日刊ほぼ暴力#335
路地に張り渡された電線には人間の腸がぶら下がり、醜く禿げたカラスがそれを啄んでいた。正中線から真っ二つになった若い女の死体がこちらを向いて笑っていた。赤黒い汚泥は細かい肉片やら腐敗して溶けかけた何かに埋め尽くされて足の踏み場もなかった。そんな光景の中に、その少女は踞っていた。少女は棒のように痩せていたが、五体満足で、しかも動いていた。周囲の光景に注意を払う様子もなく、自分の膝を抱えて踞り、自分の右手の甲を左手でしきりにかきむしっている。
おれはそちらに近づこうとして、その寸前で気づいた。路地を飛び回りノイズのような羽音を撒き散らす無数の蝿。生者であるおれの頭の周りにさえ見境なくたかってくるそれらは、その少女の周りにだけ、一匹もいない。かきむしりボロボロになった少女の皮膚の下から鋼色の組織が覗く。少女がこちらを振り向く。その顔に皮膚はない。灰色の陽光を跳ね返す、ぎらりとした金属光沢。おれが後退りするよりも、少女が右手をこちらに向けるのが先だった。
(427文字)(続かない)
明日の私はこの続きを書くだろう、なぜなら常々あまりにも前フリだけで力尽きることが多いからだ 暴力、しなさい