日刊ほぼ暴力#325

「てめえはもう終いだ、分かってんだろうな」
狭いオフィスの一室で、窓際に追い詰められた青年を半円に包囲する五人の黒服。その一人が凄みをきかせて告げる。
「ネタは上がってんだ、今さら言い逃れはできねえぞ。……散々やってくれたな」
「ええ、散々好きにさせていただきました。ですからもう、どこにも逃げません」
青年は笑った。その顔には怯えも焦りもない。これまで常にそうであった通りの、余裕を湛えている。
「あちらこちらと駆け回って随分お疲れでしょう。立ち話もなんですから、“座って”はいかがです」
BANG !!!!! BANG !!!!!
五重に重なった銃声が二度、薄い壁を震わせて響き渡った。黒服たちが一斉にチャカを抜き、各々の右膝に銃口を向け、発砲した音だった。撃ち抜かれた膝を折り、彼らは訓練された騎士のように跪いた。青年は耳に突っ込んでいた指を抜いた。
「ふざけたこと抜かしてんじゃねぇぞ、ナメてんのか、エエッ!」
先ほど凄んだ男が声を荒らげる。彼はいつの間にか自分より小柄なはずの青年を見上げていることをいぶかしむ。それに、なぜおれは既にチャカを抜いているんだ? だが、くだらない疑問に関わっている暇はない。
「どういう腹か知らねえが、洗いざらい吐いて貰うからなァ。……ァ、かは、ふほっひはは」
「もちろんです。しかし、先にあなたの“腹の底”を見せて頂きますが、構いませんね」
黒服たちの行動は、今度は今一つ統率に欠けていた。自分の喉に手を突っ込み、胃を引きずりだそうとする者。嘔吐し、白目を剥き、或いは泡を噴きながら窒息する者もいれば、腹を素手で引き裂こうとし始めた者もいる。

(676文字)(続かない)

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