日刊ほぼ暴力#312
静謐な円筒状の空間内に銃声が反響し、俺たちの頭上と足の下に続いている途方もない距離と空間を思い出させた。吹き飛んだ奴の内臓が遥か下の暗闇へと落下していき、続いて腹に風穴を開けた本体がその後を追う。それらが見えなくなるのを待たず、俺は目を背け銃をホルスターに納めた。
「そいつも捨てちまえばいいのに」
癇に障る調子で、ささくれた声が言う。壁のないエレベーターの中心に、座り込む少女と、その傍らに立つ白衣の女がいる。女は俺のリボルバーを目顔で示し、肩を竦めた。
「もういらないだろ。これ以上は減りようがない」
最下層でエレベーターに乗り込んだ時、俺たちの仲間は全部で8人いた。今ここにいない5人は全て、俺が殺して突き落とした。煩かったからだ。
「庇ってくれるのは嬉しいけどね。あんたちょっとおっかないよ。私はともかく、あんまりこの子を威かさないで。心臓が小さいんだから」
「……地上までは、あとどのくらいだ」
少女の薄い肩をさする女から目を逸らし、俺は上を見上げる。無論そこにあるのは天井だけだ。
「ち、近い。見える。青。光……苦しい」
少女が頭を抱えて踞る。地上に怯える理由など、俺ならともかく彼女に存在するはずもないのに。
(502文字)(続かない)