奇禍を奇貨にする:「地域活性化起業人」制度
人口が減少する地方は、人材が見つかりにくい…!
いったいどこにいるんだ、人材は!
そう、叫びたくなる地方の方も
多いのではないでしょうか?
かと言って「地域おこし協力隊」の制度では
市町村が「雇う」(任用する)形になる。
地方に行く当事者としても、
ハードルが高い面があり、二の足を踏む。
市町村側も、国の財政上の補助はあるが、
どうしてもミスマッチなどのリスクはある…↓
どうにかして
「企業に雇われている人に、雇われたままで、
地域活性化のために働いてもらう」
そんな形は取れないのだろうか?
というようなニーズに応える制度が、
実はあるんですよ。
本記事は、この「地域活性化起業人」制度に
ついて書いてみます。
「地域活性化起業人」制度の概要は以下の通り。
はい、まず注目すべきは、
「民間企業が自治体に派遣する」
「企業との雇用関係を保ちつつ、
地域活性化の業務を行う」
という点ですね。
これならば、派遣される当人は
「民間企業を辞めず」期間限定で行ける。
受け入れ自治体側も、
「自分たちが雇用(丸抱え)するわけではない」
と、ある程度、心理的負担が減るでしょう。
財政的な負担も、減ります。
国、つまり総務省が、
『派遣元企業に対する負担金など
起業人の受入に要する経費を
上限額 年間560万円/人』
などを支援してくれるんです↓
つまり派遣元の民間企業にとっては、
「560万までの人件費の負担」が無くなる。
受け入れ側の団体にとっても、
「人件費を払わずにノウハウの移転」が可能。
絵に描いたような、ウインウイン!
ということでこの制度によって
近年「地域活性化起業人」として
着任している人が、増えてきています。
平成26年度(2014年)には22人
(受け入れ自治体は17)。これが
令和3年度(2021年)には395人に
(受け入れ自治体は258)増加!
ちなみに制度が開始した時は、
『地域おこし企業人』という名称でした。
これが令和3年度から
『地域活性化起業人』という名称に変わった。
この名称変更に、
「地域おこし協力隊」とはまた違った
制度なんですよ、と周知する意思を感じます。
企業から派遣されるのに、あえて
「起業人」とつけているところに、
「主体となって『起こして』ください!」
「あなたが『主人公』ですよ!」
というメッセージ性を込めたように、
私は感じるのです。
…ただ、ですね。
22人から395人、とだけ書いたのは、
これは、数字のマジック。
この制度、新設以来、うまくいってきたのか、
というと、必ずしもそうではなさそうです。
平成26年度から令和元年度までの
活用人数の推移を見てみます。
22→28→37→57→70→95(人)
となっています。
…そう、実は、国の予算で6年間もやって、
100人にも到達してなかったんです。
何が良くなかったのか?
実際に、2021年5月から、
三重県の玉城町に「起業人」として着任した
面白法人カヤックに所属する
名取良樹さんのインタビュー記事から引用します↓
(ここから引用)
(引用終わり)
最初は「お断り」されていたんですね。
…うーん、人員整理、肩たたきシステム。
率直な表現ですが、そういう側面も
確かに考えられます。
三大都市圏に住み、勤務している人から見れば
「地方」へと向かうのは、
「左遷」のような捉え方もされるかもしれない。
しかし、この潮目が変わったのだ!と
名取さんは続けます。
(ここから引用)
(引用終わり)
※引用記事中のSMOUT(スマウト)とは
名取さんが所属する面白法人カヤックが運営する
「移住スカウトサービス」のことです↓
そう、2020年~現在2022年まで
ずっと続いている「コロナ禍」。
これにより、潮目がガラリと変わった。
「必ずしも都会で働くことに
固執することはないのではないか…?」
「都会で働くメリットとデメリットは…?」
そう考える人が増えてきたんです。
もちろん、制度の名称等を変えた影響も
あるかもしれませんが、
令和元年度(2019年度)から
令和3年度(2021年度)の
活用人数は、急激に伸びています。
◆95→148→395(人)
何と、6年で100人にも満たなかった人数が、
半分の3年で400人近く、約四倍になっている!
「都会→地方への潮の流れ」ができつつある。
そういうことを、この制度の人数の
推移の変化からも感じることができるのです。
最後に、まとめましょう。
地方でこそ輝ける人材、
地方でこそ開拓できるビジネス、
そういうものがある、と思います。
コロナ禍という「奇禍」、
「思いがけない災難」を
「奇貨」すなわち
「思いがけない利益」へと変えていく。
都会に集中していた人材が、
その培ってきたスキルや開拓精神を
地方のために活かし始めている…。
しかも「会社を捨てる」
「都会を捨てる」のではなく、期間限定。
二拠点生活、いいところどりのように
どちらの良さも活かしながら
好循環で回していく…。
そういうことを行うために、
この『地域活性化起業人』制度には
企業側も自治体側も
検討すべき要素が多々あるように思います。
この流れに「気づいた」人が
増えている昨今、
今後もおそらく「地域活性化起業人」の数は
増えていくのではないでしょうか?
※「スポーツクラブ ルネサンス」の事例はこちら↓
読者の皆様の町では、いかがですか?
もし読者の皆様自身が、
「起業人」として地方に行ってくれ、
と言われたら、どうしますか?