日刊ほぼ暴力#330
渾身の力で叩きつけた手斧がそれの右上腕に半ばまで埋まり、止まる。一撃で落とすことができなかった。冷や汗が噴き出す。押しても引いても動かなくなった得物から手を離して飛びすさる咄嗟の判断が、わずかに遅れた。ぎち、と鋼めいた筋肉の束が音立てて軋み、次の瞬間、それは傷ついた右腕を凄まじい勢いで振り上げた。埋まったままの手斧と、その柄を握りしめたままの私ごと。何かが千切れたような激痛が右肩に走り、まずい、と思う間もなく私の手は柄を離している。私は宙に投げ上げられ、遠ざかる地面と、はっきりとこちらを視認するそれの醜い相貌を見下ろす。引き裂けた唇を歪め、猿のように歯茎を剥き出してそれは嗤っていた。丸太めいたもう一方の腕が、すでに空中の私に狙いを定めている。振りかぶられる。回避は不可能。そう理解するや、私は無事な左手で腰の短銃を抜いた。身を捻る。狙いは眼球。私は落下していく。空気を割って迫る巨腕が私の側頭を砕く寸前。照準が――合った。
(415文字)(続かない)