日刊ほぼ暴力#299

下らない町だった。下らない奴らだった。何もかも。金属バットに霧雨が伝う。薄められた返り血がスイカジュースみたいな色をして流れ落ちる。右手のバットも右足の踵もガリガリと音立ててアスファルトに引き摺りながら、俺は砕けたガラスまみれの路地を歩き始めた。道の両脇の廃墟みたいな建物の壁を這う配管の束は人間の手なんか届かないような高さに至るまでベコベコに凹んでいて、それがさっきの乱闘の時についたのか、それとも元々そうだったのかしばらく考えてみても分からなかった。そんなこと以外何も考えていない頭の中は非常に澄んでいて、何となく広々していた。一発抜いた後みたいな。死体はどうしたんだっけ。叩き潰してそこのゴミ箱に詰めた。大丈夫、多分すぐにバレる。どこに行けばいい。もうこの町にはいられない。上等だ。俺はどこでも生きていける。俺は強いからな。右足の痛みがだんだん鮮明になってきた。足取りが縺れて、でかい舌打ちをこぼす。ここで止まっちまうのが一番下らねえだろう。俺の道を邪魔するやつはもう誰もいないのだ。誰も――
ガラスを踏む足音が聞こえた。俺は金属バットを持ち上げて振り返った。

(482文字)(続かない)

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