日刊ほぼ暴力#326

錆まみれの斧が一閃し、溶けかけた男の胴体を真っ二つにした。手応えは曖昧だった。ぬちゃり、と液状化した肉が飛沫と化して跳ね、脆い結晶のように砕けた背骨が散らばる。断面から糸を引く赤黒い粘性の血液が伸びて、地に落ちた上半身と、倒れずに立ったままの下半身を繋ぐ。下半身は上半身を引きずったままうぞうぞと歩き続け、彼との距離を詰める。
「パパ――」
彼の腰に少女がしがみつく。小さな手は恐怖に青ざめて震えている。
「じっとしていろ」
彼は淡々と返し、再び斧を振るう。下半身が今度は縦に両断される。一本足になってもなお、怪物はねばつく血液で己だったものの断片と繋がったまま、よろめきながら近付いてくる。……近付いてくるとて、もはや脅威ではない。
「もう、いいだろう」
彼は錆びた斧を無造作に捨てた。そして腰に吊った細身の剣を抜き放った。それは清められた銀を折り畳んで鍛えられた特別な武器で、鋭い輝きが刃先に点っていた。彼はそれを自ら振るうことなく、後ずさりする少女へと強引に手渡した。
「お前がカタをつけろ。父親なのだろう」
「……!」
少女は涙をためた目で彼を見上げたが、その手は既に剣の柄を握りしめていた。

(491文字)(続かない)

最初に書こうとしてたのが何だったか忘れた回(しょっちゅうある)

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