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「大人になるって大変で辛いこと」そういうイメージを、ここにいるみんなが壊してくれた。-スタッフインタビュー 菊地広樹


仕事は「みんなと一緒に楽しく過ごす事」


ー担当している業務内容について教えてください。

事務仕事では、みんなの予定を組んだり、毎日の担当を決めたりしています。利用される方一人ひとりがどういうことをやりたいのかを把握して、それができる場所にスタッフの配置を考え、送迎の順番なども含め、1日の予定を組んでいます。

現場支援の仕事は、みんなと一緒に楽しく過ごす事です。

ー現場支援について、もう少し詳しく教えていただければ…。

そうですね(笑)。

Jumpでは利用者のみなさん一人ひとりの声から活動内容を決めていて、全体での音楽セッションの他に、午前中にはいろいろな個別活動を行っています。その中で、僕はダンス部(グループ名:DreamT)、DTM(デスクトップミュージック)部、オーディオ部を担当しています。


経験なしの自分がまさかのダンスデビュー!?

ーそれぞれの部の活動について教えてください。

ダンス部は、4年前、サルサガムテープと共演したダンスグループのダンスを見ていた利用者さんが自分もやりたいと言ったことから始まりました。利用者の女性2人と僕の3人で活動しています。僕自身はダンスの経験はありませんでしたが、みんなで動画を見ながら曲を選んだり、振り付けを覚えたりするところから始めました。現在はエアロスミスや嵐の曲などをレパートリーに、オリジナルで振りをつけたものもあります。

DTM部は、生演奏で難しい曲をやりたいという利用者さんの声から始まりました。生演奏でなくパソコンやタブレットを使って利用者さんと一緒に音楽制作をしています。旭川でサルサガムテープがライブをしたときに共演した同じDTMをやっている人と一緒に、テレビ電話で作曲の共同制作もしています。

オーディオ部は、2人の利用者さんと一緒に活動しています。音響やレコーディングについて僕の知っていることを共有したり、Jumpで企画するライブや、定期的におこなっているライブハウスでの練習のときに、音響のセッティングをみんなで担当しています。


その他に、一人で落ち着いて演奏したいという利用者の方のために、音楽スタジオで一緒に練習をすることもあります。「支援」という枠だと、みなさんと過ごす中で、車での送迎、食事やトイレの介助などを行っています。


音楽スタジオでなく、就職先にハイテンションを選んだ理由とは

ー実は音楽スタジオへの就職が決まっていたと伺いました。それでもハイテンションを選んだ理由はなんだったのでしょう?

とにかく楽しそうだったから。それにつきます。

音楽の専門学校でレコーディングの技術を学んでいた時に、サルサガムテープがレコーディングするために何度か来ていて、レコーディングアシスタントを担当したことがありました。それがご縁で何度かハイテンションに遊びに来たことがあって。そのとき、とにかく笑顔が多いと思ったんです。

当時は福祉に関する勉強も何もしていなくて、「利用者」と「スタッフ」という概念すらありませんでした。でも、どちらもすごく笑っている場面が多くて。かしわから就職の話をもらったときに、普通のスタジオへ就職するより、ここの方が楽しそうだなと直感的に思いました。学んできた音楽スキルを生かすこともできると思い、ここに決めました。


ハイテンションに来なければ出会えなかったこと


ー「ここで働いていてよかった」と思うことはどんなことですか。

自分が出会うと思っていなかった「人」や「こと」に出会えたことです。

僕は自分が福祉の仕事をするとは全然思っていなかったんですよ。だけど、音楽を通じてこの場所に出会って、福祉に出会えたことがよかったと思っています。それはハイテンションに来なければ出会えなかったこと。

障害のある方がいるということ自体が世の中に知られていないように思います。学生のときも支援級に分かれていて、僕はハイテンションに出会うまで、障害のある方と関わったことはありませんでした。あのまま音楽スタジオに就職したら、一生関わる機会はなかったかもしれないと思います。

みんなと出会えて一緒に過ごせるようになったことは、自分にとってプラスだと感じています。みんなが楽しそうだから、それに触発されて自分も楽しくなっている。ハイテンションの利用者、スタッフに出会えて、こんなおもしろいことがあるんだ、こんなおもしろい人達が世の中にいるんだ、と思う。

もっと大人になるって大変で辛いことだと漠然と思っていました。そういうイメージを、ここにいるみんなが壊してくれたのかもしれない。たいへんなことももちろんあるけれど、それ以上に、仕事ってこんなに楽しいんだ、と毎日感じています。


音楽を仕事に みんなの想いを叶えること


ーどんなところにやりがいを感じていますか。

僕にとって何よりのやりがいは、仕事で音楽ができるということです。すごく楽しくて、やりたかったこと。特に、みんなで音楽をやるということが好きです。高校時代にバンドを組んでいたのですが、それが仕事でできるのはすごく楽しいですね。

それから、Jumpでは普段の活動も楽しいけれど、外に発信して見せたいという人もいるので、年に一回「CoCoColor」という個別活動の発表会を開いています。Jumpのみんなは、それぞれの活動を本当に一生懸命やっていて、ポテンシャルがある。そういう人たちの想いを叶えることもやりがいのひとつです。みんなが楽しめることを作り出すということを大事にしています。

僕は音楽をきっかけに福祉の仕事に出会えた。それは逆の人もいると思います。福祉をきっかけに、ここで音楽やアートに出会う人もいるんじゃないかな。あと、僕は人生でダンスをするなんて思ったこともなかった。(笑)

ここって、新しいことに出会える場所なんじゃないかと思います。




サルサガムテープ音響担当 菊地広樹

1994年千葉県八街市生まれ、厚木市在住。
高校卒業後、東京スクールオブミュージック専門学校音楽テクノロジー科作曲編曲コース入学。在学中にレコーディングエンジニアコースへ専攻を変更。2014年、同校卒業後NPO法人ハイテンション入社。
サルサガムテープ25周年アルバム「ワンダフル世界」レコーディングエンジニア担当。
保有資格:介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)

インタビュー 雨野千晴


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