未発売映画劇場「サント対フランケンシュタインの孫」
サント映画完全チェックの第42弾は1974年10月のメキシコ公開作品。この前年「サント映画黄金の1973年」にはじつに6本ものサント映画が公開されていたのですが、この年には前回の「サント対ラ・ヨローナ」が8月に公開されるまでサント映画はナシ。メキシコの熱狂的サント・ファンは大いに飢餓感を味わったことと思いますが、その飢餓感をいやすかのように続けざまに公開されたのが、今回の「Santo y Blue Demon contra el doctor Frankestein」 「サント&ブルー・デモン対フランケンシュタイン博士」って、これだけである程度中身がわかりますね。
前にもどっかに書いたけど「Frankestein」は「Frankenstein」のミススペルではないんですよ。なぜかスペイン語ではこう綴るらしい。
ん? フランケンシュタイン博士とはもう対戦ずみじゃなかったでしたっけ?
よく覚えてましたね、この2年前の1972年に第31作「サント対フランケンシュタインの娘」がありました。ただし、あちらはフランケンシュタインの娘との対決でしたね【詳しくはこちらから】
ではいよいよ本家のヴィクター・フランケンシュタイン博士との対決が実現か、と思いきや、今回の対戦相手はフランケンシュタインの孫で、その名もアービング(Irving)・フランケンシュタイン博士だそうです。前回のフランケンシュタインの娘・フリーダ女史の息子とかではないのでしょうか。
アービング・フランケンシュタインを演じたのはジョルジ・ルセック(Jorge Russek)なる俳優です。知らないでしょうが、けっこう大物で、アメリカ映画にも出ていたりして活躍しています。フィルモグラフィを見ると「ワイルドバンチ」「墓石と決闘」「明日に向かって撃て」などが並んでいて、ちょっとビックリ。この作品のすぐ前に出たのがサム・ペキンパー監督の「ガルシアの首」 1989年には「007/消されたライセンス」にまで出演しているようです。いずれも小さな役らしいですが。1998年没。
そんな大物俳優(?)が演じているとはいっても、もちろん一族の血を引く孫息子のアービングくん、せっせと怪しげな実験に精を出しております。
夜道を一人歩く金髪女性が、突如現われた黒人の大男に拉致されます。さらわれた美女はフランケンシュタイン博士の実験室へ連れ込まれると、そこにはもう一人の美女が捕らえられており、博士は二人に開頭手術を施します。どうやら脳の交換手術を試みたようですが、実験は失敗。なぜか彼女らは死なず、ゾンビのようになって博士の指令により自分たちの家族を殺してしまいます。
ここで意外な事実が。アービングくん、若く見えるのですが、じつは100歳を超えているんだそうです。若返りの秘薬を使っているおかげだとか。
おお、これは、以前に登場したフランケンシュタイン博士の娘フリーダと同じじゃないですか。してみると、やはりアービングくんはフリーダ女史の息子なのか? そのへんハッキリしませんが……
まぁそのへんはあんまり詰めても仕方ないでしょう。ちなみに「娘」とは製作会社と監督(ミゲル・M・デルガド)が同じ。なんか臭いますね。脚本家は違いますが(「娘」はご存じフェルナンド・オセス、この「孫」はフランシスコ・カヴァゾスと アルフレド・サラザール)、アイデアの使い回しだったりするんでしょうか。どうでもいいか、そんなこと。
「娘」と明らかに違うのは、セットの出来栄え。あのときは薄暗い地下室ふうの実験室だったのが、今回はセキュリティーも万全の秘密基地っぽい近代設備。ちゃんと手術室もあります。どうやらコンピューター的なものも装備されていて、冒頭の女性の開頭手術なんかも、このおかげで成功しそうに見えますから。
その手術室に、拉致されたサントが連れこまれて怪しげな手術を受けそうになるのがクライマックス。サントは麻酔をくらっているのか、動けません。危機一発!
もちろん「娘」の時とは違って、今回のサントには盟友ブルー・デモンがついています。万全のセキュリティーをモノともせずに、麻酔ガスのボンベを抱えて乱入した青い悪魔、ガスを撒き散らしてサントを救出します。とくにガスマスクもしてなかったけど、どうやらメキシコのレスラーには麻酔ガスは効かないようですね。
さて、フランケンシュタインといえば、人造人間。死体を継ぎ合わせて電流を流してよみがえらせる、あの怪物。「娘」のときにも、不充分ではありましたが、怪しげな怪人(ユニバーサル系)が登場していました。出ただけだったけど。
さて、今回はどんな怪人が現われるのでしょうか。期待が高まります。
ガッカリしないでください、どうやらこの大男が今回の「怪人」のようです。ガタイはデカいけど、顔の縫い目も、首のボルトもありません。単なる大男じゃないか。無論のこと、ボブ・サップじゃないです。
ただし強いことは強いです。格闘戦でも圧倒的だし、警官隊の銃撃などものともしません。やはり何らかの強化処理をされているのでしょう。
しかも映画のラスト、すべての計画を粉砕されたフランケンシュタイン博士は、復讐のために、この怪人をプロレスラーに仕立て上げ、サントと対戦させるのです。何を考えているんだか。不死身のレスラー対スペルエストレージャ。ある意味、夢の対戦ですね。試合はゴーレムが押しまくるんですが、試合途中でストップ。ノーコンテストですかね。
大変残念なことに、この怪人(ゴーレムって名のようです)を演じたのがナニモノか、よくわかりません。資料をいくら調べても、クレジットが発見できないんです。ポスターなどでは、けっこう目立っているのにね(どなたかご存知の方がいらしたらご教示ください)
ちなみに、長年のライバルであり盟友でもあるブルー・デモンとサントのコンビは、残すところあと1作だけ(たぶん) ルチャ史上最大の名コンビの共演を心して鑑賞したいものです。ブルー・デモンはそんなに大活躍はしないけど。
いちおう言っておきますが、数あるサント映画のなかでは、まあ上出来なほうの作品でした。それなりに予算もかかっているようだしね。あくまで、サント映画のなかでは、ですが。
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