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New Masterpiece in KYOTOができるまで (2008-2017)

▶︎〈New Masterpiece〉は今月末、京都・外でイベントを開催いたします。本レーベルはもともと、2013年7月に東京と京都の二箇所で開催したWOODMAN『One Loop Beyond』のリリパから発展・設立されたレーベルでして、11年経って同じタイトルで関西、ひいては京都で開催できるとは思ってもみませんでした。というわけで、今回のイベントに行き着くまでの経緯をまとめてみました。
▶︎客として行ったイベントは▷、主催したイベントは◉として分けています。


①▷2008.9.13『セプテンバー9月』@spica

▶︎まだまだ一般的ではなかったネットレーベル〈Maltine Records〉のメンバーが初めて顔を合わせるイベントが決定、当時tomad社長がまだ横浜の奥の地域に住んでいた高校生で、彼以外の出演者が関西在住だった関係で京都での開催。そこで社長が東京に来るたびお世話になってたシェアハウスのバンドマン連中を中心とした数名とともにハイエースに乗って遠征、私もそれについて行きました。出演はtofubeats、imdkm、tomad、そしてimoutoid。
▶︎一日日帰りの強行スケジュールの上開催は昼だったため、道中はしゃぎ過ぎて寝られず、逆にイベント中にみんな船漕いでた記憶があります。

▶︎imoutoidは2009年4月に逝去、残り3人は言わずもがな活躍中です。
「データでDJやるなんてディスクジョッキーとは言えない!」「オタクのガキどもが萌えアニメを適当にサンプリングした音楽をタダで配ってインディーレーベル気取りなんて〜」とかなんとか言われていた時代でしたが、その後彼らの主催するパーティーは音楽という1ジャンルを超え、何か新しい事が起こりそうな空気に満ち溢れていました。干支一回り経って今現在、もはやその空気すら技術やら何やらが頭の上を軽々飛び越えていきました。
▶︎この時期は〈Maltine Records〉のジャケをちょくちょくやらせてもらってたんですが、そのひとつが2007年のマスター航太さんのEPで、そこからcafe la siestaと縁が出来ます。


②▷2011.12.10『広い世界』@METRO


▶︎Rei Harakamiが7月に急逝、その"お誕生会"として企画されたイベントが、(単身では)関西初遠征となりました。電子音楽の始祖のひとり・大野松雄を師匠に持ち、テクノやエレクトロニカだけでなくロックミュージシャンにも多く関わっていたハラカミ氏のメモリアルイベントが結果、東京とは違う界隈総動員の集いになっていたのが印象的でした。
▶︎あとAUTORAはもっと活動を観たかった。止まってから10年近くになりそうですし、バンドセットの2ndは公式に配信してほしいものです。

▶︎この前後、909stateに案内され、叡山電車に乗り『けいおん!』の背景のモデルになった京都造形大キャンパスに行きます。レイ・ハラカミの出身大学としても有名ですが、入ったらヤノベケンジの巨大な展示に圧倒されました。叡山電車・出町柳駅近くの桝形商店街は『けいおん!』のスタッフがその後『たまこまーけっと』というアニメを制作し、舞台のモデルとして選びますが、それは2年後。
▶︎レイ・ハラカミをはじめ、竹村延和、サワサキヨシヒロ、高木正勝…兼ねてより電子音楽/エレクトロニカ(と、その名のつく前のフロア向きでは無いテクノ)では関西…ことさら京都には流行と独特な距離を置きつつ活動するアーティストが多いと常々感じていましたが、単身関西に行ってみると根付いているカルチャーが違う。大阪も京都もその他の都市もまた全然違う(どう違うのかは本文と書きたい事が違ってくるので省きますが…)と感じ、たびたび足を運ぶようになります。
▶︎この『広い世界』で同じく来客していた初めてtanaka scatに会うんですが、909や沖縄のヘントナー大佐など同世代でコツコツテクノを作ってる人とやりとりする機会が多くなり、せっかく自分はジャケ周りなど出来るのだしレーベルでもやったほうがいいんじゃないかしら…と思い始めます。


③◉2013.7.24-27

a◉7.24『New Masterpiece 京都編』@cafe la siesta

▶︎2013年にWOODMANのCDアルバム『One Loop Beyond』を自主制作で出す事になり、7月6日に東京でリリパを開催していたのですが、その準備中にWOODMANの関西行きが決まりそれなら同行しようと企画。氏の交流から、RUBYORLAさんとYabemilkさんをお迎えしました。
▶︎当日は祇園祭の真っ只中で、時間の読み違いで遅刻した上たどり着くのが思ったより大変だった記憶があります。あとTANZMUZIKの御二人が来客して大変恐縮しました。

会場外からWOODMANごしに見るシエスタ店内

▶︎WOODMANは翌日25日に大阪心斎橋のatmosphäre(アトモスファーレ)で自主企画を主催、27日にはnaminohana recordsのインベさんと徳島に渡りtxalaparta(チャラパルタ)でライヴをしています。
▶︎この"New Masterpiece"というタイトルがそのままレーベル名に流用、この日(と徳島)のライブセットは秋にリリース。その後WOODMANの活動休止時には、RUBYORLAさんYabemilkさん御二方ともに『Warrior Angel 3』シリーズにご参加いただいています。


b◉7.26『HANAZAWA KNIGHTSCOOP』@cafe la siesta

▶︎せっかく関西で何かやるので、24日にお誘いできなかった909stateと何かsiestaでやろうとした企画。同じ〈TRANSONIC〉ファンで独自の活動をしていたAsohgiさんと、909の推薦でDoremimateさん、ちょうど歌舞伎を観に来ていた半蔵商店(tokyo kabuki boys)が出演。
▶︎909が作って来てくれた牛モツ煮込みを食べすぎて猛烈にお腹壊した事ぐらいしか思い出せないけど、タイトルは今でもめっちゃお気に入り。


④▶︎2013.12.9-11

a▷12.9『広い世界3』@METRO

▶︎岸田繁や二階堂和美の出演もトピックがあったのだけど、自分にとってはなんと言ってもTANZMUZIK実質最後のライブに尽きます。1st『SINSEKAI』のラストを飾る「LAND OF TAIRIN」一曲のみだったんですが、それでもすごかった。山本精一さんはハラカミ氏の愛用していたSC-88Proを使用したテクノ音源で、このあとインストアルバムを何枚か発表してるけどどれとも違うテイストでした。あの音源また聴きたいけどどこかで録音して収録されてないもんなのかしら。
▶︎2010sのはじめ3年に渡ってこのイベントが開催されていた事は日本のエレクトロニック・ミュージックにおいてとても重要であったと思いますし、この点において主催のRUBYORLAさんはもうちょっと評価されるべきでしょう。

お誕生会なのでケーキを用意、ロウソク点火のコーナーがありました。
TANZMUZIKの勇姿。わかりにくいけど右にオキヒデさんが居ます。

▶︎『広い世界』シリーズはこれが最後ですが、翌年春にAUTORA / ARM / suzukiski / metome(と、DJにBIOMAN)というメンツでメトロでライブを開催してて、それも観たかったですね。AUTORAが止まってもspeedometerはコンスタントに活動が続いており、2020年にmetome / 浦朋恵とスプリットアルバムを出すのですがそれもAUTORAの続編感がありいい作品です。


b◉12.10 『HANAZAWA marketplace』@voxxn cafe

▶︎909stateとの共催。自分からはYPYこと日野浩志郎さんを、909は当時Maltineから作品を出していたシャルロさんをブッキング。
▶︎当時voxxn cafeの2階にゲストルームがあり、泊まらせてもらったんだけどどういう経緯だったのか全く思い出せない…ジンジャーライスがめっちゃ美味かった思い出。HANAZAWAシリーズはもう1回ぐらいやってもよかった。

▶︎この後2014年の5月にも大阪でスチャダラ野外イベント+関西コミティア出展ついでに京都で過ごしてたみたいです。あと8月にも大阪→伊勢行ったような…この時期よく関西行ってたんだな。


⑤▶︎2014.11.14-17

a▷11.14『Scarlatti Goes Electro Japan Tour』@Blue Eyes

私がデザインした当時のフライヤー

▶︎17世紀の音楽家Domenico Scarlattiの音楽をPerrey&Kingsleyのような電子音楽でカヴァーするというコンセプトのフランス人ユニットのLPリリースを岸野雄一さんが企画、"ジャーマンロックの日本盤風の帯"と、ツアーのフライヤーデザインを担当したご縁で京都ツアーに勝手に同行。
▶︎終了後に岸野さんが「ヒタチ君、(当時自分が描いてた創作バンド漫画)「ざつおん」持ってない?」と聞かれて「何故?」と思ったらなんと前述『たまこまーけっと』山田尚子監督が来場されてて、本はホテルに置き忘れて出て来てしまったのでした。同アニメの劇伴をマニュアル・オブ・エラーズの面々が担当してた縁で来られており、実は若い頃に岸野さんらのバンド・Space PonchのCDを愛聴してたそうな(ただし、アニメにマニュエラが起用された経緯はそれとは関係なく偶然とのこと)。確かにSGEの音楽にはSpace Ponchを感じました。

ヒゲの未亡人
scarlatti goes electro


b▷11.14『アニメトロ』@METRO

▶︎ちょうどSGEのイベントの夜にカラテクノがゲスト出演すると聞いていたため、打ち上げ参加後にメトロに行きました。ヒゲの未亡人と合わせて、映像+演者が舞い踊るパフォーマンスのライブを2イベント連続で観る。


c▷11.15『ソノシート凶暴につき 京都篇』@喫茶ゆすらご

▶︎岡村みどりさんと足立守正さんによる、最高なタイトルのトークイベント。後に伊集院光のラジオ番組でもおなじみになるみんとりさんがソノシートを語る内容も最高だったのですが、付き添いで来ていたSGEの二人は日本語がさっぱりわからないため、「これはどういう意味なんですか?」と(主に同行者が)やたら聞かれた思い出。

▶︎この時は泊まっていたドミトリーが自転車を貸してくれたため、チャリで坂を登り会場のゆすらごへ行ったのを覚えています。この後帰りにvoxxn cafeに寄り、たまたまそこで呑んでたDJぎゃさんと話したような。
▶︎翌日神戸に向かい、スペースオーでYabemilkさんが主催する"とんぼせんせい"の個展のパーティーに行きました。


⑥▷2017.4.1-2『虹釜太郎のパリペキン未解決事件』(2days)@外

▶︎前年にWOODMANが急逝、氏がカセットテープで遺した音源をデータ・アーカイブ化するサブレーベル<WOOD TAPE ARCHIVES>を本年1月からスタート。異端のバンド・空間現代が京都に設けたライブスペース『外』での虹釜太郎さんのレクチャー2daysに「<WOOD TAPE ARCHIVES>について話してくれ」と声をかけられて同行。交通費の都合などあってtakyaさんに車を用意してもらい、さらにヤシュククさんらを巻き込み、京都→神戸→伊勢と4泊5日の関西ツアー・サーキットに。4泊中全て夜にイベントが控えていたため、移動の無かった2日目の午前中以外はそんなにゆっくり出来なかった記憶があります。2日目の午前中は御所を散歩しました。

buffalomckeeと虹釜さん
こっちは打ち上げ時の写真

▶︎このうち神戸でのbonnounomukuroとの共催イベントで、後に何度か付き合いが続くMolderとも邂逅を果たします。


◉EVENT INFORMATION

"New Masterpiece in KYOTO"
takya『Domestic Science』Release Party
2024.11.30(Sat) open16:30/start17:00 @京都・外
ADV: ¥2,500./DOOR: ¥3,000.-

DJ: takya / showgunn
LIVE: RUBYORLA / AcidGelge as 909state / Molder / Sekiguchi Satoru
OPENING DJ: WOOD TAPE ARCHIVES

▶︎というわけで、冒頭に書いた通り関西での開催は実に11年ぶりですが、〈New Masterpiece〉をレーベル名にしてからは初開催です(ややこしい)。takyaさんのCDリリパなので御本人はもちろん、9月に開催した東京でのリリパに出演したshowgunnとAcidGelgeこと909state、そしてEARTH 0からセキグチサトル君に続けて出ていただきます(特にshowgunnは関西では初のDJらしい)。
▶︎さらに関西からは、こちらも前述の通り2013年のWOODMANとの共催イベントに出てもらっていたRUBYORLAさんを11年ぶりに、2017年以来お世話になっているMolderさんも満を持してご出演いただきます。オープニングにはWOODMANの曲を少しだけかける予定です。お楽しみに。

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