日刊ほぼ暴力#361
地を蹴る音だけを残して、真正面にあった少年の姿が消える。俺は迷わずにトリガーを引く。狙いは頭上。視線は残像に引き付けられたまま、銃口だけが正確に本体を捉える。BLAM ! 手首に重い反動、返ってきたのは数滴の血と笑い声。
「はは」
羽のように軽々と身を翻し、少年が背後に着地する。俺がそちらを振り返る動作の間も、銃口はその軌道を忠実に追いかける。BLAM BLAM BLAM BLAM ! マズルフラッシュの瞬いた回数と同じだけ、弾丸を刃が弾く甲高い音が鳴った。俺は少年に向き直り、撃ち尽くした右手の銃を捨て、左手で抜いたもう一丁を突きつける。だが、トリガーは引かなかった。少年は逆手に構えた二刀を胸の前で交差し、ふてぶてしく笑った。
「見ないで当てんなよ。気持ち悪ぃな」
その額に浅く刻まれた赤い直線から鼻筋を通って垂れ落ちる一筋を、少年は舌を出してべろりと舐める。
「こっちの台詞だ。人間がノミみてえに跳ぶな」
俺は右手でも銃を抜こうとした。だが、動かす指がなかった。視線は敵から逸らさぬまま、一瞬でイメージを修正。銃を捨てたのではなく、銃ごと手首が落ちた。鼓動に合わせて血の噴き出す感覚が今更意識に割り込んでくる。
(497文字)(続かない)