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サッカーの楽しさを追い求めた、聖和学園高校での学び
女子サッカー選手として第一線でプレーし続ける中で、
ふと言われた、こんな言葉。
どうやったら技術がしっかりして
サッカーが好きで
周りを楽しませることができるのか?
note:「サッカー選手小野瞳⚽️新たな世界を見た中学生活」では
ポストゴールデンエイジと呼ばれる時期を、テクニック練習にひたすらに夢中になって過ごしました。時に向き合うことをやめて逃げ出したこともありましたが、女子サッカーチームとの出会いや先生方の思いによって、サッカーの面白さを新たに気づくことができました。
女子サッカーチームと出会わなかったら・・・
部活に戻ることをしなかったら・・・
高校でサッカーを続けることもなかったと思います。
違う競技に夢中になっていたかも知れませんね。
当時気づかなかった
出会うことの奇跡と
起こることへの感謝で
人生を歩むことができていると実感しています。
さて中学卒業後はというと
サッカーの名門「聖和学園高等学校」へ進学します。
聖和学園高校女子サッカー部とは?
1985年創部。2024年時点では、39年目の歴史を積み重ねています。
全国大会優勝 4回(高校選手権3回)
全日本女子サッカー選手権大会出場13回
全日本女子選抜サッカー選手権大会 準優勝1回、3位1回
全日本高等学校女子サッカー選手権大会 26年連続出場 優勝3回、準優勝2回、3位7回
長い歴史の中で、先輩方が道を作ってくださり、これだけの実績を残すことができているんですよね。
パスサッカーとして知られるサッカースタイルは今も変わりません。
聖和学園は仏教を信仰する高校で、週に2回仏教の授業があるんですが、お坊さんである校長先生のお話やお経を唱えたり歴史を知る機会もありました。試験科目でもあるのでお経を書く写経テストもあったりするほどです。おかげで今でもお経を唱えることができたりします。以前は女子高でしたが2003年度より共学化したんですね。(私が入学する1年前です)
偉大なる恩師 「国井精一」 先生との出会い
「素早く判断してボールを動かして」
「ボールは汗かかないんだから」
君たちのサッカーは
「カップラーメンにぬるま湯入れてるサッカーだ」
初めて頭に「?」が浮かんだのは中学1年生の時です。
スポーツ少年団の監督と国井先生が知り合いだったこともあり、中学生ながらに聖和学園女子サッカー部の練習へ体験に行った時でした。
先ほどの国井先生の言葉、みなさんは理解できましたか?笑
カップラーメンにぬるま湯入れてるんですって。笑
当時中学生の私は、先生何言ってるんだろう?でした。(先生ごめんなさい)
先生が伝えたい意図を理解するのには時間がかかりました。その時の私の頭脳では、プレーがぬるいってこと?逆に熱いお湯を入れたようなサッカーってなんだろう?とりあえず違うことしてるってことだよね?・・・???とハテナでいっぱいでした。
衝撃を受けた聖和イズム
私が中学生で練習に参加させてもらった時のことをもう少し書きますね。
聖和学園って校舎が二つあるんです。一つは三神峯キャンパスと言って男子サッカー部がドリブルテクニックで旋風を巻き起こしている校舎。もう一つは薬師堂キャンパスと言って女子サッカー部が練習する校舎です。
現在の薬師堂キャンパスは私が入学する前年に新しくなりました。なので中学生の時に練習していた当時の校舎って、L字かコの字の校舎だったと記憶しているんですけど、その校舎に囲まれた中に校庭のようなスペースがあるんです。そこにはハンドボールコート1面と大木が真ん中に植えられている砂の校庭があり、サッカー部はその中で練習をしていました。
校庭はフットサルコートよりも狭く、大きな木があるため練習一つとっても、監督が用意するメニューや選手たちも当たらないようにと工夫が必要でした。
みなさん想像できますかね?ボールを回すポゼッション練習やロングキックの練習の中に木があるんです。
練習前の準備といえば、PNFで柔軟性としなやかな動きを習得するトレーニングが聖和のスタンダード。私は入学してから体験しましたが、開脚が180度できる選手がほとんどで、ものすごく驚いたのを覚えています。(私は硬いのでなおさら。笑)
ルーティンが終わり練習時間になると、校庭を8の字に走りながらブラジル体操が始まります。
その後二人組でのリフティング・判断練習・テクニック練習。それにポゼッション練習とシュート練習が続きます。3人が関わるシュート練習のバリエーションは豊富で、狭いながらに考えられた練習なのだろうと感じましたね。
ゴールとして利用していたのものは、なんと校庭の周りに張られているネットにガムテープを貼って枠組みされたものでした。奥行きがなく、棒にぶら下がるネットにテープで色分けをしてゴールに見立てている、そんなイメージです。
四隅の細かいシュートコースにも四角くテーピングされていたので、すごくいい練習になっていましたね。
当時の工夫と習慣、そして練習の意味づけと判断というところのこだわりをすごく感じた中学生での体験でした。
練習中、私の心の中といえば、練習に参加させてもらってる中学生なのでとにかく迷惑をかけないように必死です(笑)。ミスしないようにしっかりパスを繋ぐ、困らないように先に次を見ておく、パスした後もサポートにいく。とにかくボールを失わない。。。
そんな必死な私とは対照的に、格段に上を行く先輩方。パスに意味を持たせ余裕があり、判断に困ることはなく相手を騙すアイデアと駆け引きでいっぱいでした。
狭い校庭+木がある中でのポゼッション練習とは思えない上手さ、凄さ。「フィジカル・判断スピード・高い技術・アイデア・駆け引き・常に楽しむこと」それぞれの高い基準を見せてもらえるという素晴らしい機会を頂いたのでした。
確実にレベルUPした高校時代
そんな経験を経て、晴れて聖和学園に入学したわけですが、私にとっての最初の高い高いハードルは「弱いフィジカル」でした。線が細い私は少食で、ご飯を多く食べることができませんでした。遠征では丼2杯がマスト、おかずも残さずいただきます。今では笑い話ですが食べ終わるまでに2時間かかったこともあります(笑)。私もそうだったように、なかなか食べられないお子さんもいらっしゃるのではないでしょうか?
そして筋力もあまりなかったので、PNFと筋トレはとっても苦労しましたね。特に冬になると、雨や雪の影響でグラウンドは使えません。その時は体育館で筋トレ&有酸素トレーニングが続きます。私にとって遠征と冬の季節ほど辛いものはありませんでしたね、、、私にとって乗り越えるにはものすごく高い壁でした。
少しずつ少しずつ・・・積み重ねのおかげでご飯を沢山食べられるようになりましたし、練習での疲れを感じる時間が遅くなったり、厳しい練習でもやっていけたのは、続けることでの柔軟性や筋力が少しづつ高まり向上してたんだな、と実感することができましたね。
やり始める前や始めた直後は自分にとって到底無謀に思えることだとしても、続けてみると結果どんなことにも意味がある。そんなことを感じられる、下に根を伸ばすような時間でした。
さて聖和学園のサッカーというと、みなさんどんなイメージがあるでしょうか?
「栄光に近道なし」
「しなやかに美しく」
「PLAY TO THE LIMIT, IN THE RIGHT SPIRIT.『限界まで戦おう。正しい精神で』」
パスサッカーやゴール前のアイデア&崩し、ローズピンクのユニフォームが印象的でしょうか。
聖和のサッカーは、単なるパスサッカーではない。という自負があります。
☆パスにメッセージを込める。とにかく込める。
☆込められたメッセージを受け取る。
☆同じ絵を描く
☆よりゴールに近い選手、状況が良い選手へ
☆アイデアに富み、面白い
☆失わずにボールを走らせ、ゴールまでパスを繋ぐ。
パスへのメッセージやこだわりについては、ここでは書ききれないくらい沢山の種類があります。
とにかく、シンプルで反復性の高い練習であっても、自分自身でどれだけ工夫をしアイデアを持つことができるか、そして細かい工夫だったとしても表現していくか、その意識で練習をしていました。少しの変化でも楽しいんです。
自分が思い描いたものを表現すること、それが当時の喜びでした。それに加え顧問の先生や国井先生を唸らせ、想像を超えて おっ と思わせるプレーとはどんなものなのか。イメージを巡らせ、あっと思わせた時の嬉しさと自信が醍醐味でした。そんな日々を繰り返しながら、そばにいる人を驚かせたり喜ばせることはもちろん、いかに試合で発揮し魅了するか。聖和でサッカーをすることの原点であり、プレーするときは常に根底にあったように思います。そんな日々が楽しくて毎日練習していました。
毎日練習していた日々のスケジュールは
朝練 7:00〜8:00
私は始発の電車に乗って6時半過ぎに到着。
7時前に寮生などぞろぞろと集まりだし、PNFスタート。
終わった人からタイヤを並べてドリブル練習スタート
ドリブルの種類は10種類以上
それが終わって人が揃ってからスクエアパススタート
時計回り+反対周り
当てて落として3人目のパス
朝練が終わると、着替えて自転車で登校です。
購買に直行し朝ご飯を購入。1時間目までに食べるというルーティン。
朝ご飯の定番は、ホイップクリームが挟まれているコーヒーサンドか、チョコスプレーがかかっているリングドーナツでした。
お昼は学食です。
注文を受けてくれるお姉さんに癒されながら、焼肉丼や中華丼、定食やカレーをモリモリ食べてました。
学校が終わってからの練習。
私が入学してからは、校舎から自転車で1周回ったところの入り口から土のグラウンドへ移動します。大きさはフットサルコート1.5面くらいでしょうか。
個人準備はグラウンド入り口の路面で行う、PNFの決まったルーティンからのスタートです。
全体練習スタートはリズム良くステップをするラダーから。
バスケットボールでよく使われているタイマーを使い、リズムの変化に対応しながらリフティング。
最初はその場で、一通り終わったら走るリフティングや高く上げて判断を伴うリフティングまで。個人技術を高める習慣トレーニングが行われます。
スクエアパスや多種にわたるシュート練習を行い対人練習やポゼッション、ゲームと続きます。
毎日PNF、リフティング、パス、シュート、ゲーム。とにかく単純なルーティン練習かもしれないけれど、全く飽きないという不思議なんですよね。
それにはもちろん理由があって。
好みの話にもなりますが、まず個人的に同じ作業の繰り返しは嫌いではないんです。同じ練習でも必ず違いはあると思っていて、全く同じってことはないと思うんです。リフティングはボールの回転や高さが毎回違う、パスは足の当たる感覚やズレ、味方がプレーしやすいボールの追求、シュートはGKに読まれず逆をつく工夫、確実に決め切る力、ゲームでは相手をいなしながらアイデアを持って確実にゴールへ迫る。
とにかく技術、とにかく判断、とにかくアイデア
共通することは、
自分が思い描いたプレーを表現できているか。
足に当たる感覚に違和感はないか。
ミスを少なくすることができるか。
味方とのイメージは合っているか
でしたね。
高校生活での工夫
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
長々と書いてきましたが、まとめると
☆時間がかかってもご飯を食べること。
→将来的に高校でたくさん食べられるようになったことが大きかった。
→食べたものがエネルギーになる。を実感できました。
☆全てのプレーにメッセージが込められている
→一つ一つのプレーに想いやイメージがあり意図を持たせることができる
→ボールという贈り物をどのように届けるかが大事。
☆習慣の大切さ
→同じ練習。だけど同じにしない工夫
→自分の感覚を確かめる原点となる。
☆技術やアイデアは永遠に自分のもの
→自分だけの武器となる。
→技術は技術を生み、発想は発想を生む。
「自分の武器」と「苦手分野」と戦った大学時代へ
全ては
◇聖和学園の伝統とサッカースタイルの提供
◇体現し魅せてくれる先輩方
◇ほぼ始発で通っていた私を支えてくれた家族と友人
ご指導いただいた先生方や夢中にさせてくれた環境に感謝です。
「栄光に近道なし」
「しなやかに美しく」
「PLAY TO THE LIMIT, IN THE RIGHT SPIRIT.『限界まで戦おう。正しい精神で』」
私を成長させてくれた聖和学園での時間。
選手を引退した今でも、技術と判断、アイデアは
自分のものとして生きています。
さて高校卒業後は、いよいよ大学での挑戦が始まります。
自分の武器を得た高校時代から一転、
表現する場となる大学時代とは。
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