日刊ほぼ暴力#316

「へえ、こりゃ聖戦時代の剣だねぇ。南方の騎士くずれから奪いでもしたかい」
そうだ、と答える代わりに、ゴボリ、と俺は血を吐いた。仲間たちの屍が周囲に散らばっていた。間もなく俺もその一つとなる。だが、俺はその前に何としてもその男の顔を見ようとした。たった一人で俺の率いる盗賊団を返り討ちにし、悠々と俺たちの携えていた武器を拾い上げては値踏みしている、異様な風体の男を。
「あんた……何者だ」
俺の声は畏怖に震えていた。謎の男は、全身に夥しい武器を所持していた。束になって負われた剣。身長を越える長物も数本。腰に吊るされた様々な形状の刀やサーベル。不恰好に大きい衣の内側には更にどれほどの武器が隠されているやら、想像もできない。
「なに、しがない復讐者さ。これから女王を殺しに都へ行く。あんたの無念もきっちり晴らしてやるからな」
謎の男は、俺を斬った剣を自らの衣服で拭いながら微笑んだ。男の服はすでに返り血でずぶ濡れているので、血糊は全く拭きとられていなかったが、男は気にする様子もなく、ぬめる剣を抜き身のまま腰に吊るした。
「俺の、無念だと?」
「そうさ。あんたらも、女王の悪政がために土地を捨て盗賊とならざるを得なかったのだろう。そしてこのように死ぬことになった。気の毒になあ」
それは皮肉ではなかった。男はひどく真剣だった。最期に見たその両眼は狂気に澄んでいた。

(573文字)(続かない)

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