30年で約200万人増、シャッターと黒壁
「シャッター街」…見るのが、少し辛い。
シャッターを閉めている、ということは
「商売しませんよ」という意思表示。
「シャットダウン」しているということ。
街の閉鎖、ゴーストタウン、衰退…。
そんなキーワードが、頭をよぎる。
本記事の舞台、
滋賀県の長浜市の中心商店街も
そんな危機を過去に味わった。
長浜と言えば、古くは
豊臣秀吉(羽柴秀吉)の
飛躍の土地としても知られている。
琵琶湖の近く、織田信長上洛のための
重要拠点である。
信長は腹心の秀吉をここに
城持ち大名として、据え置いた。
秀吉はその期待に応えて、
「楽市楽座」政策を実施、
長浜をおおいに栄えさせた、という。
…しかしそんな伝統を持つ商業の街、
長浜の中心商店街も、
時代には、勝てなかった。
モータリーゼーション→車社会による
郊外の発達・中心街の衰退。
和服→洋服への切り替えによる
地場産業である高級絹織物業の衰退。
商店主たちの高齢化…。
ある調査によれば、
日曜日の1時間に歩いたのは
「人間が4人、犬が1匹」
だけだった、という。
典型的な「シャッター街」だ。
伝統的な地域のお祭りも、
開催が危ぶまれるほどになった。
そんな中、衝撃的な事件が起こる。
中心街のメインシンボル、
通称「黒壁銀行」、黒漆喰で作られた
見事な外観を持つ
国立第百三十銀行長浜支店が売却されて、
マンションが建つ、という。
「このままでは、歴史が、街が、無くなる!」
街の人たちは、結集した。
「株式会社黒壁」という、
第3セクターを始めた。
中心となったのは、青年会議所OBたち。
いわば、この街に長年住み、
この街を見つめてきた、
地元の有力者の方たちだ。
これが昭和63年、1988年、
今から約30年前のことである。
翌年の平成元年、1989年には、
「黒壁スクエア」をオープンさせた。
…さて、結果はどうなったのか?
大成功、であった。
平成元年には
年商123百万円、来街者12万5千人だったが、
令和元年には
年商613百万円、来街者213万9千人
の規模にまでなっている。
何と約200万人以上も、来街者が増えた。
その秘密は、何だったのか?
…詳しくはここでずらずらと書くよりも、
「株式会社黒壁」のホームページを
見ていただいたほうが、良い↓
ただ、このことは言える、と思う。
『地元の有力者の方たちが
協力し、結集したこと』
これが、成功にとても大きく
寄与したのではないだろうか?
…地域活性化の話では、よく
「若い人」や「他の場所から来た人」
などが必要だ、と言われがちである。
うん、確かにそういう側面はある。
柔軟な発想は、必要不可欠だ。
起爆剤としてのきっかけには、なるだろう。
でも考えてみれば、
「地元の有力者」だからといって、
全員が因循姑息で、
超保守主義で、人の足ばかり引っ張って、
という人ばかりでも、ないはず。
柔軟で、人の話をよく聞き、
ともに発展しよう、
という志を持った人だっているはずだ。
ましてや、このSNS全盛の時代。
地元に居ながらでも、他の地域の情報は
いくらでも集められる。
逆に言えば、「若い人」
「他の場所から来た人」だから
柔軟で地域活性化が「必ず」うまくいく、
とも言えないはずだ。
各地の「地域おこし協力隊」の
例を見てもわかるように、
すべての過疎地で地域おこしがうまくいっている、
とは、とても言えない。
逆に、若いから、他の場所から来たからと
嫉妬され、地元勢からの総スカンを
喰らうことだって、あり得るのだ。
どんな場所、どんな組織の活性化においても、
一人だけでは、うまくいかない。
「地に足をつけて、事業を展開する。
その場限りの特効薬や
劇薬に飛びつくのではなく、
その場所をよく知る人が中心となって、
仲間とともに
『自らが稼ぐための仕組み』を作り、
着実に継続的に効果的な事業を行っていく」
この姿勢と行動こそが、必要だ。
地元の有力者だから、
若くて他の場所から来た人だから、という
人の経歴、過去が大事なのではない。
いかに同じ志を持った人が
「結集」し「協力」して
「効果的な施策を続けられるか」という、
現在と未来への行動が大事だ、と思われる。
もちろん「株式会社黒壁」だって、
このコロナ禍の影響を大きく受けている。
未来永劫このままで、
ずっと発展していく、とは思えない。
しかし、一度、底から這いあがった経験は
次の危機にも、きっと活かせることだろう。
興味の出てきた方は、以下のページも合わせて、
いかに「黒壁」がシャッター街を打破したか
お読みいただければ、と思います↓
https://www.furusato-zaidan.or.jp/machinaka/project/casestudies/shiga01.html
…さて、ここまで書いてきたことは、
「地域活性化」についてなのですが、
実は、「組織活性化」についても
つながることが多いのではないでしょうか。
つまり、読者の皆様の「組織」にも…。
読者の皆様の会社(組織)では、
どんな「活性化」が行われていますか?
…若い人、他社から来た人だけが
孤軍奮闘をしていませんか?
コアな有力者たちが、
立ちはだかる「壁」になっていませんか?
いつの間にか「シャッター街」に
なってはいませんか?