。
じゃあどうしようって思った時に「小三の時、担任の先生が好きだったなー」っていう。その記憶を頼りに、じゃあ小学校の先生になりますって言って(笑)。だから、当時は子供達に夢を与えたいとか、こういう教育をやりたいんですとか全然考えてなくって。えっと、何の話だっけ?
― パントマイムに興味を持ったきっかけですね(笑)。
そうそう! きっかけは、が〜まるちょばさんだったんですよね。
― が〜まるちょば?
サングラスかけてるパントマイム二人組でね。見たことあるんじゃないかな。
― (ググる)あっ、見たことあります!
でしょ。が〜まるちょばさんが世界を旅している時に、バイオリンを教えてくれていた先輩が彼らの写真を撮っていたんですよ。「パントマイムに興味あるなら、が〜まるちょばさんを生で見た方がいい」って言われて、KAAT(神奈川芸術劇場)へ観に行ったら、それはそれは僕、感動して。
― すごい! そこでバイオリンとパントマイムが繋がるんですね。
それで、が〜まるちょばさんの師匠ってどんな人なんだろうって調べたら清水きよし師匠にぶち当たって、この人に頼れば間違いない!っていうのが師事することになったきっかけですね。
― そうだったんですね。すぐ清水師匠に会いに行ったんですか?
その時、吉祥寺で教室を開かれていて、そこの生徒になったんです。大学三年生の時かな。そして、大学四年生の時にいよいよ教員の道かパントマイムの道か選ぶことになって。
― すごい二択ですね。
師匠にも止められたんですよ。僕、パントマイムの道に行きたいっすって言ったら「やめろ」って。パフォーマーで食っていく事がどれだけ大変か、師匠もよく知ってるからこそ「お前は絶対、先生になった方がいい」って言われて。
― そうですよね…。
でも、「僕、やるんです!」って気持ちでしたね。
― それは意地だったんですか? それとも自信があったんでしょうか。
いや、あのね。何も考えていない(笑)。おそらく、直感でしかないんですよ。僕、直感を大事にして生きているんですけど、大学生活に嫌気がさしていたのはありますね。周りには教員になりたい人しかいないから。
― ご両親にパントマイムの道へ行くことを伝えた時、どんな反応されました?
母は強く反対していましたが、父は「やれるもんならやってみろ」って反応でしたね。それは同性として、男だからいくばくかの年までは死なないだろう、と思ったのかもしれませんね。
― お父さんから影響を受けたことはありますか?
サブカル系は父の影響が強いです。映画はめちゃくちゃ見せられました。でも僕は集中力がない(笑)。だから、ゴジラなんかは人情部分のシーンをぶった切って、ゴジラと戦うシーンだけに編集したものを見せられていました。もう、メインディッシュとデザートだけ食べてるみたいな。
― お父さん、しんぺいさんのためにわざわざ作ったんですか…?
はい、父が編集してくれました。VHSの時代に(笑)。
愛にたじろぐ筆者
― YouTuberみたいですね(笑)。面白いお父さん。
そう、うちの父なんか変なんですよ(笑)。他にも、Yahoo!知恵袋ってあるじゃないですか、あそこに僕の名前の登録があるんですよ。「調べられてる、やった!」って思っていたら、犯人は父親だったっていう。
― 何て書いてあったんですか?
「あのCMに出てる男優、誰ですか?」「金子しんぺいさんです」みたいな(笑)。この前、パナソニックさんのCMに出演させてもらったから。
― かわいい(笑)。愛ですね。
見守ってくれてんだなとは思っています。
― めちゃくちゃ応援されていると思いますよ。しんぺいさんが「パントマイムのお兄さん」としてお仕事が来るようになったのは、営業とか頑張ってされたんですか?
いや、もう運と人です。ここ(Cafe & BAR ipini)で働いてたら、シノキさん(ひときこ編集長)がいて面白い人を紹介してもらったりだとか、そういう直感で掴んだ糸をひっぱって繋がっている感じです。
― 人徳ですね。プロとして活動を始めて、ギャップとかありました?
パントマイムってこんなに繊細で面白い表現なんだっていう、ギャップというか驚きがありましたね。知れば知るほど楽しい、みたいな。でも、舞台に立つ5分前は本当にしんどいっす。すごい緊張するんですよ。
― 緊張しなさそうなのに!
ほんとに、今でも緊張する。ロングラン公演をやっている舞台『ギア-GEAR-』も、もう50回以上出演してるんですけど、全然慣れないから、体質なんだなって思うようになりました。
― 舞台に立てば大丈夫なんですか?
はい、体が勝手に動いちゃうんですよね。ちなみに僕が初めて作詞した曲が「からだがかってにうごいちゃう」なので、是非YouTubeでチェックしてください!
― チェックします! パントマイムはやっていて楽しいですか?
子ども達の前でやるのはすごく楽しいですね。
― 大人は違うんでしょうか。
大人は大人で楽しいんですけど、僕は子どもを笑かしてやりたいと思っているタイプなんです。そうそう、先日、絵本作家のかこさとしさんが亡くなって、NHKのプロフェッショナルで特集されたんですよ。
― アンパンマンの?
それは、やなせたかしさん(笑)。「からすのパンやさん」のかこさとしさんです。その番組を観ていて、いいなって思った言葉が「楽しいとか、面白いっていう感情を隠しきれないのが子ども。僕はそれを引き出す仕事をしています」というようなことを言っていて、すごく良い! と思って。僕も隠しきれない子ども達の感情を引き出す仕事をしたいなって再確認しました。あーすごい真面目なこと言ってて辛い…。
― いいお話だから大丈夫ですよ(笑)。
(編集長シノキ)
最終的に「自分は子供だから楽しくなきゃできない」っていう話じゃないの?
― あはは、天職ってことですね(笑)。
― しんぺいさんのパントマイムの動画、拝見してきました。風がすごい吹いているのを表現するためにシャツをバタバタさせるとか、あれってそういう型を教わるものなんですか? それとも、ご自身で研究するのでしょうか。
両方です。パントマイムの表現は、教わることと、研究すること。でも一番大切なのは自分の体験からイメージしていくことだと思います。動きのひとつひとつに理由があるから「その先はどうなるんだろう?」というドラマをお客さんに見せられると思っています。
― ドラマを見せられるというのは、パントマイムが具体的な表現だからこそできることですね。
そうですね。缶ビールを飲むにしても、これが缶ビールって分かってもらうためにめっちゃ頑張るんですよ。プシュッとかって、普通やらないような動きをして。ただ、いかんせん地味なパフォーマンスなので上手いことやっていかないと滅びるかも、と危機感はもっています。
が〜まるちょばさんは、舞台演出を上手く工夫していますね。音響や照明を派手にしたり。僕はオダさん(ひときこのディレクターで馬喰町バンドのベーシスト)と一緒にやってるような、生の楽器とコラボするとか新しい表現を模索している最中です。
― しんぺいさんの動画を拝見して、パントマイムってこんなに柔軟な表現ができるものなんだって初めて知りました。パントマイム界の星野源になれそうです…!
星野源さんね。似てるって言われたことありますよ! ちょっと嬉しかったけど、僕、源さんのことあまり知らないんですよね。
― これからの展望とかってありますか?
夢、語っていいすか?
― ぜひ語ってください。
パントマイムって言葉を聞いたら、「金子しんぺいね」ってなりたい。大きな夢ですけどね。ちゃんと責任もってやりたいと思っています。チャップリンやマルセル・マルソーのような大先輩方が築いてきた歴史を引き継ぎたい。
― すごいですね、ジャンルを背負うってことですからね、すごい。
やる人が少ないからこそ、僕をパントマイムのイメージとして見る人が多くなる。ちゃんと自分が背負う覚悟でやらないといけないなって思いますね。だからこそ、自分に枷をつけるじゃないけど、「パントマイム=金子しんぺいになりたい」って公言するようにしています。
― すごい、かっこいいです。不安になることはないんですか?
それがね、ないのよ。僕のモットーがね、「いつ死んでもオッケーな状態でありたい」なんです。
― 最高ですね。一定でハイなんですね。
そうそう、一定ハイ(笑)。そうしていないとやっていけないですよね。あれやっとけばよかったなあって多少思うこともありますが。
― 最後に、この「人の話が聞こえない。」は生きるのがあまり上手くない人に勇気を届けたいという想いで始まった企画なのですが、そんな読者の皆さんにメッセージを頂けますでしょうか。
僕自身、まだまだ精進しなければいけない身だと思いますが、あえていうとしたら、自分の直感は信じてほしいですね。小さなものでもいいんです。あ、これ食べたいって思ったらその食べたいを信じてあげて欲しいです。それは絶対に隠せない自分そのものだって思うから。
― お話を伺ってて思ったのは、集中力がないしんぺいさんにお父さんがゴジラの戦うシーン集を作ってくれたような、そういう大らかな肯定感があったから、ご自分の直感を信じ続けられるのかなって気がしました。
うん、ゴジラがすべての根拠(笑)。いつか、自分の子供にもゴジラのダイジェストは見せるつもりです。
― 成功体験養成ビデオ?
セイコウ?セイコウたいけーん?
― そっちじゃない、交わらないほうです(笑)。
■金子しんぺい(パントマイムのお兄さん)1988年、東京生まれ。こころの動きを身体の動きで描く《パントマイムのお兄さん》として活動。年齢・言葉を超えるパフォーマンスは子どもから大人までを魅了する。パントマイム1人舞台、大道芸、パナソニックCM「衣類スチーマーシワ画面篇」出演など活動は多岐にわたる。歌と音楽とパントマイムの三人組“あおぞらワッペン”では親子コンサートを開催。さらに自作のパントマイムあそび歌を通じて保育者向けの講演会を行うなど、身体表現の教育分野にも精力的に取り組んでいる。ノンバーバルパフォーマンス『ギア-GEAR-』East Versionにマイムパートで出演。あおぞらワッペンのパントマイム担当。アスク・ミュージック所属。HP:http://ask7.jp/artist/kaneko/Twitter:https://twitter.com/PEIYO0121
***人の話が聞こえた。編集後記***
取材中、表情がコロコロ変わって、少年がそのまま大人になったような金子しんぺいさん。周りの人を巻き込みながら、パントマイムの新しいシーンを築いていく方なんだなあとワクワクしました。今度、ひときこチームで公演を観に伺います!
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The Team Of「人の話が聞こえない。」
Editor in Chief:シノキユウコ(スーパー主婦)
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Editor:ノセレーナ(OLラッパー)
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Director:オダヨウスケ(馬喰町バンド・Bass)
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