日刊ほぼ暴力#348
涎を垂らす口の中にショットガンの銃口を突っ込んで、トリガーを引く。それだけで全ては済んだ。冷えたガラスのような大気の静寂を粉々に砕いて銃声が響き渡り、頭の中身をぐちゃぐちゃに掻き回された老人の死体は椅子の上で仰け反り動かなくなった。濁った両目は大きく開かれて、まばらな雪を降らしている天を仰ぐ。白く覆われていくバルコニーを、湯気を立てる温かい血が汚す。肘掛けの上に乗っていた両手がだらりと落ちた。年齢に似合わぬ厚い脂肪の弾力に包まれたその手は、もはや何を求めることもない。老人の人生全てを支配してきた欲望という名の怪物は、宿主の死と同時にようやくこの世から消え去った。私は死体を見つめ、それから庭の凍った池を見つめた。
「奥様。お身体が冷えますよ」
室内の方から静かに使用人が呼んだ。私は彼女を手招きし、火薬の臭いを薄く立ち上らせる凶器を渡した。
「手入れをして、元あった所に置いて」
「旦那様の方は」
「そうね。あの池の底にしましょう。氷を剥がして、その下に」
私はひどくぼんやりしていたと思う。使用人の彼女はそれでも落ち着き払って私の指示に従った。彼女なら、私の考えるよりも遥かに完璧に全てを片付けてくれるのだろう。どうしてそんなにも慣れきった様子なのか、私はあまり考えなかった。疲れきっていたものだから。
(549文字)(続かない)