日刊ほぼ暴力#359
「もう、みんな死んじゃったのかな」
「どうだろう。そうだったら、どうする?」
「さあ。それよりどっかあったかいとこ行こうよ。寒いから」
撃ち尽くしたリボルバーをダッフルコートの内ポケットに押し込む。弾が補充できるかは分からない。ゲームみたいに都合よくその辺の警官の死体から拾えたりするなんてことはないと思うけど、まあお守りみたいに持っていたって損はないだろう。
「そうだね。凍えて動けなくなったらやばいし」
「あいつらもみんな凍え死ねばいいのに」
「あいつらのほうが寒そうな格好してんのにね」
他愛ない会話を交わしているだけで、体の中に人間らしい熱が戻ってくるような感覚がする。目の前に散乱する爆ぜた赤い肉も脳味噌の欠片も全部どうでもよくなった。どうでもいいものは前からこの世界に溢れていた。親とか学校とかうるさいだけの他人とか未来とか。そういうのが全部壊れて無くなった後も、相変わらずこの世界は邪魔者ばかり生み出して私たちを二人ぼっちにさせてくれない。階下から聞こえてくる呻き声の合唱。正面から逃げるのは無理だ。窓から飛び降りて裏に回ったほうがいい。ここは2階だからきっと大丈夫。
「手、繋ごうか」
彼女の手を掴み、伝わってきた震えを握りつぶすように強く力を籠める。痛いよ、と彼女は少し嬉しそうに呟く。
(543文字)(続かない)
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