トヨタが織り成す『ウーブン・シティ』
トヨタ自動車、トヨタグループと言えば、
日本が世界に誇る自動車会社の一つ。
自動車が日常的に使われている現代、
まず知らない人はいない会社ではないか。
ふむ。では、このトヨタが「新しい街」を
つくろうとしていることは、ご存知ですか?
はい、お答えします。
本記事では、トヨタがいま建設中の
『ウーブン・シティ』について書いてみます↓
場所は、静岡県の裾野市です。
裾野(すその)というだけあって、
富士山のそばにあります。
175エーカー(約70.8万平方メートル)。
東京ドーム15個分の、広大な敷地。
ここにつくられる街の名前こそ、
ウーブン・シティ。
「Woven City」です。
ウーブン(woven)とは「織り込まれた」の意味。
英語の発音的にはウォウヴンに近い。
weave「織る」の過去分詞型、ですね。
トヨタグループの最初のビジネスが、
「豊田自動織機」、つまり「織り機」
であることにちなんでいると言われています。
「街を通る道が網の目のように
織り込まれたデザインに由来する」とも。
「街全体をインターネットでつなげる」ことから
インターネットのWWW(World Wide Web)、
すなわち蜘蛛の巣『web』にもつながっています。
そう、この街は、近未来的な実験都市!
「ネット」「網の目」で「織り込まれた」
今までにない斬新な発想の街、なのです。
まず、なぜこの場所なのか?を書きましょう。
1965年頃、今から50年以上も前のこと。
この地に「東富士工場」が作られて、
トヨタの自動車が作られ始めました
(トヨタ東日本の前身のひとつ、
関東自動車工業の工場でした)。
トヨタスポーツ800、センチュリー、
コロナマークⅡ、カローラ、オリジン、
アイシス、レクサスSCなどなど…。
この工場ではトヨタブランドを支える名車が
数多く生産されてきたのです。
しかし2018年、トヨタは
この工場を2020年に閉鎖することを発表します。
「電気自動車などへの投資がかさんでいる」
「小型車は競争が激しい」
「ゆえに東北などへ拠点集約し競争力を高める」
それらが主な理由でした。
何十年にもわたって
天下のトヨタの車を作ってきた
大工場が閉鎖される!?
裾野市は、大きなショックを受けました。
そりゃあ、そうです。
2,000人もの職員が働いていた工場です。
それが、なくなる。
地域経済に、影響が出ます。
税収も、落ち込みます。
当時の市長は「財政非常事態」宣言を発表。
そんな中で行われた2022年の市長選では、
現職を破り、何と34歳の若き市長が誕生!↓
大企業の大工場の閉鎖は、このように、
地域の経済や政治を一変させるような
死活問題なのです。
そんな中で発表されたのが、この
『ウーブン・シティ』の建設なのでした。
そう、この東富士工場の跡地を使って…。
ただし「実験都市」ですから、
その「実験結果」がどうなるかは、わからない。
トヨタはいずれはここに
「発明家や技術者たち2,000人を住まわせる」
と発表していますが、あくまで先の話。
裾野市側にとってみれば
「ああ、大工場が無くなってしまった…。
だがそこに未来的な実験都市ができる!
絶対、大丈夫!」と期待したくなる。
まあ、それが自然ですよね。
これに対してトヨタ側は
「裾野市全体がウーブン・シティに
なるわけではありませんから…」
などと、冷静に情報発信しているところです↓
さて、このウーブン・シティは、
いわゆる「スマートシティ」を目指しています。
スマートシティとは、
…まあ、要するに、新しい街、です。
その要は「データで管理して発展し続ける」街。
当然ながら「データ」に一日の長がある
世界的な巨大IT企業などが、すでに
スマートシティ業界に進出しています。
トヨタは、そんなフィールドに
殴り込んでいくんです。
…専門の自動車ならばともかく、
都市建設やデータ処理の分野については
まだ発展の余地がある。
なのに、このスマートシティ事業に
トヨタがあえて乗り出したのは、なぜなのか?
…その背景には、自動車が果たすべき
役割の変動、というものがあります。
一言で言うと「ハードからソフトへ」。
つまり、自動車というハコ、
ハードそのものから、
自動車が担ってきたサービス、ソフトへ。
そういうものがビジネス上、
より大事になる、ということ。
つまり「いいクルマを作って、売る」だけでは
ビジネスが成り立たなくなるのではないか?
この未来への展望のもとに、トヨタは
新しい事業へと挑戦しているのです。
「カーシェアリング」や「自動運転」、
最近、話題ですよね。
「車を所有し、自分で運転する」時代から、
「車をシェアし、自動で運転される」時代へ…。
そんな時代において、さて、
どのように街は作られ、運用されるべきか?
自動車の運用概念が変われば、
当然、都市建設や運用の概念そのものが
変わってくるものです。
ほら、昔は「電車の駅」中心の街づくりだったのが
「自動車」に対応した街づくりへと
変わってきているじゃないですか。
いわゆる「モータリゼーション」↓
その対応はさまざま。
万年渋滞、うまくいっていない街もあれば、
すっきり変わらせて、対応できている街もある。
同様に未来では「オートモータリゼーション」が
広がっていく、はず…。
その未来を、このウーブン・シティでは
先取りして現出させようとしているのです。
それは、今後の都市建設のひな型になり得る。
そう、巨大な先行投資、とも言えるのです。
最後にまとめます。
現在(2022年8月時点)、
告知されているところによると、
このウーブン・シティは、
などの設計思想でつくられているそうです。
気になる第一次オープン時期は、
2024~2025年頃とのこと↓
さあ、どんな未来都市が
できあがってくるのでしょうか?
富士山の裾野の経済・政治はもとより、
全国・全世界の未来の都市、
ひいては経済・政治へと多大な影響を及ぼす
可能性を秘めた、ウーブン・シティ。
今後に注目です。
私も、注目しておこうと思います。
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