日刊ほぼ暴力#333

「何者だ!」
倉庫の中の面々は素早く振り返り、大量の銃口が一斉に出入口を向いた。月明かりの逆光を背負いそこに立っていた影は、彼らが想定していたものよりずっと小さかった。
「悪いけど、知らない大人に名前を教えちゃいけないって、ママに言われてるの」
甲高い不敵な声。つんと傾げた人形のような顔の横に揺れるツインテール。白いポロシャツに膝小僧までのスカート。いっそわざとらしいほど、それはどこからどう見ても、十に満たない年齢の少女だった。それもどちらかといえば小綺麗な、育ちの良い部類――つまり、逃げ出した「商品」などではありえない。
「だから、顔だけ覚えて死んで行ってね」
少女は無造作に倉庫の中へ踏み入る。呆気にとられていた男たちも、その動きに対しては素早く反応した。数限りない疑問はさておき、部外者が侵入しようとしている。ならば即時排除するのみ。例外はない。トリガーが引かれ、マズルフラッシュが空間を埋め尽くす。床に伸びた少女の影が無数に分裂し、瞬き、銃弾に削られる。そして、彼女の本体は既にそこにない。

(447文字)(続かない)

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