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目標総売上約一億円。売上結果、約十万円!
とある6次産業化事業のお話です。

これだと計画自体に無理があったのでは?
と思ってしまいますよね。
未達額が半端ではない…!
「とらぬ狸の皮算用」「机上の空論」
「画餅」
などの言葉が浮かんでしまいます。

純粋な民間企業であれば
その原資は(基本)企業の資金なのですが、
公官庁が出資するとなれば
その原資は公金、みんなの税金

2016年~2018年度の計画に対して
委託費として計約3,900万円が費やされた。
しかし2018年度の売上、約十万円程度…。

◆事業経費として約四千万円
◆事業目標総売上:約一億円
◆事業売上総結果:約十万円

あまりにも、費用対効果が悪い…?
あまりにも、失敗が過ぎる…?

使ったお金(補助金・交付金)を
国に返還すべきではないか、と
議会で議論され、返還の方向に進んだ。
(かなり揉めたことが想像できます)

また、地方自治体と委託先の間で
約1,000万円は「不適切な支出」ではないかと
裁判も行われておりまして、
債務の有無の確認などが行われました。
※2021年には「和解」が成立しています。
(当事者同士の和解ですので、裁判上の席で
今後、詳細が明らかになることはありません)

…どうして、こうなった?

失敗は失敗、しょうがない部分がある。
しかし、それを教訓として
今後に活かすことは重要だ、と思うのです。
他山の石として、これほど示唆に富んだ話はない。

本記事は「6次産業化事業」についてのお話。

6次産業、と言えば、

◆1次産業:(生産)農林水産業など
◆2次産業:(加工)鉱工業など
◆3次産業:(販売)商業など

これらを掛け合わせたものですよね。
1掛ける2掛ける3は、6。だから6次。
イメージとしては「いちごジャム」などを
思い浮かべて頂ければ分かり良い。

◆1次産業:(生産)いちごをつくる
◆2次産業:(加工)ジャムにする
◆3次産業:(販売)ジャムを売る

…こうすることで「付加価値」が生まれて、
より高く販売できますよね!
商品が「その土地ならでは」の
ものであれば、ブランドもつけやすい。
固定客、リピーターもつく、かもしれない。
おそらく、皆様の街でも
このような6次産業化事業による
「特産品」が生まれている
、と思います。

…ただ、それが本当に売れるのか、
というのは、やってみないと分からない。

しかし分からない、からこそ
できるだけ事前に「見える化」できるように
調査し、分析し、責任者を決めて、
慎重に進めるべき…ですよね。

もしも民間企業なら、一億円の目標で
十万円しか売れなければ大問題です。
企業自体が傾くかもしれない。
責任者の責任が問われます。

…しかし、税金、補助金、公官庁、
となった場合はどうか?

本来であれば
「どのようにどこに使ったのか?」
「その経費は、適切だったのか?」
「1円レベルできちんと会計管理する」
これが基本、ではありますけれども、

委託、委託、を繰り返す中で、
そのあたりがあやふやになっていきがち。

誰も実態を把握できていない、
誰かがやっているだろう、そんな中で
書類とお金だけが動くことになりがち…。

もう少し、詳細を書きましょうか。

栃木県に、塩谷町(しおやまち)
という町があります。
人口、約一万人の小さな町。
ここで「6次産業化事業」が行われました。

報道によりますと、
「町の顔になるべき新しい商品を作ろう!」
という狙いのもとで、事業が行われていった。
「国の地方創生交付金」を活用して、
町は農業団体に事業を委託しました。
その農業団体からさらに委託を受けた
民間業者が「4年間の事業」として
6次産業の製品化に従事していった。

年に1品の商品開発が、目標でした。

しかし開発されたのは、
「豆乳ヨーグルト」1品のみ。
3年間、2016年~2018年度の計画に対し、
委託費として計約3,900万円が費やされた。
さて、3年目の2018年度に売れた金額は?

ヨーグルトの売上目標「約二百万円」に対して、
売れたのは「約十万円」
だったのです。
(当初は「約七万円」と発表されました)

…そもそも人口約一万人の町ですから、
世帯は四千世帯程度。
統計によると一世帯がヨーグルトを買うのは
年間で約一万円程度だそうです。
全世帯がこの豆乳ヨーグルトだけを買っても、
年間でも約四千万円…?

なのに事業の目標総売上は、約一億円の見込み。

さすがに「消化」に悪いのではないか?
そう思わせるような計画、だったのです。
この結果が、町の定期監査で問題視され、
事業は四年もたずに三年で中止となりました。

「いきなり一億円!と大規模にするのでなく、
最初は少しずつお試しでつくっていって、
もし人気が出たら、徐々に生産量を
上げていけば良かったんじゃないの?」

…後出し分析からは、そう思いますよね。

しかし、そうはできなかった実態がある。
というのも、補助金や交付金というものは、
可変性が少ないんです。
最初にどかんとかまして、予算として計上され、
その予算の枠内で動かす、そういうシステム。
年度ごとに、動いていくわけですから。

となれば、この事業、イケますよ!と
予算が下りそうな理由をがつんと集めて提出、
どれだけお金を引っ張ってこれるかが
鍵になる
ことは、想像に難くありません。

ちまちま少しずつ進める、拡大する、
ということができにくいんです。

◎「我が町だからこそ、できます!」
◎「商品が大ヒットして起爆剤に!」
◎「住民が一丸となってみんなで!」

このような「独自性」「起爆剤」「合意」
耳に優しいワードが散りばめられた
事前の計画書が作られていく…。

この予算獲得、事業前の段階では、
どんな商品が出来上がるのか、
本当に売れるのかは、二の次
、と
なりがちなのではないでしょうか?

そうしてお金が下りれば、委託&委託です。
専門家ならば大丈夫だろう、
それなりのものがどんどんできるだろう、と
委託元はしっかりと都度のチェックをしない。
進行中には、撤退の声も上げづらい。


その結果が、売上、約十万円…。

最後にまとめます。

本記事では6次産業化、特産品づくりの
失敗例を紹介しました。
もし、ここから教訓を得るとすれば、

◆「市場をしっかり調査しましょう」
◆「目標は適切に立てましょう」
◆「小さく始めて、見込みのある商品だけを
  取捨選択して、少しずつ広げましょう」
◆「計画は柔軟的に、確認は定期的に」

といったところでしょうか?
(ビジネスの基本のようにも感じますが…)

何を売ろうか、何が売れるのか、
そこをしっかりと見極めた上で、

適正なお金を投入する。豆乳だけに。

そのように思った事例でした。

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