日刊ほぼ暴力#358

割れた窓から流れ込む冷たすぎる外気が、腫れ上がった頬の痛みを冷やしていく。ケロイドまみれの痩せた腕で膝を抱える少女は、今さらのようにがたがたと震え始めた。目の前にはひっくり返ったテーブルと椅子、一人ぶんしかない食事、父親の死体。どちらを向いているのかも分からないほど破壊された頭、数えきれないほど穴をあけられた胴体。そして、返り血を頭から浴びた真っ赤な男が少女を見下ろしている。
「ありがとう」
少女はようやく言った。男は悲しそうに白い歯を見せて笑った。真っ赤に塗りたくられた顔にその白い色が目立って滑稽に見えた。
「お礼はいらないよ。僕が君にあげられる幸せはこれしかなかった。立てるかい?」
血と肉のこびりついた凶器を袋の中にしまい、男はぬめぬめとした鉄臭い手を差し出した。この男は狂っているのだろうと少女は思った。狂人の目を少女はよく知っていた。それでも少女はその手を握りかえした。他に選択肢はなかった。

(400文字)(続かない)

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