日刊ほぼ暴力#349
拳銃を握った手首が音もなく切断される。コンマ数秒後、痙攣した指がトリガーを引いた。発砲音。弾丸はあらぬ方向を貫き、手首は赤い血液の尾をひきながら反動でくるくると宙返りを決める。その曲芸に目を向ける者はいない。手首を失った少年は、目の前に迫る刀の煌めきだけを凝視し、何かを叫ぼうと口を開けた。声が発せられるよりも早く、刀はその頭部を斜めに駆け抜けていた。右耳の下から、左耳の上へ。スライスされた上部が滑り落ち、それから本体がゆっくりと倒れ伏す。すでに人間3体分の肉片と血液が撒き散らされている路地へと。
抜き身の刀をぶら下げたまま、男はゆらりと路地の奥へ目をやった。引き裂かれた衣服を胸の前でかきあわせ踞っていた少女は、その男の視線を受け止めて凍りついた。この惨劇を目の当たりにし、それでもなお口に出そうとしていた感謝の言葉は、この瞬間全て吹き飛んだ。代わりに本能が紡ぎだした陳腐な命乞いだけが口から漏れだした。
「ひ、いぃっ……こ、殺さないでください……!」
「勿論、殺す」
刀の切っ先が、躊躇なく少女の心臓へ突き下ろされた。
「〈この体〉が反射的に動いてしちまったことだ。全く、面倒を背負い込む気なんぞないってのに」
(504文字)(続かない)