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氷谷八尋
2019年1月27日 21:43
マッチ売りの少女からマッチを買った。クリスマスイブの晩だった。凍りついた大路の人通りは多く、誰も皆早足だった。僕は少女のふるえ続ける手に銀貨を一枚握らせると、そのまま手を引いて人気のない路地へと連れ込んだ。狭い路地には風もなく、散乱する生ごみから臭気と共に立ち上る僅かな熱を感じた。紫色に腫れた足の横に籠を置こうとする少女を制し、僕は言った。「マッチをくれ」少女は困惑したように目を細めた。僕