南米のヴェネツィア、並び立つ大統領
ヴェネツィアと言えば「アドリア海の女王」。
ゴンドラが行き交う優雅なイタリアの観光都市↓
このヴェネツィアの名前にちなんだ国が、
南米、南アメリカ大陸にありますよね。
「…えっ? ないですよ?」
あります。よく国名を思い浮かべてもらえれば。
「ヴェネツィア…。ヴェネ…。やはり、ないですよ」
ヴェネ、だからわかりづらいのかな。
ほら、ベネ、がつく国があるじゃありませんか。
「…! もしかして、『ベネズエラ』?!」
そうなんです。ベネズエラという国名は、
「小さなヴェネツィア」という意味の言葉が
由来だ、と言われています(※諸説あります)。
本記事は、ベネズエラについての記事です。
南アメリカ大陸の大国と言えば、
すぐに「ブラジル」が思い浮かびますよね。
ベネズエラはその北にあり、
カリブ海に面した国です。
西はコロンビア、東はガイアナ↓
ここを「小さなヴェネツィア」と呼んだのは、
「アメリカ」という名前の由来にもなった
イタリア出身の探検家、
アメリゴ・ヴェスプッチたち。
かの有名なコロンブスの後に、
南米大陸などを探検した人たちです。
彼は、アロンソ・デ・オヘダというスペインの
船乗りと一緒にベネズエラあたりを探検し、
マラカイボ湖という大きな湖の上に
インディヘナ(南米大陸の先住民)たちが
村落を作っているさまを目撃します。
「…まるで小さなヴェネツィアだ!」
そこで、この地域をベネズエラと呼んだそうです。
この地域は、スペインの植民地として
発展していきます。
じきにフランス革命が起こり、
本国スペインなどが戦乱に巻き込まれた際に、
ベネズエラは独立を狙う。
その時に活躍したのが、
ミランダとボリバルという人たち。
1811年、ベネズエラ第一共和国を建国します。
しかし折悪しく1812年に、
首都カラカスで大地震が起こってしまい、
街の三分の二が壊滅しました。
「これはベネズエラの独立、共和国を
神様が認めていない証拠である!」
再び反乱が起こり、共和国は崩壊します。
ミランダは捕らえられ、そのまま獄死。
しかしボリバルは不屈の精神で独立運動を続け
「大コロンビア」という国を作り上げます。
この大コロンビアが後に、ベネズエラ、コロンビア、
ボリビア、エクアドルなど、
今ある国々の元になるのです
(ボリビアの国名はボリバルの名前から、
コロンビアはコロンブスの名前にちなんでいます)。
…さて、このベネズエラには、
ある豊富な資源が眠っていました。
1910年代、マラカイボのあたりで発見されます。
これにより、ベネズエラは貧しい農業国から
一気に豊かな資源産出国へと変貌します。
さて、どんな資源なのでしょう?
ヒントは、OPEC。
そう、石油です。
1960年に結成された
OPEC(石油輸出国機構)の創設メンバーは、
イラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、
そして、ベネズエラ。
実は、中東の名だたる産油国と肩を並べるほど、
ベネズエラは世界的な大産油国なのです。
オイルショック・原油高を契機にして、
おおいに利益を上げることができました。
人呼んで、「サウジ・ベネズエラ」。
しかし、これで国民も全員豊かになる…
となればいいんですが、
なかなか政治が安定しませんでした。
せっかく豊富な石油資源があるのに、
貧富の差がなかなか埋まらなかったんです。
その不満が、一人の大統領を生み出します。
チャベス大統領です。
1999~2013年まで、この国に君臨しました。
彼は、とにかくアメリカ合衆国に反発します
(国外に敵を作れば、
国内は統一しやすいですからね)。
ブッシュ大統領を「悪魔」とまで呼び、
反米、社会主義路線を突き進んでいきます。
国名をベネズエラ・ボリバル共和国に変更、
国会を一院制にする、憲法改正して権限強化、
地主の土地を収用して農民に分配するなど、
もうやりたい放題。
当然、敵も多く、クーデター騒ぎも起こりますが、
彼はその強力なカリスマとリーダーシップで
強大な権力を築き上げていきます。
…ただ、どんな人間にも死は訪れるもので、
2013年、ガンのために死去しました。
彼の死後、現在、
ベネズエラはどうなっているのか?
なんと「二人の大統領」が並び立つという
大混乱の時代を迎えています。
「ベネズエラ経済危機」も起こり、
多くの難民が生じている状態なのです。
一人は、チャベスの後継者、マドゥロ大統領。
もう一人は、2019年の大統領選挙を
「憲法違反で無効」と宣言し、
「暫定大統領」に就任したグアイド国民議会議長。
時のアメリカ合衆国、トランプ大統領は
「グアイド議長こそが大統領だ!」と
支持を表明します。
一方、ロシア・中国など反米の国々は
マドゥロ大統領を支持しています。
アメリカはベネズエラに対して経済制裁を実施、
バイデン大統領に替わった今もなお、
緊張関係が続いているのです。
最後に、まとめましょう。
「小さなヴェネツィア」ことベネズエラは、
優雅な今のヴェネツィアとは似ても似つかぬ
混乱と波乱の歴史をたどってきました。
ロシアとウクライナの戦争が起こっている今、
「ベネズエラの石油」は各国の垂涎の的。
しかしこれまでの流れ(反米の歴史)がある以上、
アメリカも容易には手を出せません。
「石油」というキーワードで考えれば、
ベネズエラの動向は、世界的にもかなり、重要。
どうしても日本から見ると、地球の裏側にある
ベネズエラはなじみが薄い国なのですが、
このような事情も踏まえて、
複眼的に世界情勢を考えてみるのも
いいかなと思って、本記事を書いてみました
(実用地歴提案会ヒストジオ、ですので…)。
本記事をきっかけに少しでも、
ベネズエラのことを知って頂ければ幸いです。
なお、日本のプロ野球界では、
ベネズエラ出身の選手が何人も活躍してきたことを
最後に申し添えておきます。
◆阪急の黄金時代を支えたマルカーノ
◆角・鹿取と並び巨人の投手として活躍、サンチェ
◆ヤクルトや巨人などで活躍した大砲、ペタジーニ
◆名球会入り、DNAの監督まで務めたラミレス
◆西武が誇る巨砲、アレックス・カブレラ …他多数
政治が安定して、野球を通じた交流など、
気軽に行き来できるような
ベネズエラになればいいな、そう思っています。