日刊ほぼ暴力#329
ようこそ、可哀想な人。よくここまで無事にたどり着きましたね。無事ではない? ああ、怪我をされているのですか。ご心配なく、見張りの鳥が吼えたので、じきに人が参ってあなたを医院まで運ぶでしょう。それまで、わたくしの隣にでもお座りになってお待ち下さいな。ご覧のとおりの身体ですけれど、お話相手くらいなら務まりますわ。少しは痛みを紛らわすお手伝いになれればよいのですが。……ここは何なのか、ですって? では、あなたは招かれざる客人なのですか。事情も知らずにあの四つ首を倒してきたというのですね。まあ、そんなに怯えないで。傷が開きますわ。たとえ招かれた者でなくとも、わたくしはあなたが生きてここにたどり着いて下さったことを喜ばしく思います。そうでした、質問にお答えしなければなりませんね。ここは天国です。外界の地獄に傷つけられたあらゆる人々に救済を与える場所です。……わたくしも、かつてはあなたと同じように、招かれざる偽りの客でした。けれどご安心ください。たとえ神の声に呼ばれたまことの民でなくとも、罪のしるしを削ぎ落としさえすれば迎え入れられるのです。わたくしの両腕と両脚、服の下に隠れているすべての痕跡も、その贖罪が果たされたという幸福の証なのです。なぜ、目を逸らすのですか?
(533文字)(続かない)