『所属意識』のざっくり日本史
歴史はその切り口によって
いくらでも容貌を変えるものだが
抜けや誤解を恐れずに
ある視点で日本史を切ってみたい。
その視点とは『所属意識』である。
結論から言えば
『個人←→組織』のシーソーゲーム、
である。
範囲は、鎌倉時代〜現代とする。
鎌倉時代は鎌倉幕府によって、
土地の所有権が認められた時代。
いわゆる御恩と奉公。
室町時代、足利幕府になっても
その大枠は変わらない。
しかし、応仁の乱、戦国時代と
乱世が続くと実力主義、下剋上だ。
個人の能力で天下も取れる。
事実、豊臣秀吉は貧しい農民から
成り上がって天下統一を果たした。
《幕府→個人》
それを憂いて二度と戦国の世を
起きないように考えたのが
徳川家康と江戸幕府。
身分制度や幕藩体制を固めて
下剋上が起きないようにした。
《個人→幕府や藩》
時代が降り幕末となると、
いわゆる『脱藩』して
活躍しようとする浪人が増える。
ご存知、坂本龍馬もその一人。
そのうち大政奉還・明治維新。
武士は特権を奪われて
その多くが没落していく。
成り上がったのは
個人の商才で戦う商人たち。
《幕府や藩→個人》
しかし、徐々に近代国家が整い
大正デモクラシーなどはあったが
『総力戦体制』に移行していく。
天皇主権の名の下、みんな国家に
所属して戦うことになる。
《個人→国家》
戦後、日本国憲法発布、施行。
国家の縛りは、弱まった。
財閥解体、農地改革。
個人が自由に動けるようになる。
《国家→個人》
ところが、自由奔放にはならない。
冷戦体制・高度経済成長が進み
人々は国家に変わる
所属意識を求めるようになる。
経済大国ニッポンを
支えたのは、終身雇用の会社だ。
《個人→会社》
24時間タタカエマスカ、と
煽られた一億総中流の企業戦士は
個人より会社の論理を優先して、
働きに働いた。
しかし、バブル崩壊、リーマン、
震災、コロナと災難が襲い…
ついに会社は、終身雇用を
維持できなくなってきた。
《会社→個人?》
今ここ、なのである。
まとめてみると
《幕府→(戦国)個人→幕府や藩→(明治維新)個人→国家→(戦後)個人→会社→個人?》となる。
最後に?をつけたのは、
このコロナ禍の乱世においても
まだまだ個人に滅私奉公の
忠誠を求める会社は多いからだ。
戦国、幕末、戦後のような
政治体制までもがガラッと変わる
ビビットな混乱期ではなく、
なんか生暖かい混乱期だからこそ
逆に個人主義にはなりきれず
何かに寄り添いたいという気持ちが
逆に強くなっている、かもしれない。
以上、所属意識の日本史。
『個人←→組織』のシーソーゲーム、
というお話でした。