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ジンバブエは、アフリカの国の一つです。
海のない内陸国で、首都はハラレ。
1980年に生まれた、比較的新しい国です。
観光地としては、ザンビアとの国境にある
世界遺産「ヴィクトリアの滝」などが有名です。

位置的には南アフリカ共和国の北東のあたり。
東にモザンビークやマダガスカル、
西にボツワナ、北にザンビア、
そのあたり(ざっくり言えばアフリカ大陸の南)。

日本とは遠く離れた、なじみの薄い国…。

しかし「ジンバブエ」の名を聞いたことが
ある人も多いのではないでしょうか。
「ハイパーインフレ」が起こった国として。

本記事では、ジンバブエのインフレと
その結末について、書いてみます。

…最近(記事執筆2022年7月時点)、
「円安」が進んでいますよね。
円の価値が、下がる。安くなっている。

わかりやすく極端な例で書きますと、
仮に1ドル=100円が、
1ドル=10,000円になったとする。
この場合「円安になった」と表現します。
100円出せば1ドルが買えていたのが、
10,000円出さないと1ドルが買えなくなる。
逆に言えば、1ドルあれば100円だったのが、
1ドルあれば10,000円になる。
円の価値が、安い。すなわち、円安です。

1ドル分の石油を買うのに、
100円で良かったのが、10,000円必要になる。
輸入するのは、損ですよね。
円安は輸入するのに都合が悪いんです。
だから今、輸入製品を中心に、物価高です。

逆に輸出するのは、お得ですよね。
日本の電化製品がもし100ドルで売れたとすると、
100ドル=10,000円、一万円だったのが
100ドル=1,000,000円、百万円になる。

と、かなり極端な例を書いてしまいました。
いくら「円安」と言っても、
1ドル=10,000円というのは、まずありえない。

…しかしですね、ジンバブエでは
こんなもんじゃないレベルの壮絶な
「ジンバブエ・ドル安」が起こった
のです。

歴史を見てみましょう。

ジンバブエはイギリスの植民地でした。
お隣の南アフリカ共和国と同じく、
「ローデシア」と呼ばれていた。

セシル=ローズという、植民地支配の
申し子のような人がいましてね。

『できることなら私は
夜空に浮かぶ星さえも併合したい』


そんなことを言ってしまう植民地政治家。
「ローズの家」という意味で、ローデシア。
南アフリカ一帯は、彼個人の持ち物でした。
ローズのお墓は、今のジンバブエにあります。

しかし第二次世界大戦が終わりますと、
1960年が「アフリカの年」と呼ばれたように
各植民地が独立へと動き出します。
ジンバブエも、例外ではありません。
長く独立戦争(紛争)が続きましたが、
1980年には共和国が成立します。

初代大統領、カナーン・バナナ。
初代首相、ロバート・ムガベ。

1987年からは議院内閣制が廃止され、
大統領に権限が集中します。
バナナさんが大統領から退いて、
ムガベさんが大統領に就任したんです。

最初は、良かった。
「ジンバブエの奇跡」などと言われましてね。
白人と黒人との融和政策を行い、
「アフリカでの黒人による国家建設のモデル」
とまで言われたんです。
ムガベ大統領は、お隣の南アフリカの有名な
「ネルソン・マンデラ」さんより
先に活躍した政治家なんです。

ところが、その後が、良くなかった。

2000年代に入ると、次第に白人に対して
不寛容な政策を行うようになります。
白人が所有する農場を強制収用!
2003年、イギリス連邦から脱退!

その間、貧富の差がどんどん拡大されていきます。
経済は悪化の一途をたどり、
インフレが凄まじく進行…。
そう、「ハイパーインフレ」が起きたのです。
自国の通貨、ジンバブエ・ドルの価値が
もう、地の底の底まで落ちてしまいます。

どれだけ「ジンバブエ・ドル安」だったのか?
わかりやすく円換算してみますと。

1980年の時点のレートで言えば、
1ジンバブエ・ドル=約324円。
しかし2008年の時点のレートでは
1ジンバブエ・ドル=約0.0000000000086円。

…ちょっと想像もつかないレベルですよね。
お金が、お金の役割を果たせていない。
インフレ末期には「100兆ジンバブエ・ドル札」
発行されるほどでした。

そこで、ジンバブエ政府はどうしたのか?
何回か「デノミネーション」つまり
通貨単位の変更(ここでは切り下げ)を行って
対応しようと四苦八苦したのですが、

ついには思い切った政策によって、
このハイパーインフレを強制的に
終了させることになります。

「もう、ジンバブエ・ドルは、使いません!」

そう、自国通貨を止めて、
「複数外貨制」を導入
したんです。
アメリカドルと南アフリカランドを使用する。
2009年に公務員の給料を
アメリカドルで支払い出しまして、
事実上、ジンバブエ・ドルの流通が停止。
2015年には、公式に自国通貨を廃止しました。

ムガベ大統領は、どうなったのか?

こんな大混乱が起こっていた時も、
ずっと続けて権力を握っていたんですね。
首相就任の1980年から考えると、実に37年!
超長期政権です。
しかしついに2017年、クーデタが起きてしまい、
彼は大統領を辞任することになります。
その二年後、2019年に死去。95歳でした。
(93歳まで権力を握っていたんですね…)

なお、お隣の南アフリカのマンデラ大統領は、
人種間の融和政策を進めていき、
一期だけ大統領を務めて、政界引退しております。
マンデラ大統領と、ムガベ大統領。
まさに対照的な二人、と言ってもいいでしょう。

まとめます。

ジンバブエでは、ハイパーインフレが起き、
ついには自国通貨を放棄することにまでなった。

これはフィクションではなく、
実際に世界で起こった出来事です。
ジンバブエだけでは、ない。
実は他の国でもハイパーインフレは起きています。

もちろん、日本の今の円安が、ただちに
ハイパーインフレにつながるかというと、
そんなことはないでしょう。
ですが、百%起きない、とも言いきれない。
実際に日本でも、戦後まもなくの1946年には
ハイパーインフレが起きた
ことがあるのですから…
(この時は「預金封鎖」などの荒技で
何とか乗り切りましたが)。

さて、読者の皆様におかれましては、
このような通貨への不安に対して
日々、備えていらっしゃるでしょうか?

私も恥ずかしながら、そんなに備えていない。
改めて本記事を書きながら
万一の事態にも備えておかなきゃな、と
思った次第です。
もし万一、ハイパーインフレが起きて、
1円=0.0000000000086ドルになった日には、
兆を超える円をかき集めて、ようやくやっと
86ドルの価値、になりますので…。

以上、ジンバブエのハイパーインフレの記事でした。

余談ながら、ムガベ大統領の後を継いだ
ムナンガグワ第三代大統領は、
政治的な抜け目のなさ、獲物を狙う冷酷さから
「ワニ」というあだ名があるそうです。
ぜひ自国の経済発展のために、
目を光らせてほしいですね。

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