190916ゼミ生紹介2

1人だけど1人じゃない ~「イバーランドの県道」制作ノート3~

この記事では、「イバーランドの県道」を制作した過程を書いてみたいと思います。3回目になります。前回の2回目の記事はこちらから↓。

【前回(2回目)のあらすじ】

各市町村擬人化のキャラを、「プロイバゼミ」「プロラキゼミ」の男女逆転のゼミに所属するようにして、文武のバランスもつけた。設定はとりあえず終了。しかし、この設定データを体現したキャラを、どのように形にしていけばいいだろう? 自分で描く? とはいえ、90キャラも1から描いていては、どのくらい時間がかかることやら…。

1、絵師への外注

結論から言いますと、各キャラの絵については、イラストレーターさんを探して、外注(外部注文)することにしました。自分ですべて描くのは時間的技術的に厳しい、それならば予算内で収まる範囲で、イラストの得意な方に描いていただこう、という方針です。

プロイバゼミ・プロラキゼミと2つあるので、それぞれ違うイラストレーターさんにお願いしました。男女逆転でもあり、違う画風のキャラのほうが、一目でどちらのゼミかがわかるからです。

外注先の選び方ですが、これは「好み」です。読者のターゲットにもよると思いますが、どちらかというと幅広い年齢に受け入れやすいような画風をお持ちの方を探しました。「学習漫画」でも使えそうな感じ、と言えば良いでしょうか。もちろんこのSNS全盛の時代、それぞれポートフォリオや実績をお持ちのイラストレーターさんが多いので、色々なサイトや個人のホームページなどを検索し、それらを眺めて決めました。

もちろん「価格」も大事です。何しろ90キャラです。仮に1キャラ1万円もしたら、それだけで90万円。そんな大それた金額は使えないわけで…(詳細の価格などは、この記事では書きません)。

さて、外注となると「素材」が必要になります。

これは描く方ができるだけ迷わないように、注文する側が用意します。まずは「設定」。どんなキャラかがわかるようなもの↓。

190916外注設定1

190916外注設定2

「性別」「好きなもの」「部活・サークル活動」「服・小物(希望)」「髪型」「髪色」「表情」「背景」「背景色」「イメージ・モデル」…。このあたりを設定して、伝えました。もちろん、外注の仕方は千差万別で、どこまで設定するかは人それぞれとは思います。「漠然とこんな感じで!」と丸投げするやり方から、「顔の大きさはこのぐらいで…」「色の配分は…」と詳しく設定するやり方まで。あまり細かいと描きにくいでしょうし、あまりに漠然としているとこれまた描きにくいでしょう。

次に「素材(材料)」です。ただし、これはあくまでイメージで、本当にそっくりに作られると肖像権的な問題もあると思いますので、「似過ぎずにラフを優先」という指示をしました。「ラフ」は、プロイバゼミのキャラをお願いした時には、自筆のものをスキャンして用意しました。プロラキゼミのキャラをお願いした時には、あえてつけずに、イメージのモデルの画像などだけにしました。

…ラフですからラクガキレベルですが、これが自筆素材の例です(いま見返しても、こ、これは…という感じですが)↓。

ラフ1ミト

「好文のミト」野球部、のキャラですね。モデルはジャイアンツの高橋由伸さん(元監督、と言うべきか)でお願いします、と伝えました。

そして何日か後に、ラフが送られてくるので、修正するところは修正、希望があれば希望を伝えて、OKが出たら着色して仕上げに進めていただく。最終的には検品をして、納品完了です。仕上がりはこちら!↓。

1好文のミト

あの私の描いたラクガキレベル(泣)の素材から、ここまで奇麗に仕上げていただけるのは、さすがのお仕事! ちなみにバットは、水戸市(ミト)は「梅」の街でもあるので、「梅バット」という仕様にしました。310という数字は、もちろん「ミ・ト」です。

あと、詳細はここでは書きませんが、外注するルートによって、直接間接を問わず、契約書を交わしたり、価格交渉をしたり、納期を決めたりします。外注する専用のサイトを使えば、仲介してくれるので楽で安心な面もありますが、仲介料が発生します(つまり、高くなる)。直接依頼をすれば、仲介料はありませんが、契約書・価格交渉・納期などの相談は自分でしなければいけません。どちらにしても、ルーズな人はルーズで(発注側・受注側いずれも)、しっかりしている人はしっかりしていると思いますので、双方で取り決めをして、進捗管理をしつつ進める必要があるかと…。

90キャラ分なので、原則「1回に6キャラ」「アイコンレベルのイラスト」で描いて頂きました。後から、ゼミやキャラを説明する「漫画」なども追加発注しました。2人のイラストレーターさんに同時に頼んだわけではなくて、まずプロイバゼミ、次にプロラキゼミ、と進めていきました。

描いて頂いたお2人には、本当にお世話になりました。足らない部分をご指摘頂いたり、ご提案して頂いたりしたので、スムーズに進めることができました。この場をお借りして、お礼申し上げます。

2、自己紹介→インタビュー

さて、このように外注してキャラを描いて頂くと、描いて頂いている間は、注文した側は時間ができるわけです。その間に、全体の構成を考えていきました。もちろん1からではなく大枠は決めていましたが、進行によって(形ができてくる中で)色々構成は変わっていくものです。

はじめは、各キャラが自分の出身地の説明(プレゼン)をする形にしようと思いました。「町学校」の「ゼミ」、という設定なので、研究発表をする形でもいいかなと。しかし、少し堅苦しい感じになるので、「ゼミ生の自己紹介」という形をとりました。こんな感じで↓。

190916ゼミ生紹介1

ところが、後から「男女逆転」で2つのゼミを作ったので、何とか整合性をつけなければいけません。そこで「プロイバ×プロラキ合同ゼミ@44×2」という形で、2つのゼミが合同でゼミを行う、という設定にしました。

となると、各ゼミでゼミ生が自己紹介をする形よりは、同じ市町村出身のゼミ生を並べて、それぞれ特徴を説明する形のほうがいいかな?と考え直しました。つまり、「ゼミ生へのインタビュー形式」です↓。

190916ゼミ生紹介2

こんな感じです。

「出身地ゆかりのもので好きなもの」「忘れられないスポット・イベント」とすることで、間接的に出身地の市町村の紹介をするとともに、「(住んでいた時にあった)忘れられないスポット・イベント」とすることで、もしその場所やイベントが無くなったとしても違和感がないようにしました。…けっこう、観光名所とかイベントとかって、いつのまにか無くなったりしますからね…(泣)

本当は「ここだけのディープな場所」とか、知る人ぞ知るのネタにしても良かったのですが、ターゲットを「初めて茨城県の市町村のことを知る人」にしましたので、あまり内輪ネタはせずに、直球ストレートで有名なものを挙げています。…とはいえ、ネタが少ない市町村もあるもので、調べるのに苦労したりしました。

これらはあくまで私のチョイス、コンテンツ上ではそのゼミ生が言っていることなので、「もっと有名なもの、あるよ!」とか、知られていないものもあったりするのでしょうが、そこは読者が「自分で調べてください」というところです。もしこの作品がきっかけとなって、実際に調べたりして頂ければ、制作者の狙い通り、万々歳です。

と、このように「ゼミ生が出身の市町村を紹介する」の形でコンテンツを作っていったのですが、だんだんと不安が芽生えてきました。

「これだけで、各市町村の魅力、伝わる?」
「ただ、擬人化イラストを添えて、各市町村を紹介するだけ?」

という不安です。

王道の手法で言えば、このゼミ生たちを登場させて「漫画」にする手法が考えられます。私も最初はそう考えていました。四コマ漫画で各地域別に…。実際にセリフ回しまで考えました(その設定の一部)↓。

190916四コマ設定

ところが、キャラに加えて漫画も外注するとなると、当然さらにお金がかかります。何とか自分で作れる、漫画以外の手法はないものか…。

3、ゲームブックという活路

そこで考えたのが、ゲームブックという手法でした。

ゲームブック。バブル華やかな1980年代の徒花。狂い咲きに咲き乱れて、ゲーム機などのバージョンアップとともに忘れられていったジャンル…。

と思われている方もいるかもしれませんが、さにあらず。いまゲームブックは、電子書籍やゲームアプリなどの新たな媒体を得て、新たな地平へと立っているのです↓。

波刀風賢治さんの「護国記(幻想迷宮ゲームブック)」などは、その象徴と言ってもいいかもしれません。

また、オールドファンにはたまらない、ファイティング・ファンタジー(現代教養文庫)、スティーブ・ジャクソンさんとイアン・リヴィングストンさんの「火吹き山の魔法使い」のなども、今ではNINTENDO Switchでゲーム化されたりしています↓。

一応、知らない方向けに補足しますと、ゲームブックとは、簡単に言えば「読者が選択肢を選べる小説」のようなものです。主人公に変わって、「右の道、左の道、どっちに行く?」のような選択肢を選び、進んでいきます。

このゲームブックの手法を、ここまで作った市町村擬人化のコンテンツと合わせられないだろうか?と考えたわけです。

ただ単に紹介だけであれば、「ふーん、そう」で終わるところを、読者に実際にルートを選択させることで、その市町村を訪れる気持ちになるのでは?と考えました。もちろん、1つの市町村だけでなく、44市町村を訪れるようにするわけですから、サクサクと進ませる必要がある。となると、各市町村の記述は特徴的なもの1つにして、いくつかルートを選べるようにして…と、ゲームブックの制作意欲がふつふつと湧いてきました。

とはいえ、問題も山積みです。

ゲームブックを作るとなると、また設定が必要となる。ただのレポート? 冒険の旅? リアル脱出ゲーム? 何のために主人公は、茨城県を旅するのか?そもそもゲームブックを作るのに、どれくらい時間と労力がかかるのか?

さあ、どうしよう?

(次回につづく…)

4、1人だけど1人じゃない

いかがでしたでしょうか?

この記事では「イバーランドの県道」の制作過程について、イラストの外注、その際に必要だったもの、ゲームブックという手法などについて書いてみました。

イラストやデザインなどを外注するにあたっては、「イラスト 外注」「デザイン 外注」などで検索してみると、たくさん出てきます。個人のホームページなどから、直接依頼することもできます。いや、本当に便利な世の中になりましたね…。

これは私見ですが、それぞれこの世の中には、得意な分野や苦手な分野があるわけですから、得意な方に「外注」という形でお願いしてもいいのではないかと思います。その方がクオリティも上がりますし、他人の視点を入れることによって、独りよがりになることを防ぐ効果もあると思います。もちろん、価格の極端な交渉や無茶な要求、制作の丸投げなどによって、受注者を困惑させることは避けねばならないとは思いますが…。

なお、デザインについては、2019年9月13日の週刊スペリオール誌上から、西野杏さんの「戦うグラフィック。」という漫画が連載再開されていますので、広告系のデザインなどに興味のある方はぜひ。現役デザイナーさんの漫画ですので、こうやって世の中のデザインは作られていくんだ!と、とても参考になります↓。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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