所属意識から日本史を斬ると…
ある視点から、
ざっくりと日本史を斬ってみたい。
その視点とは『所属意識』である。
結論から言おう。誤解を恐れずに
一言で斬るとすれば、
◆『個人←→組織』のシーソーゲーム
ではないだろうか。
『滅私奉公』という日本語がある。
文字通り、「自分を滅して」、
「何かに奉公」する、という意味だ。
日本史の大枠は、世の中が固まると、
「滅私奉公」しようという
気分が強くなっていく。しかし、
世の中が乱れてくると
「個人主義」へと傾いてくるようだ。
古代までさかのぼると大変なので、
見ていく範囲は鎌倉時代〜現代とする。
では、早速、始めよう。
①鎌倉時代~安土桃山時代
《幕府から個人へ》
鎌倉時代は鎌倉幕府によって、
土地の所有権が認められた時代だ。
いわゆる「御恩と奉公」。
室町時代、足利幕府になっても
その大枠は、変わらない。
だが、応仁の乱、戦国時代となり
幕府の統制がぜんぜん効かない
乱世が続くと「下剋上」となる。
下が、上に、取って代わる。
個人の能力で、天下も取れる。
事実、豊臣秀吉は貧しい農民から
成り上がって、天下統一を果たした。
②江戸時代
《個人から幕府・藩へ》
その「自由過ぎる」実力主義を憂いて
二度と下剋上や戦国の世が
起きないように…と考えたのが
徳川家康と江戸幕府、と言えよう。
彼らは、身分制度や幕藩体制を固めた。
下剋上が起きないようにして、
個人の時代に「NO!」を突きつけた。
戦う武士は戦う場所を無くし、
上意下達の「官僚」になっていった。
③幕末~明治維新
《幕府・藩から個人へ》
ところが時代が降って幕末となると、
いわゆる『脱藩』して
活躍しようとする浪人が増えていく。
ご存知、坂本龍馬も、その一人だ。
町人や農民さえ「尊王攘夷」に煽られて
「幕末の志士」になれる時代。
藩から、個人へと移行する乱世。
そのうちに大政奉還・明治維新となり
各藩に守られていた武士は
特権を奪われ、多くが没落する。
代わって成り上がったのは、
「お金」をにぎっていった
個人の商才で戦う商人たちだった。
④明治~戦中
《個人から国民国家へ》
しかし、徐々に近代国家が整う中で、
大正デモクラシーなどはあったものの
『総力戦体制』へと突き進んでいく。
みんな国家に所属して
総力戦で戦うことになっていった。
国家=個人。
滅私奉公、お国のために働く、
という時代である。
⑤戦後まもなく
《国民国家から個人へ》
戦後には、日本国憲法発布、施行。
国家の縛りが、弱くなった。
財閥解体、農地改革などが行われ、
いろんな「自由」が認められて、
個人が自由に動けるようになった。
⑥高度経済成長~安定成長
《個人から会社へ》
ところが、自由奔放な個人主義へ!
という社会にはならなかったのである。
冷戦体制・高度経済成長が進み、
世の中が安定してくるにつれて、
人々は国家に変わる所属意識を求めた。
「経済大国ニッポン」を
支えたのは、終身雇用の「会社」だ。
24時間タタカエマスカ、と
煽られた一億総中流の企業戦士。
個人より会社の論理を優先して、
働きに働いた。まさに、滅私奉公。
会社=個人。
見えない同調圧力も、強くなる。
赤信号みんなで渡れば怖くない、
という空気が覆った。
⑦バブル崩壊~現在
《会社から個人へ?》
しかし、バブル崩壊、リーマン、
震災、コロナと災難が襲い…
ついに会社は、終身雇用を
維持できなくなってきた。
この流れを踏まえた上での、
「今ここ」なのである。
では、ざっくりと、まとめよう。
《幕府→(戦国時代)個人
→幕府や藩→(明治維新)個人
→国民国家→(戦後まもなく)個人
→会社→(バブル崩壊)個人?》
最後に?をつけたのは、
このコロナ禍の乱世においても
まだまだ個人に「滅私奉公」の
忠誠を求める会社は多いからだ。
また、何かに所属意識を求めて、
何かに所属することに
安住したい、という気分を持った
個人も多いように思う。
完全な「個人主義」「個人の時代」
とは言い切れないところがある。
政治体制がガラッと変わる
はっきりとした混乱期ではなく、
「なんか生暖かい混乱期」の
今だからこそ、逆に何かに
寄り添いたい、という気持ちも
強くなっている、かもしれない。
以上、所属意識からの日本史。
『個人←→組織』のシーソーゲーム
というお話でした。
…さて、読者の皆様は、
いかがでしょうか?
現在の日本は、
「所属意識」という観点から見れば、
戦国時代、明治維新、戦後まもなく
に共通するような「乱世」です。
これまで枠に縛られていた、
「個人」の力が問われてきます。
また、会社を通したつながりではなく、
「個人同士のつながり」が
重要になってきます。
そのうちのツールの一つが、
このLinkedIn、ですよね。
乱世の中で、どのように
「個人」を発揮していきますか?
どう「所属」していきますか?
…「滅私奉公」していませんか?
◆本記事は、以前に書いた記事の
リライトです。
「滅私奉公」「個人主義」という
キーワードを付け加えて
書き直してみました↓
元記事も合わせてお読みください!
◆なお、本記事では書けませんでしたが
【時代に恵まれなかった人たち】という
テーマで書いても面白そうですね。
「個人の時代」なのに
肩書や組織に縛られた人、
「組織の時代」なのに
個人で自由に動こうとした人、など…。
例:戦国時代の「足利義輝」
すごい剣の腕を持った剣豪将軍だったのに
将軍という縛りで自由に動けずに死亡、
江戸時代の「平賀源内」
すごい発明の才能を持った人だったのに
活かしきれずに獄中で死亡、など…。
⑥の安定成長の時代などにおいては、
会社に隠れて密かに小説を書き溜めて
ベストセラー作家になった
赤川次郎さんなどが当てはまりそうです
(逆に時代に恵まれたのかも
しれませんが…)。