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スパイス、コットン、世界帝国の覇権争い

日本が江戸時代の頃、実は世界は覇権争い中

…江戸時代と言えば、
「オランダと中国だけと貿易をしていた」
など、いわゆる『鎖国』のイメージが強い。

そのため、当時の世界の
「世界各国のビジネスはどうだったのか?」
という部分が抜け落ちがち
、なんですね。

でも、考えてみれば。

◆戦国時代の頃、
「ポルトガル人」「スペイン人」が来日し
鉄砲やキリスト教を伝えた。

◆江戸時代には鎖国をして、
「オランダ人」と貿易を続けていた。

◆幕末には、ぺリーの「黒船来航」、
「アメリカ」「ロシア」
「イギリス」「フランス」
など
欧米列強が、日本に開国を迫ってきた。

…なんか登場する国が変わってません?
ポルトガル・スペイン・オランダは?

本記事では、この頃の
「世界の覇権争い」について、
「お金やビジネス」の視点から書いてみます。

①スペインの「借金」(16世紀)

16世紀、スペインは世界最強の世界帝国を
築きつつありました。

「新大陸」にばかでかい植民地を築き上げ
スペイン~メキシコ~フィリピン、
「西回りルート」で、アジアにやってきた↓

一方、スペインのお隣の国、ポルトガルは
喜望峰~インド~東南アジアの方向へ。
「東回りルート」を確立します。

1580年、スペインはポルトガルを併合。
これにより世界中の植民地を手に入れた。
「太陽の没することのない帝国」!↓

…ところが、ですね。

この頃のスペインの人たち、
ラテンのノリと言いますか、
「ドン・キホーテ」のような豪傑肌。
戦闘力はめっちゃ高いんですが、
とにかく金使いが、荒い。
実はその財政は「火の車」だった。

海外ではブイブイ言わせていたスペインも、
ヨーロッパ内では、戦争に次ぐ戦争です。
フランスとの「イタリア戦争」。
オスマン・トルコ帝国との海戦。
対オランダの独立戦争。イギリスとの戦争…。

戦争には、お金がかかります。
フッガー家などの大富豪から借金をします。
借金は、返さなければなりません。
新大陸から奪った、膨大な量の「銀」の多くが
借金返済のために消えた、と言われます。

1557年、スペイン国王フェリペ二世は早くも
「お金、返せません」と破産宣告。
その後もお金が無くなるたびに、破産宣告…。
そう、光り輝く世界帝国スペインの内実は、
「びんぼっちゃま」のように貧しかった。

そのうち、オランダ(ネーデルラント)が
スペインから独立
します。
ユダヤ商人、イスラーム商人たちを迫害して、
ビジネス界で嫌われていたのもまずかった。
新大陸の「銀」も、採りすぎで、
だんだん少なくなっていく。

こうして17世紀に、スペインは没落…。
代わりに覇権を握ったのが、
スペインから独立したオランダなのでした。

②オランダの「香辛料ビジネス」(17世紀)

オランダは、堅実です。

お金を「増やす」ことを考えます。
「銀行」や「金融」を盛んにする。
金融ネットワークの中心地、
アムステルダムは、大都会へと発展する。

あと「東インド会社」も作ります。
組織的・計画的にお金を稼ぎ、貯める。

ビジネスの種の一つは、アジアの香辛料。
大航海時代の頃のヨーロッパでは、
香辛料は黄金にも等しい価値がありました。

例えば「ナツメグ」

現代ではハンバーグの香りづけのイメージ。
ところが、16世紀の頃のイギリスでは、
ナツメグの袋がたった一袋あるだけで
一生を裕福に暮らせる財産ができたそうです。

オランダは「香料諸島」と呼ばれる
モルッカ諸島を占領していきます。
現在の、インドネシアの一部です。
(インドネシアは、オランダの植民地でした)

さて1623年、この諸島の一つ、アンボン島で
「アンボイナ事件」が起きました。

七蔵、という日本人が関与していた。

この頃の日本、江戸幕府が大名の改易をして、
多数の浪人が発生しています。
ある者は「大坂の陣」や
「島原・天草一揆」に参加しましたが、
ある者は、海外に高飛びしました。

七蔵は、そんな浪人の一人。
イギリスの東インド会社に、雇われていた。

ある日、オランダの東インド会社の人と
「この要塞、凄いっスね~!
どれくらい高い城壁なんスか?
兵士が何人いるんスか?」などと
気軽に雑談をした、と言います。

…これが、惨劇の始まりです。
スパイスの島でのスパイ疑惑。

オランダ東インド会社は、
七蔵を「イギリスのスパイだ!」と疑い、
彼を捕らえ、拷問にかけました。
「自白」を強要される。
…すべてはイギリス東インド会社の仕業だ、と。

激怒したオランダ東インド会社側は、
イギリス商館を襲撃して、30人あまりを捕縛。
イギリス人たち9人他多数を斬首してしまう。

…ひィ、こんな怖いところ、いられないよ!

イギリスは東南アジアの
香辛料貿易から撤退
します。

③イギリスの「綿花ビジネス」(18世紀)

しょうがないのでイギリスは、
インドにて自国商品を売ろうとしました。
でも主力商品は「ウール(毛織物)」。
暑い国で毛織物なんて売れない…。

逆にイギリスはインドにて
「コットン(綿織物)」を見つけました。
快適な肌触り、汗もよく吸ってくれる。

これが、反撃の「糸口」に。

衣食住の「衣」ですから、みんな欲しがる。
ヨーロッパ中で、大ブームに。
「カリカット」の港には輸出用綿織物があふれ、
なまって「キャラコ」と呼ばれました。

そのうち、イギリスは考えます。

「…材料の綿花だけ買って、自分たちで
綿織物をつくったほうが、儲かるんじゃね?」

はい、産業革命のスタート、ですね!
低コストで楽に綿織物を作るには
機械で作った方がいい。
必要は発明の母。紡績機、爆誕!

インドからの綿花じゃ足りなくなり
北米の南部に「綿花プランテーション」設立。
労働力は? アフリカから黒人奴隷。
(これが後に、南北戦争の元にもなります)

こうして産業革命を経て、生産・加工を
ものすごいサイクルで回し始めたイギリス!
手作業の国々、とても対抗できない。

産業革命の発明「蒸気機関」まで手に入れて、
その財力で、最新鋭の軍備も増強。
フランスなど列強各国との戦争にも勝ち残り、
世界の「大英帝国」になっていくのでした。

…その一方、オランダは。

香辛料ビジネスの人気が下落、
儲からなくなります。
みんな外の世界に行けるようになったんで
飽きられてきたんでしょうか?
17世紀にはイギリスとの英蘭戦争に敗北。
18世紀には、次第に衰退していきました…。

追い出したイギリスにリベンジされたのです。
七蔵、雑談で世界史を動かした男!

以上、かなり主観的に取捨選択して、
はしょった略史でした。
最後に、まとめます。

◆15世紀:香辛料を追い求めた「大航海時代」
◆16世紀:豪快で強いがお金に無頓着なスペイン
◆17世紀:資産運用のオランダ、アンボイナ事件
◆18世紀:綿花ビジネスで百倍返ししたイギリス

いつの世も「お金の使い方」と
「売れる商品」は、大事なものですね。

読者の皆様のビジネスは、なんですか?
…雑談して、スパイと疑われていませんか?

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