野球のポジションと『ジッグラト・スペアリブ』モデル
野球の守備には「ポジション」がありますよね。
立ち位置。
これが違うと、まるで別のスポーツであるかのように
守備で行うことが違ってくるものです。
基本、①②の関係は「対等」。
投げる者と捕る者、二人で協力して守る。
この「バッテリー」の協働によって
野球の守備は進行していきます。
ただし、実際に投球のアクションするのは①です。
①ピッチャーの良いパフォーマンスを引き出せるかは
②のキャッチャー次第なのです。
①はマウンドに昇った「お山の大将」。
それをフォローし、地道に導きつつ、
繰り返し行うキャッチングで活かすのが②。
①ピッチャーは、
変幻自在の属人的なアドリブが要求される。
②キャッチャーは
そのピッチングを冷静に受け続ける
いわば標準化されたスペアの行動を続けます。
一方、③④は原則「受け身」です。
①②の投球を、バッター(打者)が打つ。
その打球を捕り、アウトにすべく行動します。
すなわち、①②に対して
③④は固定的であり、序列的とも言えるでしょう。
インフィルダー(内野手)には
守るべき固定された「ベース」がありますが、
そこには一塁、二塁、三塁と「序列」がある。
アウトフィルダーも、右・中・左の位置があり、
原則、その立ち位置は固定されています。
ただし、③と④では、行動が違う。
③インフィルダーはベースを主に守る関係上、
臨機応変にアドリブ的な行動が必要とされます。
相手は普通に打つだけでなく
バントや盗塁をしてくるかもしれないから。
これに対して④アウトフィルダーは、
ある程度、標準化された行動が求められます。
③のカバーリング、飛球に対する確実な捕球。
③はアドリブ的、④はスペア的である、と言えます。
…これを違う言葉で言い換えてみましょうか。
もちろん9人が全員いないと
野球の守備は成り立ちませんが、
特に属人的でアドリブ的なパフォーマンスが
求められるのは、②③です。
①キャッチャーは最低限、
キャッチングができれば守備は進行できる。
④アウトフィルダーは、もし外野まで
打球が飛んでこないのなら、
極論、いなくても構わない。
そう、①④は、どちらかと言えば、スペア的
(もちろん、アドリブ的な活躍ができる
①④もいますけれども)。
初心者が担当しやすいのは④、次いで①ですよね。
野球経験者は、②や③を受け持つことが多いです。
…さて、私は『ジッグラト・スペアリブ』
というモデルを提案して、
次の四象限に「立ち位置」を分けてきました。
各象限の役割は次の通り↓
ですが、それぞれの象限を示す「キャラ」が
なかなか見つからなかった。
やっと、しっくりくる例えを、見つけました。
それが、野球の立ち位置、ポジションです。
組み合わせて、名付けてみましょう。
うん、それぞれの四種の象限の名前に、
野球の四種のポジションをくっつけると、
さらにイメージしやすくなった、はず(たぶん)!
それぞれの役割は次の通り↓
なお、①②③④の間に、
良い悪いの序列はありません。
すべて、大事なポジションです。
もちろん②ピッチャーが投げないと
守備は進行していきませんけれども、
四種・九つのポジション、
どれ一つ欠けてもいけない、ワンチームです。
強い野球チームには、この①②③④いずれにも
素晴らしい選手がいるもの。
水島新司さんの漫画『ドカベン』の
明訓高校を例にとりましょうか。
この漫画の最大の特徴は、
②のピッチャーではなく、①のキャッチャーを
主人公に据えたところです。
①山田太郎は、その卓越した野球の能力で
鉄壁の明訓守備陣の司令塔の機能を果たします。
そのキャッチングや送球は正確無比で、
標準化された行動を最高級のレベルでこなします。
②里中智は、その①の山田に惚れ込んで
明訓高校に入学した男です。
山田を信頼し、七色の変化球を駆使しつつ、
相手バッターをアドリブ的に翻弄します。
③岩鬼正美や殿馬一人は、
主にサードやセカンドを確実に守ります
(初期の岩鬼はエラーが多いですが…)。
しかしその言動は自由奔放で属人的、
時にはマウンドに昇ることもあります。
④この「明訓四天王」にもう一人、
微笑三太郎という外野手が加わって
「明訓五人衆」と呼ばれています。
もともと①キャッチャーだった微笑は、
その強肩でレフトを守り、
明訓のピンチをたびたび救います
(一つ上の学年には、山岡という名外野手もいる)。
彼らのようなスター軍団がいた頃の明訓高校は、
甲子園に五回出場、四回優勝、という
恐ろしいほどの活躍をするのです。
なお、細かい話をすれば、
唯一、明訓高校が負けた高二夏の弁慶高校戦では、
「一番岩鬼、四番山田」という通常の打順を
「一番山田、四番岩鬼」というように
いじってしまったことが敗因の一つになります
(これは攻撃面ではありますが…)。
それぞれ適した役割、立ち位置というものがあり、
それが変わってしまうと通常の力を発揮できない、
ということの証左ではないでしょうか。
ただ、上記した通り緊急避難的に
時々③の岩鬼や殿馬(時には山田まで)が
①のピッチャーになったり、
④の微笑が②のキャッチャーになったり
することもありました。
②の山田は記憶喪失になった時、④外野を守りました。
勝利のため、柔軟に守備のポジションを
変えることができるのも、明訓の強さの一つです。
以上、本記事は
『ジッグラト・スペアリブ』モデルを
野球の守備のポジションと掛け合わせて
イメージしやすくした、というお話でした
(『ドカベン』を未読の方には
何のこっちゃのお話ですみません)。
さあ、読者の皆様は今、どのポジションですか?
専任? それとも二刀流、マルチプレイヤー?
皆様の組織は、それぞれのポジションの選手が
しっかりと機能しているでしょうか?
②の投手ばかり、④の外野手ばかりに
なってはいませんか?
各ポジションをお互いリスペクトし、
お互いの立場を想像し、
協力してカバーをし合わないと
「失点」が積み重なります。
どうぞ、お気を付けください。