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ふわとろだった太陰暦 ~ずれを包み込む~

太陽を見るより、月を見るほうが安全。

太陽をじっと直視すると
まぶし過ぎて眼が危険です。
月を見るのは比較的大丈夫、ですよね。
ゆえに古来から、月を見ながら
宴を催すことが盛んに行われてきました。

いわゆる「月見の宴」です。

この風習は、中国では唐代の頃に始まり、
「月餅」などを贈り合う習慣がありました。
唐などの風習が伝わった
日本の平安時代の貴族社会でも、
「月見の宴」は盛んに行われていた。

そのために、やれ
「竹取物語」(かぐや姫の物語)だの、
栄華を極めた藤原道長が
「満月」に例えて和歌を詠んだだの、
平安時代には月に関するお話が
けっこう多いのです。

暦(こよみ)も、月に基づいていました。

日本では明治時代になるまで
「太陰暦」を使用していた。
太陰暦とは「月の満ち欠けに基づく暦」です。

しかし1872年(明治5年)の11月、
明治新政府は国際的な事情もあって、
「太陰暦を廃して太陽暦を採用」します。
そのため、この年の12月3日が、
1873年(明治6年)の1月1日になりました。

…そうなんです。
明治5年は、12月が2日しかなかった!

「近代化をするのも大変だったんですね。
まるまるひと月近くも
時間そのものを無くしてしまうなんて…。
ジョジョのディオの『ザ・ワールド』みたい。
…でも、そもそも、なぜ太陰暦と太陽暦とで
ひと月近くもずれていたんですか?

そう疑問に思いましたか?

実は、太陰暦だと
「ずれ」がどんどん広がっていくんです。
そのため太陰暦では、
1年が「13月」ある年を
頻繁に設けなければならなかった。

それでもずれが広がっていく、という
問題があったのです。

本記事では、太陽暦と太陰暦における
「暦」のずれ、について書いてみます。

まず、月ではなくて太陽から。
今現在、私たちが使っている
「太陽暦」のことから考えてみましょう。

「あっ、それは知っていますよ!
『うるう年』がありますよね!
4年に1回、2月が『29日』まである年がある。
これで調整しているんですよね」

…おおむね、その通りです。

いわゆる五輪イヤー、4の倍数の年は、
原則、うるう年になります。
2024年はパリ五輪が開催された。
2月は29日までありました。

なぜこのような「うるう年」が
決められているのでしょう?

それは太陽の周りを地球が一周するのが、
「だいたい」365日と
6時間かかっているから
です。

ぴったり365日じゃない。
約6時間ずつ、ずれていく。
ゆえに、6×4=24時間、
このずれを何とかするための「うるう年」。
つまり、366日の年を作って、
ずれを減らしていく。


…ただし、必ず4の倍数がうるう年か、
というとそうではないんです。
実は、4の倍数であっても
うるう年でない年がある
んですね。

例えば、2100年はうるう年ではない。
これは、例外です。

「えっ、4の倍数なのに
うるう年でなくていいんですか?」

いいんですよ。
400年に3回ほど、例外がある。

なぜならば、厳密に言えば、
地球は太陽の周りを
「365.2422日」で1周しているから。
ほぼ6時間、と書いたのは、
ぴったり「365.25日」ではないためです。

…ちょっとずつ、ずれていくんです。

この「0.0078日」のずれを防ぐため、
400÷3=約133年に1回、例外を設けている。
0.0078日×133=約1日です。
つまり、うるう年を4年に1回にしただけだと
1日進み過ぎてしまうために、
「うるう年でない例外の年」を設けている。

「でも、西暦2000年は、うるう年でしたよ?」

そうなんです。
基本100の倍数の年は、うるう年に「しない」。
しかし400で割り切れる年は
さらに例外的に、うるう年に「する」。


1700年、1800年、1900年はうるう年にしない。
2000年はうるう年にする。
2100年、2200年、2300年はうるう年にしない。

そうすることで、太陽暦・西暦では
ずれを極力減らす努力がされているんです。

「わかったような、わからないような…。
つまり、4の倍数の年は、原則、うるう年。
でも、100の倍数の年は、うるう年にしない。
しかし、400で割り切れる年は、うるう年にする。
そういうことでしょうか?」

そんな感じです。
だから「おおむね」4年に1回が
うるう年、ということです。

「それでは、太陰暦のほうは
どうなんでしょう?」

…これがまた、複雑なんですね。
というのも、月が地球の周りを1周する時間は、

◆平均で29日12時間44分

だと言われています。

「何ですか、『平均』って?」

これは、月が地球の周りを1周する間に、
「地球も太陽の周りを1周している」ので、
基準となる地球もまた動くからなんですね。
同じ位置関係に戻るまでに、
約2日ほど余計にかかる。
(純粋に月が公転する時間は27日7時間43分)

ともあれ、月は
「約29.5日」周期で回っている。
「30日」ぴったりで回っていれば
話は簡単なのですが、違う、そうじゃない。

太陰暦は、月の巡りで、暦を決めます。
ゆえに、約半日ずつ、ずれていくんです…。

29.5日×12か月=354日。
太陽暦の1年が原則365日なので、
1年で「11日」ほどもずれていってしまう…。
11日と言えば、かなりのずれです。
3年で、33日もずれていく!

ですので、太陰暦の場合は、
約3年で「1か月増やします」。
つまり「1年が13か月もある年」があった!

これを「うるう月」と言います。

厳密に言えば、19年に7回
つまり19÷7=約2.7年に1回、
うるう月がある年を設けていた。
これで、ずれを防いでいた。

そうなんですよ。
太陰暦の時代は、必ずしも
1年は12か月ではなかった。
「うるう月」で13か月の年も多かったんです。

…ただ「太陽暦のうるう年」に比べると
ちょっとずつずれていってしまう。
だから、1872年、明治5年の時点で、
日本の太陰暦と、
西暦の太陽暦は、約ひと月ほどずれていた。

そのずれを一気に埋めるため、
国際的な交流を深めるために、
明治政府は「太陰暦をやめて太陽暦!」、
半ば強引に修正した、ということです。

ザ・ワールド。
時は止まる。そして、動き出す。
この年は12月が2日しかなかった…。

最後に、まとめます。

本記事では太陰暦と太陽暦の
暦のずれについて書いてみました。

月を眺めていた昔の人の時間は、
1年が「13か月」あった「うるう月」を
ふつうに受け入れていた。

そう聞くと何だか不思議に思いませんか?
流れる時間が昔と今とでは、
実は、だいぶ違っていたのです。

せわしない現代社会です。

24時間オープンのお店も多い。
読者の皆様も、ビジネス上では、
時計を見ながらきびきびと動くことが
多いと思います。

ですが、だからこそ、

時にはふわとろな気分で月を見ながら
「月見酒」を傾けたり、
「お月見団子」「月見バーガー」
楽しんでみてはいかがでしょう?

※2024年の月見系バーガーはこちらから↓

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『ザ・ワールド』はこちら↓

合わせて、ぜひどうぞ!

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