上野優華 『こっちをむいて』
関口シンゴさんと言うギタリストとしてもアレンジャーとしても大好きな方が関わっている作品を片っ端から聞いているのですが、今回のこの曲は素晴らしい。関口さんはあいみょんなどの編曲やプロデュースをしてますが、ギタリストとしても素晴らしいです。彼の組んでいるOvallと言うバンドは和製のThe Rootsとも言えるほど黒い。個人的今一番大好きなミュージシャンです。さて曲を聴いて行きましょう!
とにかく良い曲すぎる
歌:上野優華
作詞・作曲:コレサワ
編曲:関口シンゴ
「タバコ」などの曲で一世を風靡したコレサワが楽曲提供しています。まずとにかくこの曲が良すぎる。彼女特有の回りくどくない間接的な感情の伝え方と、狙っても狙いきれない予想外のコード展開が混在していて、自分の中で今年一番の曲になりつつあります。歌詞とメロディーから見て行きます。
1番Aメロ
あたしが一番好きな季節とおんなじ名前の君が好き
あなたが一番好きなあの子とよく行く店には行きたくない
Aメロの出だしから、ぐっと掴まれるこの歌詞。誰もが相手の名前と何か思い出を重ねた経験があるはず。しかもこの場合、普通だと「冬があけると君を思い出す」とか「季節の訪れとともに」など使いがちですが、ハルと言う名前を連想させるにもこの1行でものすごいドラマがあります。また同じではなくおんなじと言う言葉を選ぶことで、2行目のワガママな女子感が際立ちます。
1番Bメロ
たった一人を選べないなんてあなたはかわいそうな人ね
でもたった一人に選ばれないなんてあたしもかわいそうな人だわ
こんなにも似た言葉を並べながらこんなにも意味が違ってしまう2行がかつてあったでしょうか…でもは文章でも歌詞でも逆説的に使いやすいのですが、この場合は大正解の使い方。しかしとかだけどではダメで、でもを選ぶことで先ほどAメロに出てきたワガママな女子感がそのまま伝わってきます。
ここからサビに入ってくるのですが、その先の解釈はみなさん各々感じてください。
編曲・伴奏がすごい
イントロはギターのアルペジオから入るのですが、ぱっと聞きそこまで難しいことをしてるようには聞こえないのですが、ギタリストの呼吸が聞こえるのではないかと言う緊張感があります。指が弦にあたり弾ける音も含めてとにかく空気感が凄くてこれはテクニックだけではまかなえるものではありません。そして終始この左チャンネルでなっているアコギは切れることがなく、おそらくほぼ一発撮りなのではないかと思います。
一発撮りと言えば、1サビ前のドラムが2、4でハイハットを叩いています。自分がアレンジするときは、サビでの広がり感を出すためこれは編集で消すのですが、何故残しているのか?おそらくドラム、ベース、アコギ、鍵盤の4点は一発撮りなのではないかと思います。それがこの切ない作品全体を取り巻く絶妙な緊張感を保っているような気がします。
またサビ開けのギターだかシンセリードなのだかわからないフレーズがありまして、これが素晴らしい。曲全体を通してメロディーは複雑な構成で作られているので、このサビ開けの凄くシンプルな(メジャーペンタしかつかってない)リードメロディーで全体的な親近感やまとめ感を出す役割をしています。ちなみにこのメロディー、アタックが凄く優しく弾かれているので最後まで疑問でしたがギターで、最後のサビのあとに一瞬だけスライドのフレーズが入っていてわかります。曲全体を通してなかなか歌詞は暗い内容なのですが、編曲や音色のよってそれが緩和されています。
そして歌が良い
そして歌を歌ってる上野優華さん。今回初見だったのですが、声・感情表現ともに素晴らしいです。現在22歳と大変若いのですが、あいみょんやAimerの影響もちろん年代的に見れますが、本当に色々な音楽を色々な方法で聞いてきた影響が垣間見得ます。例えば高音の張り方とかBritney Spearsなどに見られるエッジサウンド、90年代前半に多かったウィスパーボイスなど。またテクニックだけではもちろんなくて、女子っぽい歌詞を歌うときに少し鼻にかけて歌ったりと感情表現も豊かです。youtubeを台頭に簡単に欲しい情報が手に入る良い時代を台頭する歌手だと思います。
まとめ:聞くべきポイント
とりあえず、つらつら書きましたが聞いてみてください。なんとも言えない不思議な気持ち、感情を持つと思います。聞くべきポイントを纏めます。
・コレサワが書く独特な世界観
・関口シンゴの絶妙なアレンジ
・イントロから終始緊張感のあるアコギ
・おそらく一発撮りであろうバンド
・サビ開けのギターのシンプルなフレーズ
今夜あたしが泣いてもと言うミニアルバムに入っている曲ですが、wacciの橋口さんが楽曲提供した曲が収録されていたり、製作陣の温度感を見ても今後目が離せないアーティストになると思います。